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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 12/18号
2007/12/6更新
太っ腹!? 預託金全額返還する
ゴルフ場の背景に“中国特需”があった

 鉄鋼大手のJFEホールディングス傘下の4コースが、東京建物系列のJゴルフに売却されることが決まった。著名企業傘下のコースでも民事再生での預託金カットがあり得る中、退会希望者には全額預託金返還に応じるという太っ腹ぶりだ。どこがどう違うのか、そのワケに迫った。


退会希望者は少ない? リバー富士

 JFEホールディングスは、今から5年前にNKKと川崎製鉄が経営統合して誕生した持株会社。NKKは、今年5月までの総出荷累計が1000万トンに達したチタンの鍛造圧延材SP-700シリーズで、高反発フェースの先駆けとなった企業でもある。

 今回手放すのはリバー富士(静岡)、バイロンネルソンCC(福島)、赤坂CC(岡山)、鷲羽CC(岡山)の4コース。

 バイロンネルソンが旧NKK系、残る3コースが旧川崎製鉄系のコースである。いずれも会員制で、譲渡に伴って退会を希望する会員には、全額預託金返還に応じる。

 著名企業系列のゴルフ場といえども、預託金債務に親会社が債務保証を付けているケースはまずない。親会社側の体力によほど余裕がなければ、子会社のゴルフ場経営会社の預託金債務を肩代わりすることは、親会社側の株主への背信行為になる。

 過去、系列コースの売却時に、体力に充分な余裕がある親会社が全額預託金債務を肩代わりしたケースはいくつかあるが、体力充分と言えども見放したケースもある。三井物産は、白鷺、那須国際の2コースでは全額返還したが、なぜか松名では民事再生で預託金をカットした。

 JFEの業績は目下のところ絶好調。わずか5年前、NKKが日産自動車の資材納入先からはずされ、赤字に転落してライバル企業である川崎製鉄との統合の道を選んだ頃とは、比較にならない躍進ぶりである。

 爆発的な成長が続く中国にモノを運ぶタンカーや、インフラ整備に使う建設機械などの需要が急増、そこに莫大な鉄鋼需要が生まれているのである。

 ただ、需要の急増に合わせて巨額の設備投資も増やしているので、業績の好調さに比べるとキャッシュはさほど潤沢ではなく、07年9月中間期末でのキャッシュは353億円しかない。

 今回売却の対象になったコースの会員数は法人、個人あわせて約5000人。預託金総額は「非公開」(JFEスチール広報)なのであくまで推定だが、どう少なく見積もっても300億円以上にはなる。余裕で返せるとも思えない額だ。

「おそらく退会希望者はさほど出ないという見通しが既に立っているのだろう。譲渡先がJゴルフとなると、会員の抵抗感もほとんどないはず」(ゴルフ場業界関係者)。

 JFEは今回の譲渡について、「今後ゴルフ場経営が厳しくなることを予想し、我々よりも経営ノウハウがある企業に売却した方がいいと判断した」(同社広報)としている。

 譲渡価格は非公開だが、最も苦しい時期に売らずに頑張ったおかげで、売値が上がったのは間違いないだろう。

 JFEグループにはこの4コースの他、昨年までミズノオープンが開催されていたJFE瀬戸内海GC(岡山・メンバーシップ)、半田GL(愛知・セミパブリック)、水島GL(岡山・パブリック)のリンクス仕様の3コースがあるが、売却対象にはなっていない。

 いずれも旧NKK、旧川崎製鉄の事業所に隣接して作られているコースで、「周辺地域の方に利用してもらう目的で作った」(JFE)。

 事業所がある都市はいずれも旧NKK、旧川崎製鉄の企業城下町でもあり、地域の中核企業としての役割意識ゆえの温存なのかもしれない。

 その企業としてのプライドが、預託金の全額返還という決断につながったことも間違いないだろう。

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