週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　横田の教え上手ぶりは本誌で既報の通り、今年のフジサンケイクラシックのプロアマ戦でえなりかずき君を教えた途端、彼が開眼したことでも実証済み。もっともツアープロ同士がアドバイスを与え合うことは珍しくはない。最近では中日クラウンズの大会期間中に、星野英正が大学の後輩の宮里優作にパットのアドバイスを受け、その大会でツアー初優勝を果たしたことは記憶に新しい。また平塚哲二がオフにジャンボ軍団の合宿に参加、ジャンボから体の突っ込みを指摘され、活躍し話題となった。しかし、横田の場合、師弟関係もない複数のプロにアドバイスを与え、即結果を出している点が注目されている。

　話題のきっかけは、4月のつるやオープンの練習日に、宮瀬博文に対しパットに関するアドバイスをした結果、宮瀬がこの大会で優勝を果たしたこと。では、横田は何を教えたのか？

「練習グリーンでパットに悩んでいた宮瀬君が『こうハンドファーストにして打ちたいんだけどどうかな。パッティングってやっぱり左手主体で打てばいいのかな』って言ってきたんです。それを聞いて僕は、『どちらの手かはわからないけど、おまえの良いときはもっとヘッドが前（目標方向）に出ていたよ』って言ったんです。僕はジュニア時代から彼のパットを見ていて、良いときは体の右サイドで手首を柔らかく使ってヘッドを走らせて打っているのを知っているから、それを思い出させるようアドバイスしたんです」

　このアドバイスの仕方に横田の教え上手のカギが隠されている。フォームはほぼ固まっているプロの場合は、ちょっとした打ち方を直すにも違和感が生じることが多い。ところが、多くのレッスンプロは、まず形や打ち方を直させるから、長い時間を要する。一方、横田の場合は打ち方を考えさせないでイメージを想起させることを重点的にアドバイスするため、プロ本人が持つ潜在能力を喚起されて、即効性のあるレッスンができるわけである。

　たとえば、日本プロ選手権で伊沢利光が「最近ショートパットが入らない」と相談を持ちかけてきたとき、横田は4～5つのパターンのアドバイスを提示した。その中から伊沢にとっては「この物体（ボール）をここからカップまで移動させるということだけに集中して打ってみる」というアドバイスが最も伊沢のイメージに合致したという。

　横田によると、そうすることでストローク中の無駄な動きが抑えられ、ヘッドが最も効率良く動くからショートパットに悩む人に有効なのだという。

　こういったパットに関するアドバイスを横田は今年、他にも藤田寛之、加瀬秀樹、奥田靖己らにも与え、悩み脱出のきっかけを作った。アドバイスがパットに集中するのは、横田自身がパットに悩んだ末、今年は平均パット数で現在2位になっているという実績があるからだ。

「僕自身が経験したことで同僚のプロの悩みがよくわかる」ため即効性のあるアドバイスを生んでいるようだ。また、横田は今年、レッスン本を自ら書いているが、「自分のこれまでの技術をひとつの本にまとめたことで、頭の中にあったイメージを言葉で人に教えられるようになった」ことも最近のレッスン上手に繋がっているという。

　でも、なぜ多くのプロは横田にアドバイスを求めてくるのだろう。パットでフェースがクローズになっていることを指摘され、本来の感覚が蘇った藤田寛之は「感覚がとても鋭敏で他人が何で悩んでいるかを見抜く力があり、それをイメージで訴えるアドバイスをすることができる。加えて人柄が誰にでも好かれるから気楽に相談がしやすい」とその理由を語る。

　当の横田はそんな自分を「僕は悩んでいる人を見ると放っておけない性格で、ハッキリ言って勝負師としてはちょっと“ぬるい”。それがあまり勝てない理由かも」と分析。

　そんな横田自身の目標は「もちろん優勝を重ねて一流のプロになること」だが、「他人の悩みは解消できるけど、自分のこととなると別。僕は器用貧乏だからダメのなかな」と言う。

　今年、何人のプロが横田のアドバイスで優勝をするか、そして肝心の本人の優勝はいつなのか、楽しみである。