> 雑誌・出版情報 > BACK 9 WEB
 

週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 6/13号
2006/6/31更新
突風でゴルフ練習場の鉄柱12本が倒壊
気象変化に神経使う巨大レンジの安全対策

「突風により防護ネットを支えている鉄柱が倒れる」。予期せぬ気象条件の変化のため、ゴルフ練習場で思わぬ事故が起きた。めったに起きるものではないが、ゴルファーたちの不安をかきたてた。

 5月20日午後4時ごろ、埼玉県板戸市のゴルフ練習場「アーリーバードゴルフクラブ」で鉄柱12本が強風で倒れ、隣接の建物と車などが破損した。事故のあった時間帯は、寒気を伴った気圧の谷が通過し、雨量50ミリ、最大瞬間風速27.9メートルを記録していた。

 天候の移り変わりが激しい状況ではあったが、事故当時、練習場には数十人の客がいて、雷が発生したためクラブハウスに避難していた。その場にいた人の証言では「一瞬景色が白っぽくなり、気が付いたら鉄柱が倒れていた」と言う。

 ゴルフ練習場などの鉄柱ビジネスに携わっているスーパーテクノ社の西澤義一氏は言う。 「これは突風というよりも、ダウンバースト(下降噴流)の可能性が高い」

 ダウンバーストとは、局地的・短時間に上空から吹く極端に強い下流気流のことである。

 事故のあった埼玉県では、一昨年にも同様の事故があり「全く予測不可ではなかった」と、西澤氏は指摘する。気象庁によると、埼玉県は内陸性気候で、基本的にダウンバーストが起きやすい地域とされている。

 それだけに、気象情報には常に気を配っていなければならない状況であったはずと関係者は口をそろえる。

 また、事故のあった練習場のネットは暴風雨で水を吸い込んでいたため突風で圧力がかかったと報道されているが、防護ネットの材質はポリエチレンで、水を吸い込んでいたというのは過剰な表現ではないかと専門業者は疑問を呈する。

 練習場の安全は、どのように保たれているのだろうか。東京・江戸川にあるロッテ葛西ゴルフ練習場に聞いてみた。

 一般的にメンテナンスをきちんとしていれば事故はそう起きるものではなく、鉄柱の先端には、風速計が設置され自動感知している。

 風速が24メートルに達するとネットは5メートル下がり、風が1メートル強まるごとにネットは5メートルずつ下がるように設定され、28メートルに達したら下まで全部下げるという。鉄柱は1本でも倒れると連鎖反応的に全部が倒れてしまう。

 同練習場の鈴木利和支配人は「いつ何が起きるか分からないので、気象情報の専門チャンネルやCS放送のウェザーチャンネルで雲の動き、風の具合をピンポイントで予測して対処しています」と強調する。

 さらに、「ネットを10メートル下げるのに5分かかるので、機敏な対応が要求されます」と、その取り組み姿勢を示す。

 台風銀座でもある九州・四国では、やはり一番の安全対策は、鉄柱と防護ネットの維持管理に主眼が置かれている。

 福島県大野城市のある練習場では、「少しでも風が強まると、ネットの下げの態勢に入り、不測の事態に備えます。台風なども過ぎ去るのをじっと待ちます。もちろん鉄柱もネットも、最大級の台風に耐えられるものではありますが」と力を込める。

 四国などでは、台風対策として、室内練習場にしているところも少なくないが、愛媛県の練習場では次のように話す。

「風速自動感知システムを設置しているが、風が強くなると、ネットが下がらなくなるので、『強いな』と判断したら即座に下げます。予測できる台風よりも、冬と春の突風に神経を使います」

 そこでは鉄柱も中に倒れるように設計されているが、
「実際何が起きるか分からないので、怖いと感じることもある」と不安を隠さない。

 ほかにも、クラブヘッドが飛ぶ事故も多く「リシャフトしている人がたくさんいて、ヘッドが跳ぶので見回りは欠かせません。事故が起きないよう、どの練習場も安全対策には苦心しており、情報交換も怠りません」と、前出の鈴木支配人は、現状をこう説明する。練習場に行ったら、鉄柱とネットを観察しながら、安全と噛み締めクラブを振ってみては。

バックナンバー

最新号はこちら

週刊ゴルフダイジェスト最新号

アクセスランキング

  • 月刊GD
  • チョイス
  • みんなのゴルフダイジェスト

ゴルフ会員権情報
ゴルフダイジェストの会員権情報です