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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 9/26号
2007/6/14更新
米国のファンドが台湾の世界最大の
クラブメーカーを買収。その狙いは?

 ゴルフ業界でも投資ファンドの動きかじわじわと展開を見せてきている。米国で160コースを運営する大手ゴルフ場企業、アメリカンゴルフを保有するゴールドマンサックス(アコーディア・ゴルフの親会社)とスターウッドキャピタルグループが、アメリカンゴルフの売却をオファーしていることが米紙に報じられたが、一方、世界のゴルフクラブヘッドの大部分を製造している中国工場の最大手、台湾資本の「復盛」(フーシェン・英名=ネルソン)に対しても米国投資ファンドが買収を仕掛けていることが明らかになった。特に復盛の買収は日米ゴルフ用品メーカーに対する影響が危惧されている。

 米国カリフォルニア州ロサンゼルスの投資ファンド、オークツリーキャピタルマネジメントLLC(以下オークツリー)が、有名ブランド高級クラブヘッドの50パーセント以上を製造する中国工場を抱える台湾資本メーカー、復盛の株式を台湾株式市場でTOBで買収を進めている。

 現在、日米大手ゴルフクラブメーカーのクラブヘッドの9割以上は台湾資本の中国工場3社がその製造を寡占していると言われており、その中でも復盛は最大手。顧客リストにはキャロウェイ、テーラーメイド、ナイキなどを含む日米トップメーカーが名を連ねている。

 その復盛に対し、オークツリーは、最近台湾に設立した子会社バリアントインターナショナル社を窓口に、総額約8億5200万ドルを投じて買収を仕掛けているのだ。

 復盛はこの事実を認めており、同社のウェブサイトで、「この買収は敵対的なものではなく、あくまでも当社が事業拡大するために行う設備投資資金を調達するための友好的なもので経営陣もそのまま留任する見込み」と理解を求め、同時にオークツリー側もそれを認めるコメントを残している。

 今後、この取引は、復盛の株主過半数による同意、台湾政府の認可を得て、夏には成立するものと予想されているが、ゴルフ用品業界では、オークツリーの出方次第では複雑な問題に発展しかねないと懸念している。

 その理由は、もし将来、クラブヘッド工場を抱えたオークツリーの経営方針が、利益を圧迫している原料価格高騰をクラブメーカーに付けを回したり、ゴルフ事業を縮小したりするような事にでもなれば、ゴルフクラブの原価に深刻な影響も出かねないからだ。ひいては市場のゴルフクラブ価格値上がりにつながる可能性もでてくる。

 このところのチタン、カーボン繊維などの原材料価格高騰に加え、最近米国市場でナイキ、キャロウェイ、コブラ、クリーブランドの4社の新製品ドライバーに相次いで発覚したようなSLE不適合クラブ流出の再発防止策として強化する品質管理コスト増大など、コストアップ要因が重なっているクラブメーカーにとっては新たな火種ともなりかねない。

 大手クラブメーカー側では、今のところ「100パーセント復盛1社にヘッドを依存しているわけではないので、影響はほとんどない」と楽観視しているようだが、状況は予断を許さないところだ。

 ちなみに、2002年、オークリーは当時のスポルディングワールドワイド社を買収、スポルディング、トップフライト、ベンホーガン、エトニックなどのブランドを獲得していたが、その後、短期間で他社に転売した。

 そういった実績から考えて、今回のゴルフ事業参入も短期的なもので、いずれ利ざやが獲得できれば、他に転売し資金を回収するだろうとの憶測も流れている。

 昨今のゴルフ用品市場競争激化に対応するため、原価の安い中国に外注依存度を高めていった世界のゴルフクラブ産業。今や中国情勢が業界全体の浮沈を左右するまでになってしまったようだ。

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