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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 9/12号
2006/8/28更新
民事再生なのに預託金が全額戻る!
50億円を手当てしたオンワードの事情

 ゴルフ会員権の預託金は、ひとたび民事再生手続きにはいってしまうと、預託金は限りなく100パーセントに近い割合でカットされるのが常識。ところが、スポンサー候補がコースを高値で落札してくれたおかげで、預託金が全額返る上に、プレー権まで保証されるケースが登場した。


グアム島で唯一海越えホールがあるマンギラオ

 今回預託金が全額返ることになったのは、グアム島のマンギラオゴルフクラブ。経営会社の株式会社ティ・エイチ・コーポレーションが日本法人なので、民事再生手続きを使うことができた。

 この会社、ゼネコンの長谷工コーポレーションと、旧三和銀行系列の東洋不動産の合弁会社で、総額50億5000万円の預託金に、両親会社からの借入金約19億円など、70億円の負債を抱える。

 今年4月の再生手続き申立後、世界5大監査法人の一角・KPMGグループ傘下のグローバル・マネジメント・ディレクションズをアドバイザーとして入札を実施。

 晴れてスポンサーに決定したのは、アパレル最大手・オンワード樫山のグループ会社であるオンワード・ビーチリゾート・グアム。

 50億円強の預託金が全額返還されるということは、落札価格は50億円以上だったことになる。

「守秘義務があるので、正確な落札金額は当然コメントできないが、預託金を返還できるだけの落札価格が出るとは、正直、民事再生の申立をしたときは思っていなかった。会員にはかなりのカットを飲んでもらわなければならないだろうと考えていたので、よかったと思う」(申立代理人の服部弘志弁護士)

 一方、預託金の全額返還を行っているゴルフ場としては、ゼネコンの大本組の子会社が経営していた秩父国際CCも、9月半ばにゴールドマン・サックスグループに譲渡されることが決まっている。

 ゴールドマンへの譲渡後も、従来通り退会希望者には預託金を返還していくことが約束されているが、こちらは正・平合わせて約1000人の会員に対し、預託金総額は推定2~3億円ほどしかない。

 一部の例外を除けば、ゴルフ場の買値はせいぜい20億円が上限。100億円近い預託金があると、預託金の負担付きで買うことは技術的に不可能だ。

 しかし3億円の預託金なら、例えば実質4億円のコースを預託金債務付きで1億円で買うのと経済効果は同じだ。

「会員と従業員の雇用が一番気にかかるところだったので、預託金の返還を続けてくれる買い手を探していた」(大本組)という。

 マンギラオのケースも、預託金以上の金額で売れたので、秩父国際と理屈の上では同じ事情と言える。が、何しろケタが違う。

 オンワード樫山は、『23区』や『組曲』などトップクラスの自社ブランドを持つ、いわずと知れたアパレルのトップ企業だ。

 2000億円を超える自己資本に、500億円を超える潤沢なキャッシュを持つ優良企業ではあるが、国内で経営しているゴルフ場は、昭和53年オープンのレイクランドCC(栃木県)1コースだけ。ゴルフ場買収に名乗りを上げる、常連組ではない。それがいきなりゴルフ場一つに50億円とは、思い切った買い物であることに違いはないだろう。

 今回のマンギラオ買収の意図について、同社では「正式決定前なのでコメントは控えたい」としているが、「被服のみならずライフスタイル全般に≪ファッションを提供していく≫」(同社広報)との方針のもと、リゾート事業も展開しており、92年にオープンさせた、グアム島のホテル・オンワードビーチリゾートはその中核施設だ。

 グアム島では、95年にウォーターパーク、02年には全室オーシャンビューのタワーホテルを増設。昨年には旧ミザワリゾートグループから、今回と同じグアム島のタロフォフォGCを取得、年末にはリニュアルオーープンが予定されている。

 オンワード樫山は、本業のブランドビジネス、法人ビジネスに次ぐ第三の柱としてライフビジネスを位置付けている。今回、落札はこのライフビジネスの一環だろう。

 日本企業の大半が撤退してしまった海外コースへの投資に、敢えて踏み出したオンワードの経営判断。結果に注目しよう。

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