先週開催された「アーノルド・パーマー招待」に、ツアーではほぼ実績のない、無名といっていい選手が大会からの推薦で出場した。
25歳のアメリカ人、ブランドン・マシューズ。昨年は二部のコーンフェリーツアーで1年間プレーしたが、成績を残せず、ツアーカードを喪失。今年はさらに下部のツアーを含め、1試合もプレーしていない。
そんなマシューズだが、昨年11月、あるエピソード(小誌既報)で、多くのゴルフファンにその名を知られることになった。
マシューズは優勝すれば全英オープンの出場権が得られるPGAツアー・ラテンアメリカの「アルゼンチンオープン」でプレーオフまで進んだ。ところが、外せば負けになる2m強のパットを打とうとしたまさにそのとき、取り囲むギャラリーの間から叫び声が挙がり、パットを外してしまった。マシューズは即座に声がしたほうを振り向き、両手を広げて「カモーン!」と声を荒げた。
しかし、その声の主はダウン症の中年男性で、接戦の勝負に興奮し、感情を抑えきれず声を挙げたのだった。マシューズはロッカールームでそのことを知らされると、今にも泣きそうな表情になり、急ぎ男性のもとに駆けつけた。そして「大丈夫かい? 楽しかった?」と気遣い、優しくハグした。
後日、マシューズは「彼が気落ちしないようにしてあげたかったんだ」。そして、「社会には、ゴルフより重要なことがある」と振り返った。
こうした振る舞いをパーマー招待側が「彼は、ミスター・パーマーもそうするであろう優しさ、謙虚さをもって応えた」と称賛。大会に招待した。
もちろん、これには彼も、「ミスター・パーマーの試合が僕のツアーデビュー戦になるなんて!」と興奮。そして、大会前には会場で「僕はこのために努力してきた。ここが僕のいるべき場所だと強く感じた」と語った。
パーマーが人々を魅了した強さと優しさ。それを受け継ぐ選手になってもらいたい。
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