- 小俣バイヤー
- 伊藤さんがクラブをつくるうえで、こだわっている部分を教えてください。
- 伊藤クラフトマン
- 構えやすさですね。アドレスしたときにスッと自然に構えられて、自分のラインが出しやすく、イメージしやすい。そういうクラブを多く手がけていきたいと思っています。
- 小俣バイヤー
- 伊藤さんは手嶋プロと飯島茜プロを担当されていますが、プロとの関わりで心がけたり、むずかしい部分、こだわりは?
- 伊藤クラフトマン
- 両プロとも感性が繊細なので、クラブに対するオーダーが感覚的ですね。
- 小俣バイヤー
- どんな感じでオーダーされるのですか?
- 伊藤クラフトマン
- たとえば手嶋プロは、クラブを持っただけで「なんか肘が痛いんだけど」とか「足痛いなぁ」と言ってくる。ボールを打つ前にですよ。
- 小俣バイヤー
- えーっ、それだけでは全然わからないじゃないですか。
- 伊藤クラフトマン
- 僕もはじめは意味がわかりませんでした。でも、無理とかできないとは絶対に言いたくないので、たぶん振りにくい、形状からくるイメージがよくなくて負担がかかるんだろうと判断して、少しずつ調整していきます。
- 小俣バイヤー
- それで完成するのですか?
- 伊藤クラフトマン
- 手嶋プロのクラブは何十年もつくらせてもらって、信頼していただいてますし、毎回なんとか完成させてます。感覚が養われてきたのかもしれませんね。
昔、たしかMP-14でしたが、一年間に36セットつくったこともあります。
素材を変えてみたり、別の鍛造製法を試みたり、やれることはほとんどやりました。

- 小俣バイヤー
- うまくつくれたときの手応えのようなものはあるのですか?
- 伊藤クラフトマン
- いいクラブは、軽いんです。僕自身が持ってみても感じますし、手嶋プロも「軽くていい」と言ってくれます。それは数値的なものではなく、あくまでも感覚です。
- 小俣バイヤー
- そのクラブで手嶋プロが活躍してくれるのがクラフトマンのやりがいですね。
- 伊藤クラフトマン
- そうですね。お互い満足のいく瞬間ですね。
でも、この切磋琢磨に終わりはないのだと思います。
たとえ優勝しても、さらに次を求めてくるでしょうし。
- 小俣バイヤー
- YORO JAPANの広告などで伊藤さんは目立っていますが、周囲の反響はいかがですか?
- 伊藤クラフトマン
- 友人や親せきから「見たよ」とか言われて、恥ずかしいですけど、うれしさもあります。
友人から「もう悪いことできないね」って言われたりして(笑)。
- 小俣バイヤー
- プレッシャーはありますか?
- 伊藤クラフトマン
- いつも通りの責任ある仕事をすればいいだけですから、プレッシャーはありません。
YORO JAPANを通じて、ミズノのクラブづくりのこだわりを一人でも多くの方に知っていただけるのはとてもありがたいことだと思ってます。
- 小俣バイヤー
- 通称“ミズラー”と呼ばれるミズノファンへコメントを。
- 伊藤クラフトマン
- ミズノのアイアンの鉄の違い、打感の良さを、カスタマイズされたクラブで体感してもらいたいですね。僕たちはかならずお客様の要望に応えたオンリーワンをつくり出します。
自分に合ったクラブを使わないとスイングもスコアもよくなりませんし、自分に合ったクラブを使えば、ゴルフがいっそう楽しくなります。
- 小俣バイヤー
- ありがとうございました。

伊藤さんは、できるだけプロのラウンドに同行し、実際にボールの飛距離、方向、打ち出し角度などをチェックするとともにプロの意見を何度も聞いたうえで開発にあたるそうです。
今回僕が見学させていただいたミズノオープンの前日にプロアマ戦が行われたのですが、伊藤さんは手嶋プロのラウンドに同行。真剣な表情で話したり、気の置けない友だちのように談笑したりしながら。その姿を見て、伊藤さんと手嶋プロは親友であり、戦友なんだなと感じました。