週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　とはいえ、祖国インドの他、欧州、アジア各国でプレーした経験を持ち、シンガポールオープンなど通算4勝を挙げた実績の持ち主で、インドが誇るトッププレーヤーのひとり。なにしろゴルフを始めてわずか4年（18歳）でプロのトーナメント（DCMオープン）に優勝し世間を騒がせており、突如“化ける”意外性は十八番といったところらしい。優勝の翌週に本人を直撃した。

------あなたの優勝でインド中が大騒ぎだったとか？

「そうなんです。僕が連絡する前に、家族はインターネットで優勝を知っていて“あなたはもうスーパースターよ！”と大騒ぎ。国民栄誉賞のようなものをもらえるらしいです」

------試合中、終止ポーカーフェースだったけど、あれは？

「いつもああなんです。落ち着いているように見られるけれど、内心はすごくドキドキしてました。でもいい意味での緊張感で、中身は熱く燃えていました。とにかく最後まで1打1打に集中しようと思い、3日目トップに立ったときも、優勝はまったく考えていなかったんです。よけいなことを考えるとすぐゴルフがおかしくなりますからね。優勝を意識したのは16番のティグラウンドのボードで、2打リードしているのを確認してから。あとはパー、パーで凌げば勝てると思い、少し安心しました」

------でも17番では3パットのボギー……？

「アドレナリンが出ちゃったのかな？ もともとパターは得意なんですが、ミスするとき必ずショートするのが悪いクセ。だから6メートルのバーディパットは絶対ショートだけはしないぞ、という決意で打ったんです。そしたらあんなに（2.5メートル）オーバーしちゃって（笑）。でもおかげで開き直れました」

------勝因は？

「ありきたりですが、ショット、パット、すべてが噛み合い、どんな状況でも冷静に集中力を維持できたこと。精神面の強さは、毎朝必ず行うヨガが役に立っていると思います」

------ところで、インドのゴルフ事情を聞かせて下さい。

「昔、ゴルフはお金持ちのスポーツだったけれど、最近は中流階級でもプレーできるようになってきました。ゴルフ人口も徐々に増えています。プロの数は約100人。そのうち海外に出ているのは10人弱です。欧州ツアーで今年優勝したA・アトワルと、日本ツアーでプレーするJ・M・シンと僕。それにアジアンツアーに6、7名」

------あなたはやはり裕福な家庭の出身？

「上の中、っていうところかな。父親は陸軍に所属する軍人で、僕がゴルフを覚えたのは軍の施設の中にあるコース。最初は他のスポーツ（水泳、陸上、乗馬など）のほうが楽しくてゴルフは好きじゃなかったけれど、18歳でプロの試合に勝ってからは天職かな、と」

------日本での苦労は？

「J・M・シンがいろいろ助けてくれたし、もっと苦労するかと思ったけど、案外カルチャーショックはなかったですね。電車もバスも定刻通りなのには驚きました。インドじゃあり得ません。日本食も大好きです」

------日本のカレーはどう？

「インドとは少し違うけれど、でもとても美味しいです。好物はカツカレーとお寿司」

------優勝賞金の使い道は？

「今、デリー郊外に買った自宅（ビル最上階のペントハウス）の改修工事の最中ですが、実は勝つ直前、資金が底をつき、妻と“どうしようか？”と相談していた矢先の優勝でした。これで心おきなく“豪華な”改修ができます。インドでは一般家庭の平均年収が5万円ですから、2000万円といったら天文学的数字。豪邸を建てて、高級車を買ってもまだ2年は遊んで暮らせます」

------大きな夢がかなった今、次なる目標は？

「米ツアーに常駐するインド人選手はまだいないので、できれば僕が第1号になりたいです。来年Qスクールを受けてそれが叶えば最高。でも日本で勝って大きな自信をつかんだし、ここで勝てれば、世界のどこでもきっと勝てると信じています」