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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 8/10
2004年更新
県から土地の明け渡し要求された仙台CC
クラブ存続のために名取GC買収し移転へ
 ゴルフ倶楽部の移転といえば、古くは東京ゴルフ倶楽部や東雲ゴルフ倶楽部のように、新コースを建設して引っ越すのが一般的だった。だが、借用する県有地を追われることになった仙台CCが取った手段は、営業中の他のゴルフ場を買い取るという、前代未聞のいわば“居抜き”の移転だった。

 仙台CCは、昭和30年代に地元財界が中心となって設立した、東北でも屈指の名門クラブで、株主会員制(会員数約1050人)で運営されている。

 ところが、市内青葉区にあるコースは、もともとの国有地を、クラブ側が県に資金提供して県に払い下げさせ、その上で借用している県有地。そして、その県有地を、県が東北大学の新キャンパスにすることに決定したため、97年3月に県からの借用契約を打ち切られてしまった。当然、これには納得できるはずもなく、移転を拒否すると、県は同年12月に明け渡しを求めて提訴した。

 これに対し、裁判所は両者に和解を勧告。結局、昨年4月に、県が解決金として20億円を同CC側に支払うこと。そして、06年3月末までに借用地を明け渡すことなどで和解が成立した。

「和解の1年前から、明け渡しは避けられないと判断し、会員さんからの強い要望もあり、近くに代替となるコースを探し始めました」と語るのは、支配人の沼田征夫氏。

 同氏によれば、一時は民事再生中の県内のレインボーヒルズGCが候補に挙がり、交渉も始めたそうだが、昨年、同GCは会員による自主再建を決定。仙台CCは買収を断念せざるを得なくなった。

 それから間もなく、今年になって新たに白羽の矢が立ったのが、先ごろ買収の基本合意が成立した名取GCだった。同GCはゼネコン大手の大林組の子会社が経営する会員数140余人のゴルフ場で、22億円でコースを譲渡することで合意した。

 ところが、この金額にはちょっとしたウラ(?)がある。

「県からの解決金20億円に加え、ずっと黒字経営でしたから、用意できない金額ではありません。しかし、引越しや今後の従業員に対する補償も必要になりますから、うちは現金で16億円しか支払えないと言ったんです」(沼田支配人)

 そこで、同CCでは新たにプレー権付きの株式を300株増資。それを6億円ですべて大林組に引き受けてもらうことで合意が成立した。

 一方、コースを譲渡する名取GCだが、まず会員には1800万円の募集金額のうち、預託金額に当たる1450万円を返還し、クラブを解散(返還預託金の合計は約20億円)。

 その上で仙台CCへの入会を希望する人には、前述のプレー権付き株式を譲ることになった。ただし、その金額については、「6億円で300口ですから、1株200万円ですが、それをいくらで会員にお譲りするかは公表してません」(大林組広報)とのことだった。

 ちなみに、名取GCの全会員が入会しても、総会員数は1200人足らずで、クラブ運営に支障はないだろう。

 それよりも問題は、まず従業員の雇用。現在、仙台CCには51人、名取GCには61人の従業員がおり、仙台CC側では、できるだけ多くをいい条件で雇ってあげたいというが、それにも限度がある。

 他にも未解決の問題は山積ので、「とにかく過去に参考になる例がないので、すべてが手探り。今年の暮れで、ここでの営業を終えること以外、引越しから新コースでの営業開始まで、ほとんど何も決まっていません」と沼田支配人。

“我が家”を失いかけたクラブの存続は決まったものの、現場の苦労はこれからが本番なのかもしれない。

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