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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 4/20号
2004年更新
太平洋観光系のCC・ザ・ウィングス破産
なぜかローンスターが1コースだけ分離
 親会社は会社更生手続きを経て外資のローンスター・グループに入ったのに、その子会社の1社だけがなぜか更生手続きから漏れた上に、最終的には破産でローンスター・グループから切り離されるという、不可思議な事態が起きた。

 今回、切り離されることになった子会社とは、カントリークラブ・ザ・ウィングス(茨城県、以下、ウィングス)を経営する欧亜観光開発(株)(以下、欧亜)。親会社とは、平成14年11月に、債権者であるRCCから会社更生手続きの開始を申立てられ、翌平成15年7月に更生計画認可を受けた太平洋観光開発(株)(以下、太平洋観光)。

 ウィングスは、もともと太平洋観光の経営だったが、平成8年に経営と預託金債務両方を、太平洋の100パーセント子会社である欧亜に移管、扶桑CC、セゴビアGC・イン・チヨダ、CC・ザ・レイクスの3コースが太平洋観光の経営になっていた。

 太平洋観光の更生法を申し立てたRCCは、欧亜についてはなぜか申立てから外していたが、「欧亜には債権がなかったから申立てできなかった」(RCC申立代理人弁護士)ため。

 ウィングスのコース施設には、総額100億円の担保が設定されているが、すべて債務者は太平洋観光で、欧亜が債務者ではなかったわけである。

 ただ本来なら、RCCが申立てしていなくても、管財人の権限で一緒に更生手続きで処理をしてしまうのが普通ではないかと思われるが、なぜか欧亜だけ未処理のまま取り残されてしまった。しかし、欧亜の会社の株券は100パーセント太平洋観光が保有していたので、欧亜は太平洋観光の子会社として、総額385億円もの預託金債務を抱えたままローンスター傘下で生き長らえてきたわけだ。従って、欧亜の社長にはローンスター・グループ系パシフィックゴルフマネージメント社のジョセフ・エドワード・レニハン社長が就任しているし、同氏を代表者として、今回東京地裁に自己破産の申立てを行っている。

 そもそもなぜ、欧亜が更生手続きから漏れたのか? その原因について、太平洋観光の更生管財人である河野玄逸弁護士、そしてローンスター・グループが、ともに「ノーコメント」なので詳細は不明だが、ゴルフ場の倒産処理問題に詳しい弁護士は「更生手続きを早期に終わらせるため、欧亜の処理はローンスターに丸投げしたのでは」と見ている。

 それに、なぜ法的にはプレー権が残る更生法や再生法でなく、法的にはプレー権が消滅してしまう破産なのかだが、破産申立代理人から会員宛に出された文書では「多額の預託金償還債務を抱え、一部差押まで受けている状況の中では、(中略)民事再生手続きにより、会員の皆様の利益を図ることのできる新たなスポンサーの下で欧亜観光を再建する可能性を検討した」が、「民事再生手続により債務カットを受けると多額の債務免除益に対する課税負担が発生、結局再生債権の弁済が不可能となり破産手続に移行せざるを得ない事態となることが判明した」ため破産を選んだとしている。

 欧亜の負債は約387億円に上るが、ウィングスの会員募集は最高3000万円と高額だったため、会員数は約1571名だが預託金債務は実に385億円と高額。債務免除額が大きくなりすぎ、免除益に対する税金も巨額になる、というわけだ。

 また、最大の疑問は、今回、ローンスター・グループがウィングスを外部へ売却することを望んでいる点にある。ゴールドマンサックスとローンスターの外資2社によるゴルフ場争奪戦は、すでに「数」の競争から「質」の競争へ移行しつつあると言われる。収益力のないコースは今後徐々に切り離されていく可能性は十分あるが、ウィングスは平成14年度の入場者数は3万4521名と決して経営状態が悪いとは言えない。

 この点についてもローンスター側が「ノーコメント」なので事実は不明だが、「コース内の水利権を主張する法人が、ポンプ室前に立て看板を数年前から立てている」(ウィングスの会員)というので、この辺りが原因である可能性は高い。

 経営会社が法的手続きに入っても、敷地を貸している地主や、水利権者には基本的には無関係で、契約の継続交渉をしなければならないが、そこが難航しそうだとなると、経営権を持ち続ける意味は薄れるからだ。

 欧亜では「ゴルフ場の引き受け先には会員のプレー権を保証してくれるよう要請していく」(申立代理人弁護士)意向だが、いつもなら真っ先に買い手として名乗りを挙げるローンスターが、今回は売り手。会員組織ができて名乗りを上げるのか、それとも別の買い手が現れるのか。焦点は権利関係の調整腕力ということになるのかもしれない。

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