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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 6/8号
2004年更新
日本プロ選手権の運営方法に異を唱え
PGAに退会届出した谷口に真相を聞く
 新聞等で報じられたように、荒天による運営のスッタモンダが話題を集めた日本プロゴルフ選手権。最終日の翌17日には、谷口徹が大会を主催する日本プロゴルフ協会(PGA)に退会届けを出すなど、波乱含みの幕引きとなったが、今回の騒動の原因について、改めて谷口本人の口から語ってもらった。

 日本プロの初日、荒天と霧のため、9時58分に競技が中断。そして、天気の回復が見込めないものとして午後1時に競技中止を決定。そして、コースでプレーした78人のスコアをノーカウントとして、翌日から再スタートすることを決定した。

 この措置に対し、谷口が「メジャー大会を謳っているのに、これではローカルプロゴルフ選手権」とコメントしたと14日の一部スポーツ紙が掲載。そのコメントを重視したPGAの役員が15日のプレー後に谷口を事情聴取。谷口は「ローカルプロ選手権などと言った覚えはない。それより初日プレーした選手のスコアをカウントしないのはおかしいし、メジャーなら月曜日に予備日を設けるべき」と発言。そして、事情聴取が終わって部屋を出た後、すぐに部屋にとって返し「PGAからの退会を口頭で宣言した」が、PGAの役員から「退会は口頭では受け付けられない。退会には正式な書類提出が必要」と言われると、退会の態度を保留した……。

 以上が日本プロにおける、スポーツ紙等が伝えた騒動のあらましだ。そして、試合が終わった翌日に、谷口は文書で退会届けを郵送したのである。

*


------騒動の元となった「ローカルプロ選手権」発言だが。

「そうはっきりと言った覚えはありません。ただ、こんなことではメジャーとしての権威がなくなる、というニュアンスは口にしたと思いますが……」

------一番の不満は何だった?

「まず、プレーした選手のスコアをノーカウントにしたこと。プロがいったんプレーしたら、そのスコアは絶対消してはいけないと僕は思います。現にJGTO(日本ゴルフツアー機構)の試合では、そうしてます」

------ただ、雨と霧の中でのプレーのスコアをなしにして、翌日、同じ条件で再スタートというのもフェアな気もするが……。

「そうではありません。ボクは4ホールプレーしましたが、雨の中で体力を消耗しながら一生懸命プレーしたことが、まさしく水の泡となってしまいました。翌日、同じ条件でプレーしたほうがフェアとの意見ですが、午前の組は無風なのに、午後の組は強風、なんてことはしょっちゅうです。ゴルフでは有利な条件のときもあれば不利なときもある。それを承知でやるのがゴルフ。ですから、どんな状況でもスコアのノーカウントはあってはならない、僕はそう考えています。世界のメジャー競技ではありえないですから」

------では、サスペンデッドで翌日スコアに活かすべきだったと。

「そうです。それに、中止の決定も早すぎたと思います。僕はある海外の試合で、雷等の影響で中断が続き、結局8時間かけて18ホール回ったことがあります。今回も霧での中断でしたが、いつ霧が晴れるやもしれません。日没まで待ってもよかったのでは、と思っています」

------PGAの事情聴取で、メジャーなら予備日を設けるべし、とも言ったとか……。

「36ホールで試合は成立すると言われればたしかにそうですが、メジャーというのは、やはり72ホールプレーして、そのメジャーの名に値する勝者が決まるもの。もちろん、スポンサー、テレビ放映等の関係で予備日を設けることの難しさはわかりますが、メジャーならそれくらいの準備はしてほしい、という思いはあります」

------谷口プロは4ホールで1アンダーだった。もしスコアが悪かったとしても、ノーカウントはおかしい、と言った?

「当然です。ボクは私憤で物事を言ってるわけじゃないんです。これまで、ツアー等の運営に関してもいろいろ発言してきましたが、それは日本のツアーが面白くなり、もっとギャラリーを呼べるようないいツアーになってほしい、という思いがあるからです。僕は一昨年に賞金王にもなりました。また、海外のメジャーの経験もあります。そういう意味で、発言できる立場だと思っていたんです」

------言える立場にあると“思っていた”というのは?

