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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 10/1号
2002年更新
岐阜美山CCが提案した中間法人設立方式は
預託金償還対策の新たな解決策となるか?
 岐阜美山カントリー倶楽部が、今年4月に解禁されたばかりの「中間法人」を使い、新たな預託金償還対策を打ち出した。

 民事再生による預託金カットが主流の中、「民事再生は結局倒産。倒産によるイメージダウンで損害を被るのは会員。何とか倒産させない方法として考えたのが今回の案」(同CC三宅治郎支配人)だという。

 もともと同CCは敷地やクラブハウスの所有権者も、預託金を預かっているのも、コースの運営もすべて美山観光開発(株)で、預託金総額は106億円に上る。しかし、金融機関借入やゼネコンへの未払い工事代金など、預託金以外の債務はなく、コースには抵当権はついていない。

 オープンは平成2年、額面500万円~700万円の会員が全体の9割を占めるが、2400万円での募集分の償還期限が到来した平成12年6月、会員権の4分割と返還期限の10年延長を理事会で決議している。

 このとき分割に応じなかった会員が、その後預託金返還請求訴訟を起こしたが、コースに抵当権が設定されていないため、訴訟を起こした会員からコースが差し押さえられる可能性が出てきた。そこで、現理事会メンバーで中間法人を今年8月に設立、9月初旬に敷地やクラブハウスの登記名義を同中間法人に移転させ、強制執行を阻止する対策を打った上で、会員にこの中間法人への参加を求める文書を9月10日付けで発送した。

 今年4月に解禁された中間法人は、マンションの管理組合や同窓会組織など、公益目的でも営利目的でもない集団にも、契約行為が出来る“法人格”を与えるために法制化されたもの。株式会社の資本金にあたる“基金”が300万円以上あれば設立できる。

 ポイントは議決権の考え方。株式会社なら出資して株主にならないと議決権、つまり経営に参加する権利を得られないが、中間法人だと基金を拠出しなくても経営に参加できる“社員”(従業員ではない)になれる。カネを払わず経営権を獲得できるわけだ。今回の案も、コースの所有権を持ち、経営も担う中間法人の“社員”になることで、会員が間接的にゴルフ場の経営を掌握する形になっている。

 ただし、この中間法人は美山観光開発から“売買”ではなく、“信託”の形で敷地やクラブハウスの所有権を得ているため、中間法人はあくまで土地建物の使用・管理を“信じて託された”立場。従って、託した側の美山観光開発が真の所有者でありながら、登記名義は中間法人になる。一方で、美山観光開発はゴルフ場の経営やコースの使用・管理を中間法人に託すので、もはややることがなくなる一方、預託金債務だけは抱えたままの状態になる。

 この仕組みのポイントは、預託金債務を負っている会社は美山観光開発だし、不動産の真の所有権も美山観光開発なのに、登記上の名義は中間法人なので、「事実上、コースの不動産も経営権も会員が握っている状態になる」(同CC代理人の西村國彦弁護士)が、会員はコースに強制執行をかけられなくなる点だ。預託金債務を負っている債務者と、不動産の登記上の所有者が同じだと、コースが一部の会員、あるいは第三者から強制執行を受けるリスクからは逃れられないため、それを防ぐために債務者と所有者を分離させる、いわば苦肉の策だ。

 西村弁護士は「預託金返還を求めている会員から強制執行妨害だ、詐害行為だ、という声が出ることは覚悟している。しかし、返還請求を求める会員がコースの差押に動けば、同じ債権者であるプレー希望の会員の権利を侵害することになる。弁護士としての私見ではあるが、どちらが詐害性があるのか、この機会に世の中、そして裁判所に問いたい」と語る。

 同コースの経営からは、コース創設を主導した経営者が2年前に排除されており、地元の有力者で組織する理事会が運営を担ってきているというベースがある。居座る経営者がいないからこそ、会員にほぼすべての権限を渡すスキームになったことも事実だ。残る課題はこの複雑なスキームにどの程度の会員が理解を示すか。この方法で理解を得られなければ、結局民事再生になることは間違いない。

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