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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 5/31
2005/5/25更新
乗用カートの「FW乗り入れ可」が増えて
心配されるゴルファーのモラルとマナー

 すでに国内ゴルフ場の8割強が乗用カートを導入している今、次なる差別化、サービス競争の段階はそれを「フェアウェイ乗り入れ可能」にすることだろう。プレーヤーにとっては間違いなく楽だし、進行が早くなるからだ。そのため、このところ外資系を中心にFW走行可に踏み切るコースが増えている。だが、そこには単純には割り切れない問題があるようだ。

 ローンスター・グループの千代田CC(茨城)では、この6月を目処に、今春から全面導入した乗用カートのFW乗り入れを可能にする予定だ。

「新しく造ったカート道路脇の芝がまだ育っていないので、その育ち具合を見ながら実施することになります」(キャディマスター室)

 同グループでは同じく茨城県内の美浦GCや阿見GCなどで既にFW走行が可能になっており、今後はグループ全コースで可能なところから順次移行していくようだ。

 同じく外資系のアコーディアゴルフ・グループも石岡GC、ノーザンCC錦ケ原C等で実施している他、今後は安全面やコース管理上の問題なければ、積極的に移行する方針という。

 乗用カートが当たり前になった今、さらなる乗用カートの利点、魅力を打ち出すには、カート道路からの縛りを解く以外にない。言うまでもなくプレーの進行が楽、かつ早くなるからだ。

 しかし、日本のゴルフ場の場合、簡単に移行できない難しい問題が多々ある。

 一番のネックは、もちろん安全面とコース管理の問題だ。一般的にアップダウンや急な斜面が多く、どこでも走れるとなれば、それだけ走行事故の危険性が倍増する。

 また、「安全面がクリアできても、うちの場合、グリーンから次のティへの導線を考えると、ちょっと難しいですね」と某外資系コース支配人はためらう。

 乗用カートをFW走行でグリーンまで寄せられると、どうしても次ホールへの経路が一箇所に集中し、芝の傷みが避けられないホールが多い。その場合、グリーンのかなり手前からカート道路に誘導せざるを得なくなり、プレーヤーにはかえって不評になるのである。

 また、日本にはまだまだFW走行のマナーが根づいておらず、そのために実施をためらっていると語る関係者もいる。マナーのひとつに、いわゆる「90度ルール」というのがある。

 芝保護のため、ボールの落下地点近くまではカート道路を走り、そこから直角に曲がるようにしてFWに乗り入れるのがマナーである。

 それが浸透せずフェアウェイを縦横無尽に走られると、直接的に芝が荒れるだけでなく、場所によってはFWの土壌が硬くなり、さらに芝の回復が遅れることになる。

 もっと複雑な問題点を指摘する向きもある。

 ゴルフ場運営コンサルタントの菊地英樹氏は、FW乗り入れ可能のプラス面を十分に認めた上で「日本のゴルファーがそれを歓迎するかどうかは、実際に運営されてみなければ、本当の評価は定まらないだろう」という。

 問題点のひとつは、「グリーンから次のティへ移動する経路は、1箇所に集中しがちです。ところが、その経路はグリーンの手前や周囲の、景観上もプレー上も、大事なポイントになることが多い」として、そこの芝が常時荒れていることを、プレーヤーがどう見るのか。

 つまり、グリーン周りの多少の荒れは目をつぶってもFW走行のメリットを選ぶのか。それとも、カート道路走行の不便さには目をつぶって、美しい芝を選ぶのか。いわばプレーヤーのゴルフ観、ゴルフに何を求めるのかが問われることになるのだ。

 また、芝の保護を考えたとき、車体の軽い2人乗用カートの導入が理想的で、実際にそうしているゴルフ場もある。

「日本のゴルファーには、2人乗用でのラウンドは味気ないと感じる人が多いんです。4人乗用で、話を弾ませながらのラウンドが好まれています」(菊地氏)として、ここでも日本人のゴルフ観が問われると指摘する。

 答えは、FW走行可のコースが今後さらに増え、多くの人が経験してからになるだろう。

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