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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 2/24号
2004年更新
21年前にJGAと遺恨を残したヨネックス
新カーボン複合アイアンで“意趣返し”?
 ヨネックスが4月にヘッドにカーボン素材を採用した「サイバースターPB」を新しく発売する。カーボン素材を得意とする同社のことである、カーボンアイアンを発売することに何ら違和感はないのだが、業界関係者の間からは「20年越しの意趣返し(復讐)」との声も挙がっている。果たしてこの「意趣返し」の意味は?

 ご存知のゴルファーもいると思うが、ヨネックスがカーボン素材を使ったアイアンを発売するのはこれが初めてではない。今から21年前の1983年、ヘッドのソール以外はカーボンで造られた「カーボンアイアン」を発売。「2番手上の飛び」のキャッチフレーズで売り出し、大変な話題を呼んだ。

 ところが、このアイアンは、「R&Aの用具審査で承認されたにもかかわらず、日本ゴルフ協会(JGA)からゴルフ規則に抵触しているとされ、結局、発売中止になったのです」(同社ゴルフ事業開発課)

 違反とされた理由を、当時の事情を知る関係者は、「要するにカーボンヘッドのソール部分に配された金属素材がルールで許される“おもり”でもなく、ソールの磨耗を防ぐプレートでもなく、ヘッドの強度を補強する構造になっていると判断。それが、当時のルールに違反していたようです」と振り返る。

 後に、JGAがR&Aにこの点を改めて指摘すると、R&Aも納得したという。

 そこで同社はすぐに、その部分を改良した新作を作ったが、JGAは「外見上、前作との見分けができないので、ともに競技での使用を禁ずる」と通達。するとヨネックス側はそれを不服として、東京地裁に訴えるという大騒ぎに発展した。

「当時、裏では、ヨネックスのカーボンアイアンが余りに飛ぶし、ヒットしたので、ライバル会社がJGAに訴えたからだとか。逆に、R&Aの審査を通ったのはヨネックス側が政治的に動いたからだとか。いろんな憶測が飛び交っていましたよ」

 同社のカーボンアイアンには、そうした騒動の裏面史があったのだ。それゆえだろう、今回のPBの宣伝コピーには「あのカーボンアイアンを超える、新カーボン複合アイアン、ついに出現」と、かつての騒動を喚起させる「あの」の一語が冠してある。と言われても、当時の事情を知らない世代には「あの」と言われても「どの?」っていう感じなのだが……。

 もちろん、今回のカーボン複合アイアンにはルール上なんら問題はない。以前のようなカーボンフェース構造ではなく、チタンフェースの後ろを中空状の「エア・カーボン・チューブ」で補強。さらに、キャビティバックとソールにも、それぞれ異なる素材が配された多層構造。このなかの、厚さ1.9ミリという極薄チタンとカーボンチューブの複合構造がこれまでにない反発力を実現させたという。

「カーボン素材を使用したアイアンは、実は欧州ではずっと販売し続けており、研究も続けていました。PBはそのひとつの成果で、かつて2番手上の飛びと謳ったカーボンアイアンより、反発係数で5パーセントアップしています」(開発部・飯泉剛課長)

 さて、このカーボン複合素材アイアン、昨年の複合素材ウッド同様に、今後新たなトレンドとなりうるのだろうか?

「カーボンアイアンという捉え方ではなく、ブリヂストンが昨年発売したツアーステージV301(ターボラバーを含む4種の複合素材構造)と同様、多層構造アイアンのカテゴリーに含まれると考えるべきで、多層構造アイアンはすでにトレンドになっていると思います」と業界に詳しい片山哲郎氏は語る。

 実際、カーボン素材を手がけているライバル各社に今後のアイアン開発について尋ねても、「もちろんカーボン素材には注目してますが……」としながらも、ヨネックスの新アイアンの構造に言及したコメントを聞くことはできなかった。さて、ヨネックスの20年越しの意趣返しの成果は如何なることに?

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