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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/24号
2009/11/12更新
賞金女王を目指す有村智恵が
50センチのパットを2回連続外した本当の理由

 IDC大塚家具レディス最終日。息詰まる優勝争いのなかで、有村智恵が16番、17番と連続して50センチ前後のパットを外してしまい、1打差でジョン・ミジョンに敗れ、優勝を逃した。それをテレビで観て「なぜプロがあの距離を2度も続けて外すの?」と疑問に思った方も多いはず。そこで率直な疑問を本人にぶつけ「なぜプロが50センチを外すのか?」を検証してみた。


今季5勝目が目前まで迫りながらも、2ホール続けて50センチ近いショートパットを外した有村。天を仰いで悔しがったが、その背景には2週間前からあったショートパットの苦手意識があった

「実は大塚家具の2~3週前からずっと、50~60センチのショートパットにイヤな雰囲気があったんです。それでも結果的に入っていたので、不安に目をつぶってプレーしていましたが、肝心なところでボロが出てしまって……」
と、有村自身がそのときの心境を語ってくれた。

 普段からパットをミスするときは、「フェースが開き気味に入って右に外すことが多い」と言う彼女が16番で外したパットは、まさにその悪いクセが出た結果だった。

 開いて外したことが頭にこびりついていた17番は、無意識に左を向いて下りのスライスラインを引っかけ、カップ左端に蹴られて、逆に60センチもオーバーしてしまったのだ。

 リズム良く、ポンポン行こうと思っていたが、苦手意識のある50センチを早く入れてしまいたいと焦る余り、打ち急いだことが2つ連続で短いパットを外す最悪の結果を招いてしまったと言える。

 ではプロにとって50~60センチは、入れて当然の距離なのだろうか? 賞金女王レースを引っ張る諸見里しのぶは言う。
「状況によります。平らで真っすぐなラインであれば、50センチを外すようなプロはいません。でもそれが、下りでラインが微妙にスライスだったりフックだったりしたら安全圏とは言えません。それに優勝争いで追いかけられているのか、追いかけているかでも変わってきます」

 プレッシャーがかかった状況でいかに50センチを外さないか。これはプロにとって永遠の命題。そこで諸見里は常々過去のメジャートーナメントのハイライトシーンを見て、肝心なときに入れる人、外す人の特徴をつぶさに観察。勝つ人はこういう雰囲気でストロークをするんだ、ということを客観的に研究しているとのことだ。

 そういえば2001年の全米オープンでも最終日の18番で、レティーフ・グーセンが入れれば勝ちという状況で60センチのパットを外してしまい、マーク・ブルックスとのプレーオフにもつれ込んだこともあった。

 昨年のワールドレディスサロンパス杯の最終日。優勝争いの最中、17番で60センチを外して勝利を逸したシン・ジエはそのときのことを振り返って語ってくれた。
「マウンドの頂点にカップが切ってあって、打ち方によっては右に切れても左に切れてもおかしくない状況でした。結果的には、右に切れて外しましたが、ストロークは正しかったので、外れても悔いはありませんでした」

 優勝争いの渦中ではグリーン上で「見えないものが見える瞬間が訪れる」とプロは口をそろえる。そこでいかに冷静になって雑念を振り払いストロークに集中できるか。たとえ短いパットでも普段通りのストロークを貫くことができる者のみが勝利をつかむことができる。たかが50センチと侮るなかれ。50センチを笑う者は50センチに泣くのだから。

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