週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　6年前の都条例の改正により路線バスや鉄道車両などの車体広告が解禁されて以来、大都市の乗降客の多い路線では、車体に広告がカラーリングされた車両をよく目にするようになった。ゴルフ業界でも今月、キャスコが業界初の試みとして東京～千葉間を走る路線で、この車体広告を実施している。

　キャスコでは昨年から、ひと際目に鮮やかでボールの行方が追いやすい黄色のカラーコーティングボール「KIRA BALL」シリーズを発売、その広告宣伝として、現在、JR東日本の車体広告を中心にしたクロスメディアプロモーションを展開している。

　携帯サイトの特設や首都圏沿線の駅貼りポスター、サンプル配布などだが、なかでも注目されるのが、電車のボディを媒体にした車体広告だ。

　この3日～30日の間、総武線各駅停車（千葉～三鷹間）で、同ボールを象徴する彩度の高い黄色で車体にボールやロゴ、キャッチコピーなどを描いた1編成（10両）の電車を走らせている。

　もともと同路線の電車には黄色のラインが走っており、そのカラーリングを生かした、目を引くデザインになっている。

「街中でこれほど大規模なクロスメディア宣伝は初めてです。今回は『ゴルフボールは白』という既成概念を変え、こんな鮮やかな色のボールもあり、それを作っているのはキャスコということをプロモーションしたいと思っています」（広告宣伝担当・六車拓人氏）ということ。

　同車体広告の代理店であるJR東日本企画によれば、ゴルフ用品業界の車体広告は今回が初めて。そして、キャスコと同じ規模（総武・中央線、1編成、4週間）の車体広告の基本料金は税別400万円とのこと。意外に安い気がするが……。

　だが、乗降客の多い山手線の車体広告の料金は、11両2編成、4週間で税別1500万円にもなる。それでも現在、希望者は引く手あまたで完売の状態とか。

「以前は、広告デザインのパターンは決められていたのですが、現在は外面の10分の1以内の面積ならデザインは自由なので、それぞれ面白いアイデアが盛り込まれるようになりました」とJR東日本企画の広報担当者。

　見るものをアッと言わせたいと意気込むクリエーターたちが、列をなして順番を待っているようだ。

　実はゴルフ用品メーカーの鉄道広告では、車両内や駅構内を占拠するような大規模な広告の例はこれまでにもあった。

　先月はヨネックスが、東海道・山陽新幹線の東京～博多間を往復する「のぞみ」2編成で車内広告スペースをすべてサイバースターナノブイのポスターで占拠した。JR東海がこの4月から始めた新型広告「新幹線トータルパック」にさっそく応じてのことだった。

　ヨネックスは東京駅構内で試打会を実施するなど、従来からユニークな広告戦略を行ってきたが、今回も相当に思いきってのことだったという。

「常に新しい手法を考えていますが、その都度冒険になりますね」（企画宣伝部）としながらも、意外な手ごたえを得たそうだ。

「広告を目にされた新幹線利用のゴルファー層は狙いどおり40代、50代のビジネスマンが中心でしたが、女性の割合も3割と意外に高く、しかもそのなかで一番多かったのが30～40代でした。この年代の女性の行動力には、今後注目したいと思っています」

　ちなみに同広告の料金は1か月、2編成で320万円。こちらも既に来年3月まで完売の人気。

　ブリヂストンスポーツでも、このところ2月のジャパンゴルフフェア（東京・有明ビッグサイト）の開催時期に合わせて路線の「ゆりかもめ」を媒体に、車内広告スペースを独占する「ADトレイン」（10日間、1編成で税別28万5000円）や駅構内の集中広告などを展開している。

　その効果のほどは、「会場にいらしたお客様からは、目にされたという声を多くいただきました」（宣伝部）と、確かな手ごたえを得たと話す。

　意外なスペースで、集中的な広告を目にすると、やはりその企業の意欲、意気込み、自信などが伝わるのだろう。

　ところで、先のキャスコの車体広告だが、「黄色いボールということで、ショップでいまいち認知されていないところもあったのですが、これで認めてもらい、大量納入されたところもあり、効果は十分あったと思っています」（前出・六車氏）

　費用対効果を考えると、まずは成功といったところか。