週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　そのゴルフ場とは、兵庫県の東六甲ゴルフ倶楽部（東六甲（株）・廣瀬功直社長）。もともと昭和49年、廣瀬社長の実父が社長を務める摂陽（株）が西宮グリーンCCの名前で開場、ゴルフ場施設は現在も、やはり実父が社長を務めるビーム（株）が所有している（廣瀬社長自身も両社の取締役）といった関係にある。

　先述の3つのクラブのうちの、ひとつ目が、この西宮グリーンCC。200万円で募集し、現在112名の会員がいる。ところが西宮グリーンCC時代、アップダウンの激しいコースの施工が不適切だったとして、大手ゼネコンとの間に訴訟を抱える事態に。そこで平成2年、約100億円を投じ、大改造に着手したのが関連会社の東六甲（株）であり、翌々年に開場したのが2番目のクラブ、東六甲GCだ。

　しかし、すでにバブル経済崩壊後で、改造工事費は会員募集でまかなう予定で、額面625～700万円で最終1500人を目途に募集したものの、約60億円しか集められない結果に。そのため残額を銀行借入したことが、経営を圧迫させていた。なお、ゴルフ場施設には、約100億円の抵当権が設定されており、第2のクラブである東六甲ゴルフ倶楽部には、現在680名の会員がいる。

　この680名の会員については、開場から10年後の平成14年が償還期限だが、これに先立つ12年、理事会で15年の延長を決議、会社側はこれを会員に要請。しかし数件の預託金訴訟を抱えていることもあり、会員に宛てた文書では、今後破産の可能性も示唆している。

　そこで今回、窮余の策として立ち上げたのが、第3のクラブである西宮パインゴルフ倶楽部だ。経営主体は西宮パイン（株）で、会員の若月克彦が代表取締役に就任したが、東六甲の主体で設立された。この会社も摂陽、東六甲と同様、ビームからゴルフ場施設を借りて、クラブ独自の運営を始めている。

　すでに西宮パインでは今年から新規の1次募集を開始。入会金だけの終身会員で譲渡不可、金額は正会員35万円、平日会員が20万円。4月1日からは、50万円、28万円に改定するという。「リストラ、役員入替えなど経営努力してきたが、厳しい経営環境の中、運転資金もままなりません。懸案だった乗用カート導入も、何とか自社でカート道は建設したのですが、カート購入資金がない状態。今後はよそのコースの、カート道建設も事業に加えようと考えているくらいです。利用されるメンバーも少なく、年会費を上げるわけにもいかない。ならば利用して頂ける会員を増やしていこうとの考えからです」（廣瀬社長）

　一部、高額で入会した従来会員の反発もあるのは事実で、そのため募集金額は相場並みの50万円に。また、ゴルフ場の予約も、それぞれのクラブが受けつけることに。ただしクラブ競技は、3つのクラブが協力して行うという。

「たとえばセントアンドリュースでは、同じゴルフ場に複数のクラブがあると聞きます。幸いメンバー数も少ないですし、新しいクラブを提案することで、ゴルファーの様々なニーズを掘り起こせればとも思っています」（廣瀬社長）

　もっとも関西の会員権業者の中には、「新手の、小手先だけの資金集め」といった辛辣な見方があるのも事実だが、一方で、不特定多数を対象に募集を行ってきた多くの日本のゴルフクラブは、真のクラブとは呼べない、といった意見もある。そのため経営会社と、会員の集まりであるクラブを明確に分け、後者については、運営をすべて会員に委ねるべき、との意見があるのも事実。

　また、クラブの複数化については、入場者の増大につながったり、預託金償還問題の場合も、個々の会員ではなく、会社とクラブ代表と話し合うことで問題の迅速解決にもつながるといった意見もあるほど。

　今回のケースでは、逼迫した経営をいかに打破するか、窮余の策のようではある。が、ユニークな試みであることも事実。雨降って地固まり、これがゴルフ場不況脱出のきっかけにつながればいいのだが……。