PGA TOUR COLUMN2

マックス・ホマ 3連覇に挑む​ PGA TOUR
COLUMN

昨年連覇を達成したホマ。3連覇なるか(Mike Mulholland/Getty Images)
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マックス・ホマ 3連覇に挑む​

コービー・ブライアントがロッカーに貼っていた“名言”が支え

PGAツアーの新しい試みとなる秋の陣「フェデックスカップ・フォール」の第1戦「フォーティネット チャンピオンシップ」で大会3連覇を狙うのは、32歳のマックス・ホマ。2022-23年シーズンは年間フェデックスカップポイントランキング4位、世界ランクは春先から安定した成績でキャリアベスト5位(4月1週)とPGAツアーのトップクラス入り。近年、ホマがどのようにして頭角を現し、上達してきたのか? 本人から話を聞くことができたので紹介したい。

ロサンゼルス郊外で生まれ育ったホマの憧れはタイガー・ウッズとNBAのレジェンドだったコービー・ブライアント。 頂点に達したこの2人に共通する点は努力を惜しまないことだった。

2013年NCAA全米大学選手権で個人優勝を果たし、すぐに2部ツアーからPGAツアーに昇格したホマだったが、2016年から2019年には極度のスランプに。ツアー24試合中で予選通過はわずか3試合のみ。2018年の夏には世界ランク1282位まで落ち込むドン底を経験した。その時に支えになったのはブライアントが現役時代、ロッカールームに貼っていた「大きな岩を叩き続ける石切り職人」の名言だった。

「101回目に叩いたときに岩が2つに割れても、それは最後の1回によって割れたわけではない。その前に叩いていたからこそ、割れたのだ」―。ジャーナリスト、ジェコブス・リースの言葉だ。結果が見えていなくても、努力を続け、積み重ねることの大切さを再認識したという。

親友でキャディのジョー・グライナーに感謝を惜しまない
(Mike Mulholland/Getty Images)

“チーム・ホマ”で心技体の充実

ツアーでは通算6勝。以前よりも安定したスコアで優勝争いに加わるケースが増えたホマ。その理由を、まずはスイングコーチのマーク・ブラックバーン氏と子供の頃からの親友でキャディのジョー・グライナー氏の2人のおかげと感謝。メンタル面では昨年末からスポーツ心理学者のジュリー・エリオン氏に指導を受け、目標設定を明確するようになってからこれまでとは違う落ち着きや自信につながっているという。

技術面ではショートゲーム、グリーン周りの寄せの向上が昨年の躍進に大きく貢献したと説明。以前は苦手意識があったバミューダ芝の薄いライからの寄せのテクニックとバリエーションが見違えるように鋭くなったという。アドレス時にグリップ、手の位置を低くしてソールのバウンスを使いスピンを効かせる。

昨年大会最終日、最終ホールで見事なチップインで連覇を果たしたのは、このアプローチ技のおかげだった。「寄せに自信があるとショットの精度が良くない時でもスコアを落とさず『守り』のゴルフもできるという信念につながるので気分的にストレスが本当に減るんだ」

実際にグリーン周りで練習するところを30分ほど観察したところ、30ヤードほどの距離だったが、「GCQuad(GC4)」というカメラ式測定器を置きスピン量やボールの当たるミート率を確認していた。握るグリップ圧を柔らかめにして手首や肘に力みを入れずにボールだけをクリーンに拾うテクニックは華麗だった。

ブラックバーン氏によると、ホマはアドレス時でのシャフトの置く角度で球の高さと入射角を調整、加えてボールの当たるウエッジのフェースの場所も意図的に芯を外すことで勢いを殺す静かな球運びができるようになったと教えてくれた。

2023年、ホマが最も向上したデータ部門はパッティング。ストロークゲインドパッティング(SGP)という貢献度ではツアー11位。2年前は118位、昨シーズンは27位と低迷していた部門だったが、向上の理由はパッティングのストロークよりもエイムポイントメソッドでグリーン傾斜の読みが明確になったこと、そして、数々のメジャーチャンピオンを指導しているパッティングコーチのフィル・ケニオン氏のアドバイスを仰ぐようになったことも大きなプラス面に働いているようだ。

わが道を進むホマ(Andrew Redington/Getty Images)​

そして、コツコツと岩を叩き続ける

ホマに今後向上したい部分や課題について尋ねてみた。彼は「しっかりとデータ分析をして、劣っている部分をレベルアップしたいと考えているけれど、自分の長所をさらに磨くことを怠らないことも大事だと感じている」と語ってくれた。

メジャー競技でしっかり結果を残したいという強い気持ちがこれまで空回りし、「メジャーに弱いマックス」というレッテルを貼られていた。昨年までのベスト順位は2022年「全米プロ」13位が最高。2023年は、地元ロサンゼルスで開催された「全米オープン」でまさかの予選落ち。メジャー試合17戦目となった7月の「全英オープン」で初のトップ10フィニッシュ。左手のグローブにサインペンで書き込んだ「NFG」が話題を呼んだ。苦悩を克服するために書いたというスラングには、「何にも影響されず自分の道を進む」の意味を込めていたという。

昨年10月には待望の長男キャム君が生まれたホマ家。コツコツと岩を叩き続けるホマがメジャー競技という大きな石を割ることに近づいているのは間違いない。

アンディー和田

アンディー和田

1968年生まれ。米国在住のゴルフジャーナリスト。米アリゾナ大卒業後、プロゴルファーとして世界を転戦。
米ツアーで青木功や中嶋常幸らのキャディ経験がある。ジャンルを問わず、幅広くゴルフに精通し、トーナメント解説やアナリストとして活躍。近年はジュニアゴルファーの指導や育成にも力を注ぐ。