「これまでは、です。でも、何か言うと、文句言いのように思われて(笑)。で、僕自身も面白くないですから、これから何かあったら選手会を通じて、と思っていたんです」

------表に出ないつもりだったのですね。それが……。

「帰り際に、某スポーツ紙の記者から質問を受けたときに、ちょっと一言コメントしたら事情聴取ということになり、結局、いろいろしゃべることになってしまったわけです(笑)」

------PGAを退会するまでに発展した理由は?

「ノーカウントの問題とか予備日について、僕なりの考えを言ったら、それは君の考えでしょ、というような感じで言われ、これまでも同じようなことがあったし、建設的なことをどれだけ言っても所詮無駄なんだ、と。それで気持ち的にプレーもしたくなくなってきたんです」

------でも、プレーは続けた。

「ツアー初勝利が高知で開催された試合でしたから、僕を観にきてくれたギャラリーも多く、彼らに申し訳ないので……。でも、このままだとモヤモヤしてプレーに専念できない。だったら、何を言っても変わりそうもない団体に所属してる自分も情けないと思い、それで辞めてしまおうと思ったのです」

「いろいろ提案しても『検討してみよう』という話にならないんです」

------で、口頭で退会を申し出たわけですね。ところが、口頭ではダメだと。そこで、文書で出すのかと記者に問われて「今はその意思がない」と、トーンダウンしたと書かれていたが。

「退会したいとは、僕からマスコミに話していないのに、知らない間に漏れてたんですよね(笑)。まあ、それはいいとして、気持ちは決まってましたから、そのときに文書で出してもよかったのですが、マスコミの皆さんが見てるところでそんなことをすると、また大騒ぎになりますから、試合が終わった翌日の月曜日にPGAの長田会長宛に送りました。辞める僕が言うのも何ですが、協会の体質も以前とはだいぶ変わってきました。でも、我々先輩のほうが偉いんだ、という体育会系の雰囲気がまだあります。少なくとも僕はそう感じました。ですから、僕なりにゴルフ界のためにいろいろ提言しても『検討してみよう』という話にならないんです。そういうところを変えていってほしいですね」

*


 以上が、谷口本人が語ってくれた顛末である。そして、19日には、日本ツアー機構(JGTO)が、PGA批判とも取れる谷口の「ローカルプロ選手権」発言に関し、事情を聴取したが、本人は改めて否定。そして、24日の運営委員会に報告、懲罰委員会にかけるかどうかを判断するという。

 また、谷口の退会届けが入った封書は19日時点でPGAに届いていることは確認されているが、「長田会長宛なので、中身を確認していませんので退会届かどうかはわかりません。(会長が来る)24日には判明すると思います。しかし、もし退会届けであっても、正式な退会用の所定の書面でないと受け付けることはできませんし、正式に届けが出た段階で総務財務委員会に報告し、さらに理事会に上げて退会を承認するかどうか決めることになると思います。4000名を数える組織ですし“辞めます”“ハイ、どうぞ”と簡単にはいかないと思いますよ」(事業企画部・伊藤暢<いたる>課長)

 次回のPGAの理事会は6月28日だが、谷口に退会の意思がある限り、最終的にはそれを阻止することはできないはず。ところが、谷口の退会をすんなり認めてしまうことができない事情がPGAにはある。現状では、仮にPGAを脱退したとしても資格さえあればツアー出場は可能で、ツアーで生計を立てている選手にすれば、年会費を払ってPGAに所属するメリットはない、と考えてもおかしくはない。もし、谷口の退会を簡単に認めると、右に習えのツアー選手が続出する可能性もゼロではない。となれば、年会費収入が減ることになり、それはPGAにとっても由々しき事態。

 谷口の“問題発言”から始まった騒動は、違う方向に大きく動きそうな気配を見せている。

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