週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　この報道は、個人が保有するゴルフ会員権を「ぜいたく品」とみなし、売却時に譲渡損失が生じた場合、これまで認めていた、他の所得と相殺する損益通算が2005年度以降認めなくなる方向で、財務省が所得税法を改正する方針を固めた、というもの。

　サラリーマンなら所得は基本的に給与所得のみ。税金は源泉徴収されているが、ゴルフ会員権を買った値段よりも安値で売却し、売却損失が出たら、給与所得と譲渡損失が相殺されて、確定申告をすると税金の還付を受けられる。

　ただし、ゴルフ会員権で損益通算が認められるのは、相場が立っているコースの会員権だけ。今から7年ほど前、公認会計士の安部忠氏が『不良会員権買取機構』なる組織を立ち上げ、倒産して紙屑同然になったコースの会員権を安値で買い取り、税金の還付を手伝う事業を起こしたことがある。倒産したコースの会員権は、法人ならば、法人税法上評価損失という形で税務上損金処理ができる、つまり課税の対象になる所得（税務上の利益）から損失分を差し引いてもらえるのに、個人の所得税法上ではそれが認められていない、それはあんまりだ、という趣旨で考えついた手法だったが、税務当局にあえなく否認され、これ以降、相場が立っていない倒産コースは対象外という見解が定着した。逆に言えば、倒産コースでも、日東興業（現アコーディアゴルフに以降）などに代表されるように、名義変更できて相場が立っており、市場で売却できさえすればOKというわけだ。

　今回の改正案は、「競走馬や古美術品など、贅沢品は損益通算の対象外」という基準に、ゴルフ会員権も入れてしまおうというもの。この新聞報道のようにゴルフ会員権の損益通算の対象外とする改正案。実現性はどの程度のものなのだろうか。

　税制に詳しく、本誌でもゴルフ会員権の譲渡による税金還付の特集記事に登場してもらった公認会計士の飯泉清氏は、「ゴルフ会員権を損益通算の対象からはずそうとする案は、過去再三出ては消えてきた案。今度こそ間違いなく実現する」と見ている。

「財務省は今や完全に増税モード。高齢者の年金控除を減らしたり、配偶者特別控除を廃止したりしているほどだから、ゴルフ会員権の損益通算を廃止するのは当然という感覚。順当に行けば、来年2005年1月に法案が閣議決定され、3月の通常国会に提出されて法制化されることになるはず」。

　それならば、制度が導入される前に売るには、いつがタイミリミットになるのだろうか。

「この類の法律は施行時期を1月1日に遡るのが普通。今回も、国会を通過して可決されるのは2005年3月でも、2005年1月1日に施行時期を遡るはずだから、2005年になってから売却しても損益通算はできない。売るなら今年の12月末までがリミット」（飯泉氏）。

　プレー目的なら会員権は手放せないが、プレーもしないのに値下がりした会員権を持っているだけという人は、売ってしまわないと損益通算の恩恵は受けられなくなるわけだ。コースに預託金の返還請求をしても、なかなか取り戻せない現状では、所得や売却損の額次第では預託金を取り戻すよりもお得なこともある。

　ただ、いくら売却したいと思って会員権業者に頼んでも、買い手がつかないまま年を越してしまえば時間切れ。売り希望者が殺到するのでは？　昨年夏ごろからようやく上昇の兆しが見え始めた会員権市場への影響が気になるところだが、ゴルフ会員権業者の反応は、「すでにバブル崩壊から十数年が経過し、投資目的で会員権を買った個人で未だにプレーしないのに値下がりした会員権を持ち続けている人は随分減ってきた。例年なら年会費の請求が出る今頃には投資目的だった会員権がかなり売りに出るが、今年はそれもほとんどなくなっている。過去、法人の売りで相場に影響が出たことはあるが、今回の改正は法人には関係がないので、会員権相場が大きく崩れるということはないのでは」（現代ゴルフサービス、大久保貢社長）と、いたって冷静。

　ただ、現在でもプレー目的の会員に人気があるコースは相応の相場を保っている一方、プレーする上で魅力のないコースの相場はボロボロという二極分解が起きている。今回の改正で二極分解はさらに進むのかもしれない。