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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/19号
2002年更新
「経営会社=クラブ」の図式から脱却目指す
下野CCが会員総会。会員自らクラブ運営へ
「倶楽部」と「クラブ」------この2つを明確に分け、経営会社と会員組織が協力して再生を目指すゴルフ場が現れた。民事再生法など法的整理を選ぶゴルフ場が相次ぎ、ややもすれば両者の対立構図が目立つ中で、この新しい試みに注目が集まっている。

 注目を集めるのは栃木県鹿沼市の下野カントリークラブ(経営=(株)下野カントリー倶楽部・宮崎勤社長)。昭和61年のオープンだが、預託金の返還請求が急増し、2度にわたる据置期間延長を要請した後、平成12年2月、現在の経営陣が株式を取得、経営権を取得した。ジュンクラシックCCの設計も手がけた宮崎社長ら新経営陣は、結婚式場などゴルフ場以外の資産を処分するとともに、ゴルフ場事業に専念することを宣言。会報などを通じ、経営実態を情報公開するとともに、理事会と二人三脚で再生の道を模索してきた。その中で選んだのが、今回の「倶楽部」(会社側)と「クラブ」(会員組織)を、明確に分けるというアイデアだ。

 昨年10月には、理事会で「会員による会員のためのクラブ活動・運営」を目指し、会則を抜本改正。これにより理事を19名に増やし、25名以上の推薦があれば会員なら誰でも立候補できるようにし、理事は会員総会で選出されるシステムに変えた。これに基づき、この10月13日に、第1回目の会員総会が開かれた。会員約4300名のうち、出席者はわずか30名だったのは寂しい限りだが(委任状での出席は約640名)、預託金会員制度で会社側の意向を受けない理事会が組織され、また会員総会が開かれることは極めて珍しいケースだ。実際に下野CCでも、会員総会の開催を会則に謳いながらも、会社側がクラブを一体運営していたため、会員総会は開かれてこなかった。

「クラブ予算として年会費、競技参加費など8171万円が承認され、各委員会、各種競技会開催、クラブ対抗への選手派遣や会報の発行などの事業は、今後、クラブが行っていくことになりました。会社は、クラブ運営の事務や、事業運営に必要な業務をクラブから委託されて行うという立場です。またクラブが私ども会社の株式の27パーセントを理事長名義で持ち、経営にも様々な意見、アイデアを出してもらえると期待しています」とは、同CCの山田司支配人。

 会員との協調により、預託金の返還圧力の軽減に期待するとともに、今後は株主会員制への移行も視野に入れているという。

 また、新クラブの初代理事長に就任した小野寺利孝弁護士によれば、「2年前の経営交代から、会員としても真のクラブとは何か、ということを模索してきた。これまで多くの会員にとって、会員権相場や預託金問題、あるいは安くプレーできるなど、経済的な理由ばかりが優先されてきた。そのためかメンバーライフを保証するクラブ運営については、多くの場合、会社にお任せというのが実情でした。しかし、クラブは本来、会員により会員のために運営されるべきであり、そのためには会員が自立し、意見を述べ合うシステムが必要だと考えたものです」

 さて、こうした試みについて、ゴルフ場問題に詳しい評論家の田野辺薫氏は、「基本的に会員組織であるクラブのあるべき姿。ただ、預託金制のほとんどのゴルフ場で会員総会すら開催されていないという現実のほうが異常」とした上で次のように話す。

「どこのゴルフ場にとっても年会費は会社の重要な収益。それをクラブ運営に充てるとしたら、税金、人件費、メンテナンンス費用など、事業を運営する費用を捻出できるのかという疑問もある。また、現時点でクラブに法人格がないため理事長名義で株式を所有しているようだが、今後、中間法人法を利用するなど、クラブの法的な位置付けの検討も必要だろう」

 現在、下野CCは相場も立たないような状態が続いているが、現在の経済情勢を考えると、会員がクラブ運営に参加できるという今回のシステム導入がすぐに相場上昇につながり、償還圧力が弱まるとは思えない。しかし、「会員による会員のためのクラブ」というあるべき姿を求めていく方向性は評価していいだろう。

「倶楽部」と「クラブ」。この2つが、今後どのように協調しながら進んでいくのか、注目していきたい。

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