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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 3/16号
2004年更新
“ゴルフ場名が同じなら、営業譲渡受けた
新会社にも預託金返還業務”の最高裁判断
 ゴルフ場の営業を譲り受けたものの、同じコース名称のまま営業を続けるケースは多いが、“譲り受けた新会社にも預託金の返還義務がある”------2月20日、最高裁はこのような初の判断を下した。長引く不況、未だ抱える預託金問題などで経営交代、営業譲渡が相次ぐゴルフ業界にあって注目を集めている。

 訴えられていたのは淡路五色リゾートカントリー倶楽部(兵庫)の営業権を、平成10年11月に元の経営会社である(株)ギャラックから譲り受けた、新会社の(株)ギャラクシー淡路(霍田眞由美代表)。

 淡路五色リゾートCCは、その後、平成13年8月にギャラクシーリゾートゴルフクラブに名称変更したが、その前に神戸市に住む会員から、1300万円の預託金返還請求を起こされていた。争点は商号続用営業譲受人の責任。商法26条1項は「営業の譲受人は譲渡人の商号を続用する場合に於ては譲渡人の営業に因りて生じたる債務に付ては譲受人も亦其の弁済の責に任ず」とある。つまり、営業が新会社に譲渡された場合でも、同じ商号を使っている場合は、旧会社にも新会社にも債務の弁済義務がある、というわけだ。

 一審の神戸地裁は平成13年7月、この商法上の規定を適用できるとして、会員勝訴、つまり新会社に預託金の返済を認める判決を下した。これを不服として新会社は控訴。同年12月、大阪高裁は一転して、「ゴルフクラブの名称とゴルフ場の営業主体が異なることは、ゴルフ会員権を購入する者であれば、容易に知ることができる」として逆転判決を下した。これを不服として会員が上告、最高裁の司法判断が注目されていた。

 2月20日、最高裁第2小法廷(北川弘治裁判長)は、ゴルフ場名を商号と見なした上で「会員が、同一会社が営業を続けていると信じたり、営業が新会社に移行したが預託金返還義務が継承されたと信じても無理がない」として、特段の事情がない限り商法26条1項を適用できるとし、大阪高裁の判決を破棄。「特段の事情」があったかどうか再審理するために、大阪高裁に差し戻しを命じた。

 会員権問題に詳しい熊谷信太郎弁護士は「商法26条1項が適用された初のケースで、注目される最高裁判決」とした上で、今後高裁で再審理される「特段の事情」については、「営業譲渡を受けた新会社が、会員に対しプレー権を制限する、預託金を返さないといった明確な意思表示があったのか、あるいは旧会社の債務は引き継がないといった登記がなされているのか、などが審理のポイントとなるでしょう」と話す。最高裁が高裁判決を破棄し、同条の適用を認めたことで、今後は名称を引き継いだゴルフ場の返還責任については、この「特段の事情」があったかどうかがポイントになりそうだ。

 その観点から同GCのクラブハウスの謄本を眺めてみると、旧会社の(株)ギャラックを債務者に、新会社の霍田眞由美代表が極度額2億円の根抵当権を設定したのが平成10年10月のこと。同年11月30日には、霍田代表名で賃借権設定の仮登記が行われており、これが営業譲渡を示すものと思われるが、登記上、債務を引き継がない旨の特約はない。その後「ギャラクシーリゾートGC」と名称を変え、全会員に通知したのが、一審判決後の平成13年8月。さて、営業譲渡から名称変更までこの間に、会員に対し、営業譲渡をしたという何らかの意思表示があったかどうかが再審理の争点になりそうだ。

 これについて当事者である(株)ギャラクシー淡路では「大阪高裁での再審理中なので、当社としては何もお話しできる段階にはない」と話す。

 もっとも商法26条は、当然のことながら旧会社にも債務の返済義務を規定している。しかしゴルフ場施設は旧会社である(株)ギャラックの所有にこそなっているが、平成10年11月に当時の厚生省によって差し押さえられたのを皮切りに、自治体数カ所から差し押さえを受け、極度額146億円もの抵当権を整理回収機構が設定しているという状態である。

 ところで、営業譲渡といっても、今回のように賃借権を設定する場合もあれば、ゴルフ場施設を購入する、といったケースもあり、なかなかその実態が会員にはわからないのも現実だ。また最近では、営業譲渡ではなく運営委託という形で、元のゴルフ場名のまま営業している、というケースもある。この点について、前出の熊谷弁護士は、「最高裁ではないが下級審では、営業委託であっても商法26条1項を類推適用し運営委託会社に預託金返還義務を命じる判決もある(昨年1月の東京高裁、利根ゴルフ倶楽部での判決など)。運営委託は明確な定義がないだけに、今後、会員にとっても注意する必要がある」と指摘する。

 営業譲渡、運営委託では預託金対策として「預託金を払わない手段」として行なわれるケースもある。払えないのか、払わないのか。その辺もポイントになりそうだ。

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