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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 6/11号
2002年更新
久保樹乃が7ホールのプレーオフを制すも
“早く終わらすため”のカップ位置問題に
 国内女子ツアーの最高賞金大会、ヴァーナルレディースは88年のツアー制度施行後の最長プレーオフ7ホールの末、久保樹乃が5年8カ月ぶりの優勝を飾った。久保と木村敏美の2時間以上にわたる“死闘”は当分語り継がれそうだが、関係者の中でそれ以上に盛り上がっているのが、勝負を決したカップ位置をめぐる物議だ。

 資料の残っている中では、86年のダンロップレディスで吉川なよ子、沢田さと子が記録した10ホール2時間40分に次ぐツアー史上2番目の長さとなったプレーオフ。優勝した久保は一昨年、昨年のシード落ちからの完全復活を果たし、賞金ランクでも不動を抜いてトップに踊り出るなど、今季は2勝目、3勝目も期待できそうな好調ぶりだ。それだけに、プレーオフの幕切れはもっとさわやかなものであって欲しかったのだが……。

 ギャラリースタンドの設置された18番パー5を延々と繰り返す形式となったプレーオフ。1ホール目は久保、木村に山崎礼奈を加えた3人がティオフ。ここで久保と木村はそれぞれ3メートル、1メートルにつけバーディを奪取。まず山崎が脱落した。2ホール目から5ホール目は久保、木村両者パーが続き、6ホール目両者ボギー、7ホール目に木村が先にボギーを叩き、久保のパーセーブで勝敗が決まった。

 バーディ合戦で始まったプレーオフの締めくくりが、ヒヤヒヤのパーセーブ。これは2人の体力に問題があったわけではなく、“なるべくしてなった”結末だった。

 女子ツアーでは近年、試合がプレーオフに突入するとギャラリーサービスの意図もあり、使用ホールのカップを別位置に切り直すというのが基本方針。今回もプレーオフ決定と同時に18番グリーンには新たなカップが切られ、4ホール目突入の前に2度目の切り直しが、さらに6ホール目前に3度目のカップ位置変更が行なわれた。

 問題はその最後のカップ位置。グリーン上、左手前のコブ状になっている部分のほぼ頂上、通常では「いいショット、いいパットが結果に反映されないアンフェアな位置」と言われる傾斜にピンが立てられたのだ。

「テレビの放映時間、ギャラリーの方々への時間的な配慮などのため」(大迫たつ子LPGAツアーディレクター)が第一理由という。

 6ホール目、久保のグリーン手前からのショートアプローチはカップ手前1メートルほどに止まりかけながら5メートル以上も戻った。木村のカップ左2メートルからのバーディパットはカップを過ぎると5メートル近くも転がっていった。7ホール目は木村の手前4メートルから入りかけたバーディパットがカップの縁を回転すると、左手前へ5メートル転がり落ちる、というひどさだった。

 久保も「最後はカップの手前に“バント”でした」と話している。

「絶対に正規のプレーでは切れないカップの位置。木村さんのパットを見て、私は心臓が飛び出るくらいつらいものがありました」とは大迫ディレクター。競技委員長と大迫ディレクターの“苦汁の選択”だった、というが、実際は二者協議ではなく、大会スポンサー社長も加わった三者会談で決定したカップ位置だったとも囁かれている。

 敗れた木村も、もちろん久保も、そのカップ位置に恨み言は言わなかったが、明らかに「あそこに切れば、どちらかがボギーを叩くだろうという位置」というのが出場選手たちの声だ。どちらが先に次のバーディを奪って決着をつけるか、そんな雰囲気の試合展開が、最後の最後にまるで泥仕合のようになって終わった格好になった。

 勝った久保は大いに讃えたいが、時間を急ぐあまりの選択がゲームをなんとも後味の悪いものにした感は否めない。賞金総額1億円、優勝賞金1800万円は他の大会の2倍ともなる額。その大会の優勝決定がこんな形だったのは残念だ。

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