マスターズを観ていて、優勝したジョーダン・スピースのメンタル面の強さを感じた向きは少なくないはず。またインタビューなどで、その賢さや礼儀をわきまえた態度に感心したという人も多いだろう。21歳の"できた青年"を形づくった人たちとは……。
まずは、とくに影響を与えている二人、キャディのマイケル・グレラー氏と妹のエリーさんの存在がある。
グレラー氏は、元は小学6年生の数学・科学の教師だった。自身もスクラッチプレーヤーで、自宅の近くで開催されたアマチュアの大会で、バッグを自分で担いでいる選手を見て、無償のボランティアとしてキャディを始めたのがきっかけ。2011年の全米ジュニアアマで、スピースに請われてチームを組み始めたのだが、いきなりこの試合に優勝。その後、スピースがプロに転向するにあたって、バッグを担いでほしいと、スピースが頼み、グレラー氏は教職をなげうった。
「ほとんど兄弟のような感じ」とスピースは語るが、最初の結びつきが金ではなく、しかも、信頼でき、知性ある大人がそばについていたのは大きい。
もう一人が自閉症というハンディのある妹のエリーさんだ。スピースが試合に連れて来ていた回数は、高校時代からの恋人アニー・バレッドさんより多い。「プロで戦えるようになったのも彼女のおかげ。ものをさまざまな視点から客観的に見ることができるようにしてくれた」とスピースは語っている。
エリーさんと同じ自閉症の子どもを持つアーニー・エルスによれば、障害のある兄弟・姉妹を持って育った子は、普通の子とは違った世界の見方ができるようになるという。
「スピースはオールドヘッド(老人の頭)を若い肩の上に乗せている」とエルスが語るように、皆が彼の成熟ぶりに驚かされるのもエリーさんという妹がいるからだろう。
そのエルスに影響されて、昨年から自分の名の基金を作り、チャリティトーナメントを開催している。また、今年は、テキサス州ダラス近郊に、220万ドルをかけて、プール付き、パッティンググリーン付きの豪邸を建てている。約4050平米の土地に、なんと685平米の家なのだ。恋人がいるとはいえ、まだ独身の21歳。あるいは、それも妹のためなのかもしれない。
もちろん影響を与えたのは、この二人だけではない。大学時代野球をしていた父親のショーン、バスケットをやっていた母親のクリス、それに「自分が何を考えているかがわかる」とスピースがいうコーチのキャメロン・マコーミック。大学バスケの有望選手の弟・スティーブンさんもアスリート同士、刺激を与え合う存在だ。
「悪いラウンドをしても、常に次の日には、より強くなって戻ってくる」とはジャスティン・ローズの評だが、スピースの強さの秘密は、人に恵まれて、育った環境にあるのかもしれない。
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