週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　ロレーナ・スラム？　ロレーナ・オチョアのクラフトナビスコ選手権の優勝で、こんな言葉がささやかれるようになった。昨年の全英女子オープンに続いてメジャー2連勝で、あと全米女子オープンと全米女子プロを制すれば、4大メジャー連続勝利で、タイガー・スラムならぬ、ロレーナ・スラムが達成されるというわけだ。狙うはメジャーと言い切るオチョアとタイガーの共通点を探った。

誰も私を止めることはできない！ メジャー2勝目で大変身したオチョア

　ワールドランキングでは、タイガー・ウッズも、オチョアも、ランキング2位のプレーヤーに2倍以上のポイント差をつける、圧倒的な強さを誇る。だがオチョアに関しては、これまでプレッシャー、メジャーに弱いといった印象がもたれていた。

　というのも、オチョアといえば、最も印象的なのが、2005年の全米女子オープン、最終18番で、2度の池ポチャで勝利を逃し、ナビスコでも2006年には3日目を終えた時点で3打差リードしていたのにもかかわらず、結局、プレーオフでカリー・ウェブに敗れてしまった。

　昨年は、3日目の17番パー3で、7を叩いて優勝戦線から脱落。過去2年、賞金女王というよりは過去49試合で17勝しているにもかかわらず、昨年の全英女子まで、メジャーでは無冠だった。そういう意味ではオチョアがどれだけ、メジャーに嫌われていたかがわかるだろう。

　確かに、今年のナビスコでも、最終日直前には「あまり硬くならずに、落ち着いて、ルーティーンどおりにプレーができれば良い、と考えていた」と彼女自身、メジャーの最終日には、自分のプレーができないことが多いと自覚していた。

　それが、試合が終わってみると、「最終ラウンドは、すごくいい感じでプレーできた。今の私は、何も怖くないし、誰も止めることができない」などと自信たっぷりで、今回のナビスコでは大きな変化があったことが分かる。

　全英では、とにかくメジャーに勝ちたくて必死の思いだったが、2度目、それも連続でのメジャー勝利で、プレッシャーの扱い方、自分自身への自信が確固たるものになったようだ。

　タイガーとオチョアの差は、メジャーでプレッシャーを味方にできるかどうかの違いといわれてきたが、今回の勝利で、オチョアは、ソレンスタムに代わって、女性版タイガーの地位を確実にしたといえるようだ。

　今年のマスターズの最大の話題は、タイガーの年間グランドスラムの話だったが、あるいはオチョアも、ロレーナ・スラムだけでなく、年間グランドスラムも夢ではないような勢いになってきた。

「出場する試合すべてで勝ちたい」と語るオチョアと「勝つために試合に出場する」と語るウッズとは、若干語り口は違うが、これをメジャーにあてはめるなら、今後6月、7月で残りのメジャー3試合を消化する女子ツアーのほうが、集中力の問題で、グランドスラムを達成しやすいといえるのかもしれない。

　男子では、年間グランドスラムをかつて、ボビー・ジョーンズが達成しているが、これは全米、全英の両アマを含んだグランドスラムで、現在の形での年間グランドスラムを達成したプレーヤーは、過去一人もいない。

　女子のほうも、1950年に、ベーブ・ザハリアスが、当時メジャーとされていた3試合を制し、また1974年にサンドラ・ヘイニーが、メジャーすべて（当時は全米オープンと全米女子プロの2試合だけがメジャー）を制して“年間グランドスラム”を達成しているが、現在の形での年間グランドスラムを達成したプレーヤーは誰もいない。

　年代を別にすれば、メジャー4試合をすべて制したプレーヤーには、A・ソレンスタムやK・ウェブなど含めて過去6人のプレーヤーがいる。

　しかし、なんと言っても、4つのメジャーを同じ年にすべてに優勝するというのが、ゴルフ界最高の金字塔といえるだけに、タイガーにも、オチョアにも注目が集まるのだろう。

「トップまで上り詰めるのに4年かかった。そしてトップであり続けることは、本当に大変なことだが、その価値は十分にあるわ」とオチョア。

　そうした意味でも、これからもメジャーに勝ち続けたいとするオチョアが、6、7月のメジャーでもどんな試合を見せてくれるかが楽しみだ。