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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/1号
2005/10/25更新
「ルールを超えない技術」で勝負する
アイデア満載の最新クラブ開発事情

 SLEルールに適合させるだけならフェースを厚くすればいいが、フェース重量が増えれば重心位置は浅く高くなるため、難しいクラブになる。また、ヘッドの大型化はフェースにも一層の軽量化を求める。やさしさは損なわず、今まで以上に飛ぶクラブを作るという命題に、各メーカーはルールを越えない技術で競い合っている。


スウィートエリアを飛躍的に拡大したモデルも登場

 ヘッド全体の構造の見直しは、従来技術の応用といえる。ルール適合ドライバーの先陣を切って登場したヨネックスのナノブイは、軽量高強度のナノテク素材を使用することでクラウンの肉厚を減らし、重心をコントロールすることに成功した。

 また、近々登場するキャロウェイのルール適合ドライバーも、フェースが厚くなった分、後方のウェートを下方に移動することで重心位置の変化を抑えている。余剰重量をどこで生み出し、それをどう配分するか。

 コンポジットドライバーは、その時点での最高の飛びを求めた結果であるとともに、数年先に登場させるルール適合ドライバーのための技術的な伏線だったと言えるだろう。

 ダンロップがスリクソンW-505で示した、高反発モデルとルール適合モデルで異なるフェース素材を使う手法も、ルール適合ドライバー開発の大きな方向性を示している。それはフェース素材そのものの軽量化だ。

 フェース面はもっとも負荷のかかるパーツだけに、従来チタンではある程度までは可能でも、クラウンなど他の部位のように大幅な軽量化は難しいといわれており、クラブメーカーや素材を供給する鉄鋼メーカーでは、数年前からより軽くて強い素材の開発を進めている。

 また、各メーカー独自のアイデアや技術も次々と登場しそうだ。

 ヨネックスが開発中の海外向け次期モデルは、従来チタン素材を使っているが、フェースを薄くしてもたわみにくい新構造を採用している。

 ヤマハからはスウィートエリアを飛躍的に拡大したドライバーが製品化される。現在テストを行っている藤田寛之らから聞いた話を総合すると、このインプレスXには、もっとも反発力が高い箇所=スウィートスポットがセンター1カ所ではなく、トゥ寄りとヒールよりの2カ所にある。

 その結果、反発係数でいえば0.8以上の有効打点エリアが従来比約4倍に拡大しているということだ。

 トッププロでさえ毎回スウィートスポットでヒットさせるのは難しく、10円玉程度に打点が散らばっているといわれており、アベレージクラスのゴルファーならなおさらのこと。有効打点エリアの拡大はルール適合ドライバーのキーワードになるはずだ。

 このほかにも、たとえば振動吸収素材のフェースへの応用や、2ボールパターのように視覚効果でスウィートスポットに当たりやすくするデザインなど、ユニークなアイデアが登場するかもしれない。

 一方、生産技術面での進歩も欠かせない。たとえばグラム単位の軽量化には溶接技術の影響も大きい。レーザー溶接はフェースの高反発化に貢献してきたが、今後はさらに精度の高い、既存のレーザーとアークの長所を合わせた溶接技術が注目されそうだ。

「ハイブリッド溶接パーツ同士の隙間が大きくても接合でき、溶接部分の肉盛が少なくなるため、その分軽量化できます。また設計通りのヘッドが作れるため、強度そのものも高くなります」(ミズノ広報宣伝部/西田維作氏)

 さらに、飛距離を追及する以上は、反発係数をルールぎりぎりに設定する必要があり、そこで問題となってくるのが製造上のばらつきだ。

「高反発時代はフェース部材の入荷チェックで厚いフェースをはねていたのに、今は逆。薄いフェースをはねなければならない」(ヨネックス開発課長/飯泉剛氏)

 ほとんどのメーカーで0.82程度を基準にしているが、0.83を超えないためには品質管理を徹底する必要があり、それは製造コストにもはね返ってくる。

 素材、構造、品質管理。ルール適合ドライバーの開発には、高反発ドライバーを超える高い技術力が求められている。

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