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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 11/11号
2008/10/30更新
昨年起きた「高校生打球事故」に
損害賠償50万円の額は高い?安い?

 10月16日、約1年前に埼玉平成高校で、コーチが飛球線前方に部員を立たせて起きた打球事故の決着が付いた。プロもあきれた非常識な指導が生んだ、事故の罰金は50万円。果たしてこの金額は妥当なのかどうか、その後を追った。

 この事故、指導に当たっていた同校OBの岡田正志プロが、自らの打球の軌道を見せようと、当時2年生だった男子部員A君を自分の前方約70メートルの地点に立たせてドライバーを打ったことで起きた。

 打球はA君の頭部に当たり、A君は頭蓋骨陥没骨折と診断された。埼玉県警は当初、業務上過失傷害容疑で調べていたが、部員に当たるかもしれないということは当然予見できたとして、より刑罰が重い傷害容疑で書類送検していた。

 日々報道で耳にする“業務上”という用語、一般的な意味とは違って、法律上では社会生活上の反復継続して行う行為で、生命身体に危険を生じるものを指す。法律上の刑罰は5年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金である。

 ケガをさせようという意図がなかった場合、つまり故意ではなかった場合、原則この業務上過失傷害罪を適用するが、埼玉平成高校のケースでは予見可能だったことから、積極的にケガをさせるつもりはなくても、いわゆる“未必の故意”があったと判断されたわけだ。

 傷害罪になると、法律上の刑罰は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と、業務上過失傷害罪よりも、懲役になった場合の上限は格段に重くなる。

 ただ、今回のケースでは不幸中の幸いで、「A君は約1週間の入院と約1週間の自宅療養で学校に復帰した。ゴルフ部も辞めることなく、今は3年生なので引退している」(埼玉平成高校・金沢勝教頭)という。

 このためか、10月16日付で略式起訴となったプロへの刑罰は50万円の罰金。

「略式起訴は、比較的軽微な事件について、原則として本人が罪を認めていて、なおかつ懲役刑にはしない場合に適用される。結果の重大性や、被害者が厳罰を求めているかどうかも重要で、このケースでは重い障害が残るといった結果にはならなかったことも考慮されたのでは」と、刑事事件に詳しい菅原浩史弁護士は見る。

 高校生の打球事故は今年9月にも起きている。東関東高校ゴルフ連盟が主催したルール・マナーの研修会で、参加していた千葉県立泉高校1年の男子生徒B君が打ったドライバーショットが、同校1年の高畠健司さんの顔面を直撃した事故である。

 B君が自分の前方にいる高畠さんに気付かなかった可能性もあるが、指導教諭がB君の背後にいたなかで起きた事故だった。こちらも不幸中の幸いで、高畠さんは今では元気に登校しているという。

「この事故を教訓に、今全力で対策について学んでいる。警察から指摘を受けたのは、“予見できることのなかで起きた過失は絶対に避けなければならない”ということ。ティグラウンドの待ち位置などもしっかり決めていかなければならないので、いろいろ洗い出しをしている。不幸にして事故が起きた場合の賠償についても考えなければいけない」(全国高等学校ゴルフ連盟・石田克人理事長)という。

 埼玉平成高校の事故は、罰金額は50万円と決まったが、略式起訴でのこの金額は法律的にはマックス。被害者感情を考えても妥当といったところか。今後、民事での解決がどうなるかは気になるところだ。

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