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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 8/10
2004年更新
税金滞納の法人会員権を差押えた国税庁が
預託金返還訴訟起こし、小松CC民事再生
 ゴルフ場自らの税金滞納で差し押さえを受けるケースはよくあるが、ゴルフ場の法人会員の税金滞納が原因で、ゴルフ場経営会社が倒産に追い込まれるという珍しいケースが起きた。

 今回倒産したのは、小松CC(石川県)を経営する北国リゾート開発(株)で、7月9日に東京地裁に民事再生手続の開始を申し立てた。負債は約105億円、うち預託金が97億8000万円、金融債務は北國銀行からの借入約5億円強程度。清水建設、小松製作所といった民間大手企業と、地元小松市の出資で設立された第三セクターで、平成5年に開場している。

 会員募集は平成3年から開始、第一次、第二次募集の会員からは預託金以外に会員権1枚につき1株の株式も保有してもらう方式をとっていたが、第三次募集では一部会員は預託金のみの募集となり、預託金だけの会員と、株主会員とが混在していた。さらに平成7年、償還対策のために据置期間の延長とともに会員権分割も実施。このとき延長に応じなかった会員の償還期限が昨年11月に到来している。

 同社ではさらなる償還対策として、償還期限到来に先立つ昨年10月に中間法人を設立。会員から預託金を信託譲渡してもらい、一元管理する一方、コースに中間法人名義で抵当権を設定することで保全を図り、会社側からは減価償却実施前の経常利益の5割を、退会希望者への償還原資として提供してもらう方法を提案。中間法人の設立コストは会社側負担だったので、会員の資金負担はなく、7割方の会員が参加するところまでこぎつけていた。

 ところが最近になり、こともあろうに国税から預託金返還請求訴訟を相次いで起こされるアクシデントが。法人会員が税金を滞納したため、国税庁が同CCの会員権を差し押さえ、換金のためにコース側に預託金の返還請求訴訟を起こしたのだ。

 国税庁が法人会員の会員権を差し押さえること自体は珍しい話ではないが、「国税庁から預託金返還を求められたら通常は公売にしてくれるように頼むし、実際公売になる。今回のように訴訟になったケースは過去に記憶がない」(民事再生手続きの申立代理人・服部弘志弁護士)。

“公売”とは、国税庁が実施する競売のこと。要は差し押さえた会員権を市場で換金するので、ゴルフ場経営会社には直接影響はないが、差し押さえた会員権で返還請求訴訟を起こされ、コース側が負けると、原因がゴルフ場経営会社の滞納ではないのにコース経営会社の資産に強制執行をされる恐れが出てくる。正式な差し押さえではない仮差押なら、預託金返還請求訴訟の判決を待たずにもできてしまう。

 同CCの施設には北國銀行の約5億円程度の抵当権が付いているだけ。コースに中間法人が抵当権を付けることも含め、中間法人を使った償還対策については「北國銀行の理解も十分得られていた」(服部弁護士)が、国税庁による強制執行リスクを考え、今回の事態となったというわけだ。

 債務のほとんどが預託金なので、中間法人に参加していた会員の身分は元に戻し、今後はスポンサーを募らず、自主再建を目指すが、国税庁は“公売”と“返還請求訴訟”、それぞれどう使い分けているのか。

会員権に市場性があれば公売、なければ返還請求」(国税庁徴収課)というが、国税庁の行動パターンに詳しい税理士は「市場価格が預託金額面を上回ることは少ないから、ゴルフ場経営会社が返せそうなところだととりあえず返せという交渉をしているはず」と見る。

 ただ、訴訟まで起こすかどうかは「市場での換金に比べ、時間も費用もかかる。今回のように法的手続きをとられるリスクもある。ゴルフ場自身が滞納したわけではないので、倒産しても、国税庁の債権は他の会員と扱いは同じ。訴訟が必ずしも得策とはいえない」ということで、頻発する恐れはなさそうだが、会員の税金滞納でゴルフ場が潰れることもある、ということを今回の倒産が示したことは間違いない。

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