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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 12/24号
2002年更新
償還延長決議撤回、預託金返すゴルフ場
同系の別コースでは民事再生申請のなぜ
 同じ親会社を持つ2つのゴルフ場が、片や民事再生、もう片方は理事会決議を撤回して預託金の返還を再開するという、まったく正反対の道を選ぶことになった。運命の分かれ道は一体どこにあったのだろうか。

 11月26日、和倉GC(石川県)を経営する七尾リゾート(株)が東京地裁に民事再生手続きの開始を申し立てた。同社は東証一部上場の倉庫会社大手・澁澤倉庫とそのグループ会社が77パーセントを、残る23パーセントを地元の七尾市や地元企業が出資している。64億円ある負債のうち42億円が預託金債務だ。年商はわずか3億7700万円で1億円以上の赤字(平成14年3月期)。上場会社と言えども無条件で子会社を救済しなくなっている最近の流れからすれば、これ自体は珍しい話ではない。

 ただ、その一方で、この和倉GCの民事再生申立の約10日前、同じ澁澤倉庫系列の埼玉GCが、平成20年までの10年延長を決めた理事会決議を撤回、返還を再開する方針を明らかにしているのだ。しかも返還原資は澁澤倉庫からの借入金だという。

 埼玉GCを経営する埼玉カントリー倶楽部(株)にも澁澤倉庫とそのグループ会社が70パーセントを出資しており、澁澤倉庫グループとの関係の強さは七尾リゾートとほぼ同じ。なぜ和倉GCは民事再生で、埼玉GCは救済の対象になったのだろうか。

「和倉は来場者数も2万6000~2万7000人と低迷を続け、黒字転換のメドが立ちません。埼玉GCの方は、この上半期までは赤字が続いていましたが、下期以降は黒字転換できるメドが立っているため」(澁澤倉庫広報)なのだという。

 埼玉GCの預託金総額は約60億円と、和倉GCよりも多いが、会員権の額面はバブル真っ盛りの平成2年オープンの和倉GCが400万円~1050万円なのに対し、昭和55年開場の埼玉GCは全体の7割が400万円台。それでも会員権相場は180万円前後まで落ちてきていることもあり、預託金の返還を求める訴訟も増えているようだ。

 今回決めた預託金の返還だが、随時受け付けるのではなく、とりあえず今回は年末までに希望を受付け、400万円までは一括弁済、400万円を超える分は何年間かで分割弁済していく方針だが、返済原資としてコース側が用意する額を超える申込みがあった場合には、400万円までの部分についても分割になる可能性もある。

 詳細は年末の締切時点で希望者数と額面金額をとりまとめた上で、澁澤倉庫に必要資金の融資を要請するなどして決めることになりそうだ。返還は来年以降も実施するが、毎月では事務手続き上不可能なので、「何カ月かに一度にするなどの方法になると思うが、詳細はまだ未定」(埼玉GC)だという。

 ところで、埼玉GCといえば、会員権を購入しながら入会手続きをとらずに預託金の返還請求をして儲ける返還請求訴訟ビジネスの標的にもなっていた。昨年末の最高裁判決を返還請求訴訟ビジネスを認めるものだととらえた全国のゴルフ場経営者たちを震撼させた。この訴訟は高裁に差し戻され、先頃高裁でも埼玉GCは敗訴してしまったが「再度最高裁に上告する」(埼玉GC)方針で、今回の返還再開は「この訴訟とは無関係」(同)というから、今回募る希望者の中に、返還請求訴訟ビジネスと見られるような請求があれば、返還を拒否することもあり得る。

 ところで、今回のように一旦理事会で決議した延長を撤回した例はおそらく過去にはない異例の措置だ。「会員の高齢化が進み、亡くなったりプレーできなくなってしまった会員への配慮が必要という判断」(澁澤倉庫・広報)というが、そもそも澁澤倉庫自体に体力があるからこその措置。同社は300億円を超える自己資本があり、計算上では和倉、埼玉の両方の預託金債務を抱え込めるだけの体力はある。それでも、黒字化のメドが立たない子会社に多額の資金をつぎ込むことは株主の利益を損なうことになりかねず、上場会社である澁澤倉庫には許されない。

 埼玉GCについても、無尽蔵に澁澤倉庫が返還の資金を提供するわけではない。親会社の経営が盤石だから預託金も安心、という方程式が成り立たなくなっていることに違いはない、ということは忘れてはならないだろう。

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