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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/4号
2003年更新
東京国際CCでは、会員の権利守るために
理事会の提案で中間法人制を導入
 これまで預託金の償還対策、破綻ゴルフ場の再生スキームとして注目を集めている中間法人だが、ここに来て、本来の会員の集まりである“クラブ”が中間法人になるケースが現れた。中間法人法は、これまで任意団体だった人の集まりでも、法人格を取得できるというのが立法の趣旨。“クラブ”が中間法人に進化したともいえる今回のケースは、ゴルフ界にも大きな影響を与えそうだ。

 話題となっている中間法人は東京国際カントリー倶楽部の理事会が、10月1日に設立、会員に入社を呼びかけている「有限中間法人東京国際クラブ」。実際に倶楽部の最高決議機関である理事会と中間法人は別組織だが、理事長はじめ理事が中間法人の役員を務め、「両者は表裏一体の組織」(山本定省理事長、中間法人代表理事)

 中間法人には、9月30日現在の同CCの全会員が入社することになっている。現在、会員への説明を行なっており、異議のある会員は今月末までに申し出を受け付けているが、「入社にはまったくお金が要らないことがひとつ。もうひとつは、これまで理事会は会員の権利を最大限に守るため、会員総意による倶楽部運営を行い、会員の権利を守ってきたが、中間法人はこの権利を法的に保全するもの。確かに中間法人について理解不足の会員はいるが、説明をすれば反対する会員はこれまでひとりもいない」(山本理事長)

 実は東京国際CCでは00年、元オーナーの裏証券発行、乱脈経営に端を発し、会員主導による理事会改革、倶楽部改革が進められてきた。まず同年7月、臨時会員総会を開き、これまでの理事全員を倶楽部運営の不手際を理由に全員を解任。当時、生まれた「守る会」が中心になり、全理事を会員の中から選任した。会社関係者がひとりもいない理事会は、それだけで珍しいが、形骸化した“御用理事会”を、本来の姿である会員の意見集約、最高決議機関へと生まれ変わらせたわけだ。

 その間に元オーナーがゴルフ場の所有会社((株)東京国際CC)、運営会社(東京国際ゴルフ(株))の全株式を、久慈川CCなどを経営する国際グリーン(株)に売却したことが判明。新理事会は新しいオーナーとの間で話し合いを持ち、年会費の管理(会社協力金として約半分を運営会社に拠出)、名義書換の審査、名簿発行、会報発行、会員証の発行(会員権売買にも必要となるもの)、さらに運営会社の株式22パーセントを取得、理事会から運営会社に2名の役員を出すなど、理事会の役割と権限をより大きいものにしていった。

「新しいオーナーのもと、会社とは手に手を取り合ってやってきた。これだけ独立性を持ち、会員の総意を倶楽部運営と経営に反映させている理事会は、そうはないものと自負している」(山本理事長)

 今回の中間法人化は、ここでも元オーナーによる乱脈経営が関係している。というのも、元オーナー時代に系列ゴルフ場である軽井沢900倶楽部の経営会社への融資のために、東京国際CCを担保に差し出していた。その軽井沢900倶楽部が昨年8月に民事再生申請したため、融資が焦げ付いたばかりか、担保提供したクラブハウスへの限度額20億円の根抵当権は、不良債権処理を進める金融当局の行政指導で、三井住友銀行からローンスターの債権回収会社であるハドソン・ジャパンに、この3月、突然、債権譲渡されてしまった。抵当権者である以上、競売をかけられる恐れもある。また、所有会社の株式を、債権者としてローンスター・グループが買収するとの噂も流れた。

 そこでこの5月、理事会は緊急会員総会を招集、ゴルフ場に「もしも」のことがあった場合を想定、管理する年会費の中から倶楽部安定基金の設立を決議。中間法人の300万円の設立基金は、この安定基金から捻出した。その上で中間法人の定款では「ゴルフ場施設の保全・確保のための担保権等の取得及び各種資金の募集」を明記した。

「ハドソン・ジャパンと会社側では交渉を持っているようだが、我々としてはゴルフ場の主人公は会員だとの信念を持っている。両者の話し合いがどのような内容になろうと、会員の権利は法的にも守られなければならない。たとえば競売という最悪の事態になった場合、任意団体では訴訟の手続きも煩雑で、資金を集めても競落どころか、事前に抵当権を設定して対抗するのも難しい。中間法人化は、いわば最悪の事態を想定した有事立法のようなもの」(山本理事長)

 これまで会社側が提案する中間法人はあったが、会員の総意である理事会から提案されたケースは初めてのもの。また法的整理のスキームや、償還問題対策ではなく、万一の場合を想定してのものも珍しい。しかしながら、会員が自分たちのことを考えて立ちあがった理事会改革と、それに続く中間法人化。こんな当たり前のことがニュースになること自体、これまでの日本のクラブはなんだったのか……と考えざるを得ない。

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