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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 2/25号
2003年更新
会員の中間法人化で法的整理回避目指して
いたはずの美奈木GCが突如、民事再生申請
 ゴルフクラブのみならず、全国でも初の中間法人(有限責任)として注目を集めていた、美奈木ゴルフ倶楽部(兵庫県三木市)の「みなぎの会」(笹川浩一代表理事)。当初「(民事再生など)安易な法的整理を行わない経営姿勢を示すもの」と中間法人化について説明していた経営会社だったにもかかわらず、1月28日、突如、民事再生法を申請した。全国第1号の中間法人として注目を集めていたコースだけに、波紋を呼ぶことになりそうだ。

 東京地裁に民事再生法を申請したのは、安達建設グループの観光日本(株)(安達雅克社長)。同社では美奈木GCの他、京都GC、日野GC、茅ヶ崎GCを経営、また今回の民事再生申請とは関係ない別会社だが、グループには他に茨城GCなど6コースあり、さらに親会社の安達建設はゴルフ場の造成、改造には定評があり、業界では堅実経営として知られてもいた。

 民間信用調査機関によれば、昨年3月期時点での観光日本(株)の負債総額は、約240億9200万円。同社の説明によれば、うち預託金債務は約170億円で、その中の約141億円が、同社系列でもっとも新しい、平成元年開場の美奈木GCの預託金とされている。

 美奈木GCは、額面1100万円、1500万円の正会員、900万円の平日会員を中心に、1200人の会員を集めてオープン。当初から据置期間を設けず、退会希望者には預託金を返還、補充募集によって欠員を充足する、愚直とも言える対応を取ってきた。そのため昨年4月の中間法人設立時までに、295名の償還に応じ、その金額は総額で約65億円にも上っている。

「長引く不況と、平成7年の阪神大震災の影響、さらに美奈木は償還に応じるために、さらに償還圧力が高まり、平成10年を境に退会希望者が急増しました。また補充募集もままならなくなってきた。そこで償還に応じないというのではなく、いかに退会希望者を減らし、入会希望者を増やす、魅力的な倶楽部作りをするか、という発想から生まれたのが中間法人だったのですが」とは、同GCの武井幸一副支配人だ。

 中間法人法が施行されたのは昨年4月だが、それに先立つ3年前から研究会を発足させていた同GCは、まずコースに設定されていた金融機関の借金を返して抵当権を抹消。同法施行日の4月4日には会員が理事となる「有限中間法人みなぎの会」を設立、観光日本(株)が所有するゴルフ場施設に対し、限度額150億円、優先順位第一位の根抵当権を設定し、これにより事実上、所有者が勝手にゴルフ場資産を処分できなくすることで会員からの預託金返還請求の圧力を柔らげようとした。

 この額は預託金分の約141億円に相当するもので、会員である中間法人の社員に対し、預託金を担保する形になっている。この提案に対し、1100名の会員のうち800名が応じ、順調なスタートを切ったようにも思えたのだが……。

 しかし、一方で中間法人化には応じず、かつ退会を希望する会員は150名。その後も同社では、原則としてリストに掲載された順番に、償還に応じる経営方針を取ってきた。補充募集がままならない経済状況にあって、償還問題が経営を大きく逼迫していたことは事実で、据置期間の設定がないことから、市場で安く購入し償還請求を行う、いわゆる“償還屋グループ”の存在も背景にあったようだ。また、系列の3コースはいずれも古く、大きな償還問題は抱えていないが、売上げが軒並みダウンしている事情も見逃せない。

 会員も含む債権者を刺激しないため、同法申請は秘密裏に行うことが多いが、そのため「中間法人を活用し、倶楽部を豊かなものにするか、いろんなアイデアを出しあっていた時期のことで、私どもにとっても寝耳に水」と武井支配人が言えば、中間法人の笹川浩一代表理事も、「中間法人について、会員の説得を続けてきた立場としては、正直、こういうやり方では会員に説明のしようがない。ただ中間法人と会社が一緒になって良い倶楽部にしようとの思いは今も変わらない。時間をかけても、きちんとした解決を望みたい」と、こちらも戸惑いを隠しきれない様子だ。2月4日には関西で、5日には東京で会員説明会が開催されたが、特に関西では会員から相次いで不安の声も上がったという。

 これについて観光日本(株)本社では、「(担保設定など)ゴルフ場施設についての権利関係も含め、美奈木については、今後も中間法人としてやっていく方針です。現時点では会員の皆様に、我々の現状を説明する以外にはありませんが、美奈木も含めすべてのコースの会員様の、プレー権を守るためのものとご理解頂きたい」と話す。

 いずれにせよ、負債総額の割合からしても、美奈木GCの施設に中間法人が設定した抵当額が、今後どれだけ減額されるかが民事再生の行方を大きく左右することは間違いなさそうだ。

 預託金償還の解決策として注目された中間法人。まして優先順位第一位の抵当権を設定し、「理想的」とまでされた美奈木GC。だが未曾有の不景気による償還圧力は、単に中間法人だけでは対処できないレベル、ということなのかもしれない。

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