週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 5/1号
2012/4/23更新

左打ちチャンプが10年で5回。
レフティが勝てなかったのは遠い昔のはなし


レフティマスター3人衆。ワトソン、ウィアー、ミケルソン

 マスターズをプレーオフで制したのは、レフティで米ツアー屈指の飛ばし屋、バッバ・ワトソン。メジャー初勝利、賞金144万ドル(約1億1700万円)のビッグマネーを手にし、母と抱き合い感涙にむせんだ。史上3人目のレフティチャンプの誕生である。かつては、「レフティは勝てない」とジンクスのあったマスターズ。実はここ10年、5回もレフティが勝っているのだ。

 元々、マスターズを制するにはドロー(右利きの場合)が断然有利。2番、5番、9番、10番、13 番、14番、17番は、右打ちがドローを打てば、次打で2番手ぐらい違うほど距離を稼げるホールだ。

 右打ちのドローはレフティにとってはフェードとなるので、長年、飛距離の落ちるフェード系を打たざるを得ないレフティには不利といわれてきた。

 そんなレフティ不利の概念を打ち破ったのは03年のマイク・ウィアー。97年、タイガーの圧倒的飛距離の勝利をきっかけに、コースが年々長くなっていたにもかかわらず、レフティで身長も172センチと小柄なウィアーがマスターズを制したのだ。

「飛ぶフェードが打てなければ、マスターズでは通用しない。だからトレーナーをつけ身体を強きょうじん靭にして、フェードでも距離の落ちないパワーフェードを身につけた」(ウィアー)

 ドローと同じくらいの威力のあるパワーフェードで、レフティ不利のジンクスを打ち破ったわけだ。

 2人目のレフティチャンプはいわずと知れたフィル・ミケルソン(04、06、10年の3回優勝)。ミケルソンはドロー(レフティは左から右に曲がる球)を得意としているが、ロブショット、トラブルからのインテンショナルショットなど、持ち球を超えた攻撃力を持っている。

 10年、3回目のマスターズ勝利の時の最終日、13番。右にフックして林の中。フェアウェイに出すだけの処置しかないと思えた。しかし、林へ入ってみると前には直径1メートルくらいの“穴”がぽっかり空いていて、グリーンが見えている状況。ミケルソンはその穴から2オンを果たし、イーグルをもぎとった。まさに今年のワトソンがプレーオフで見せたショットと同じ、乾坤一擲(けんこんいってき)のショットだった。

 82年、マスターズで15位となり、当時「世界最高のレフティ」と評された羽川豊はこう語る。「左利きというのは子どものころから、自分で工夫して自分だけのゴルフをつくりあげていきます。用具も選択肢は少ないし、クラブに合わせてスウィングもつくらざるを得ません。また右利きの人は助言しにくいし、右利きの理論は役に立たないことも多い。だからスウィングも総じて個性的です。そのかわり、右利きの人以上にテクニシャンが多い。コーチも不要だというワトソンの気持ちはよく理解できます」

 そういえば、ウィアーもミケルソンもワトソンもスウィングは独特。ワトソンは長い手をフルに使って大迫力のフェードでブッ飛ばすスタイル。コーチは不在で、球を曲げる練習が大好きだという。

「オーガスタは左ドッグレッグが多いので、右打ちのフックが有利なのは確か。しかしクラブも進化して、ドローで飛距離を稼がなくてもよくなった。飛距離が出ればどちらの球筋でもいいわけです」(前出・羽川)

 飛距離でひけをとらなければ、曲げ球の技は右利き以上ともいえる。10年で5回のレフティ勝利の理由はそんなところにもあるようだ。




 
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