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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/25号
2003年更新
大量会員で社会問題化したあの茨城CC
保養所として使う台湾系企業に売却へ
 会員権乱売事件の代名詞ともなった茨城CC事件。破産手続きの中で、この7月、台湾系と思われる企業に売却されたことが明るみに。事件の首謀者の逮捕、経営会社の破産から12年。これでゴルフ場はオープンするのか、と思ったのだが……。

 破産した茨城CCの経営会社である(株)常陸観光開発の破産管財人、大橋堅固弁護士によれば、「この7月に有償で売却したことは事実です。コースを購入した食品会社は、保養所として使うと聞いていますが、詳しいことについては、これ以上言えません。低額の取引で、会員への配当はなし。残務整理を終え、来年の4~6月までには、この破産事件も終了します」とする。

 購入したのは、東京都荒川区に本社を置く元佑(株)(松村三子代表取締役、資本金1000万円)。同社は昨年9月設立。日用雑貨、食料品等の輸出入・販売を主な業務とし、役員には外国人らしき名前が並び、台湾系企業だとされている。また、茨城CCの施設については、破産管財人が言うように、地元・高萩市でも保養所での利用と認識、ゴルフ場として再建される可能性はなくなった模様だ。

 全国約5万6000人から集めた預託金総額は、約1200億円。破産当時は、その売却代金は300億円とも400億円とも噂されたが、事件発覚以降、バブル経済も崩壊、資産価値は日を追ってジリジリと下げ続けた。実際に平成9年には、一度は45億円で落札されたものの、事件の大きさによる茨城CCのイメージもあって、交渉は結局白紙に。20億円を下回っても買い手すら現れない状況で、昨年には高萩市へほぼ無償に近い譲渡、スポーツトレーニングセンターへの転用なども、取り沙汰されていた。実際、固定資産税など税金負担や、コース管理などにも金がかかり、破産管財人にとっても重荷だったことは事実のようで、昨年夏ごろからはコースの管理も止めていた。

 ちなみに5万6000人の会員へは、これまでに平成10年と一昨年の2度にわたり、それぞれ1.3パーセント、1.8パーセントの配当があった。200万円で購入した会員が多いことから、その配当額はひとり当たり約6万円。しかし、あくまでもこれは、逮捕され服役中の水野健元社長の資産を処分した中からの配当である。今回、売却先が決まったとはいえ、「会員への配当はなし」と管財人が明言する厳しい状況。さらに買い主次第では、元会員のプレー権についても認めるのではとの一縷の望みもあったが、使用目的が保養所ではそれ以前の問題。もっとも保養所というには、140万平米という土地はあまりにも広大。そのため、いずれはゴルフ場としてオープンするのではとの憶測もある。

 ともあれ、会員にしてみれば、預託金はほとんど返らず、一度もゴルフができなかったという事実には変わりはない。水野元社長の逮捕時、同社長に近い人物が、こんなふうに語ったのが印象に残る。「守る会を結成するのも結構。大きな社会問題にするのも結構。水野を逮捕して溜飲を下げるのも結構だが、詐欺罪に問うためにゴルフ場を完成させないなどと言ってると、会員がもう一度泣かされることになる」

 これについて若干説明を加えると、すでに茨城CCは事件発覚時点で工事は99パーセント以上完成していたが、100パーセント完成させてしまうと、元社長の脱税の罪しか問えない。詐欺罪を立証するためには工事を止め、オープンしていない状況にするのが必要だったが、結果的にそれを後押ししたのは、社会問題にまで発展させた会員組織であり、その世論だというわけだ。真偽のほどはわからないが、その後、管財人の手によりコースが完成したのは平成5年。再度、この人物に取材を申し込むと、「事件発覚時に、まずゴルフ場を完成させ、オープンしておいたら、その間に高く売れたかもしれないし、少なくとも会員はプレーできた。客さえ入れば、配当率だって高くなった可能性もあった」と、平然と言ってのけた。

 ともあれ、あれほどの社会問題に発展しながら、返った預託金は6万円、しかも誰もプレーできないまま終焉するのは、寂しい気がするのは確かである。

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