週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　日本ツアー史上初のタイ出身のチャンピオン、チャワリット・プラポール（30歳）は、キャディ生活からゴルフ人生をスタート。19歳まで貸しクラブで腕を磨いた苦労人でもある。昨年のQTでランク9位に入り、今季から日本ツアー本格参戦。出場15試合目のANAオープンで、逃げ切り優勝を飾った。

貸しクラブで練習していた

　以下はプラポールとの一問一答。

------日本ツアー初のタイ出身のチャンピオンとなった感想は？

「信じられないです。日本にはほかにも、シード3年目のプラヤド・マークセン選手や、サマヌーン・スリロット選手など、僕よりもずっと前から活躍している選手がいるんです。そんな偉大な先輩たちを差し置いて、こんな栄誉に預かれるなんて夢みたい」

------最後のボギーはやはりプレッシャー？

「第2打はフェアウェイからグリーンを大きくショート。前の17番パー5では、完璧なショットが打てたのに、いざ18番に来て「勝てる」と思った途端に、手が動かなくなってしまったんです。続くアプローチもグリーンに乗せられず、3メートルも残ってしまった。幸い、2位のY・E・ヤン選手がバーディを外してくれたので少し気が楽になりましたが、最後のボギーパットは、自分でもよく決められたものだと思います」。

------15試合目にして早くも初優勝を挙げることができた勝因は？

「今回、キャディをしてくれた北海道在住の山下成自さんの奥さんがタイ人で、この1週間、彼の家に滞在し、毎日おいしいタイ料理でもてなしてもらいました。最終日の前夜は『お腹がすいた』と言ったらタイのカップヌードルを出してくれたり。まるで自分の故郷にいるみたいにリラックスして戦いに臨めたのが、良かったと思います」

------日本に来たきっかけは？

「02年から2年連続でアジア・ジャパン沖縄オープンに出場して以来、日本が好きになりました。いまは大阪空港に近い、兵庫県伊丹市の知人宅にお世話になっているのですが、日本は食事がおいしいし、移動も楽だし、とても快適ですね」

------ゴルフは何歳から？

「首都バンコクから東に約170キロ、ヒタサップという村にある僕の生家のすぐ近くに、ネイビーGCというコースがあったことから、自然とゴルフに興味を持ちました。12歳のとき、キャディを始めたのがきっかけでした。月曜日が休場日で、その日は自由に練習ができたんです。年に1回キャディ選手権もあって、僕は入ってから3年連続で優勝したんですよ」

------タイでは、誰でも気軽にゴルフが楽しめる環境にある？

「いえ、やはり高級なスポーツの部類に入ると思います。特にゴルフクラブは高級品です。そういう僕も、実はこれまで自分でクラブを買ったことがないんですよ。19歳のときナショナルチームのメンバーに選ばれて支給されるまで、ずっとコースの貸しクラブで練習していました」

　今回のANAオープンが「キャディ初体験」という山下さんを気遣って、彼の負担を減らしてあげたい、と自らバンカーならしをするなど、優勝争いのさなかにも細やかな配慮を見せた。優勝の賞金の一部は、母国の寺院に寄付するという。