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桃子の憂鬱「自分が自分じゃなくなった時が怖い」

南アフリカで行われたW杯で3位に入る活躍を見せたチーム・ジャパン。その帰国を、上田桃子は本拠地である神戸で待っていた。チーム・ジャパンの一員として出掛けていた江連忠氏の下で、渡米前最後の調整を行う為だ。米国女子ツアーの開幕戦が行われるハワイに向けて出発するのは2月6日を予定している。それまでには、わずか2週間しか残されていなかった。

あまり期待しないでほしい・・・


1月下旬の上田は、年明けに比べて随分と落ち着いて見えた。ここ数週間で良いトレーニングが出来ているのだろう。それでもまだ、短いクラブを持ってのスイング作りや、ウェイトを使っての筋力強化などの基礎トレーニングが多く、調整ペースとしては決して早くはない。

その日、たまたま上田と昼食を共にする機会に恵まれた。食べ物の好き嫌いや、アメリカでは料理をどうするか、車の運転は大丈夫かなど、ざっくばらんな話の流れで、「ハワイ(取材に)来るんですか?」と上田が聞いた。「もちろん行くよ」と答え、さらに「前の週に(石川遼が出場する)パールオープンがあるから、ほとんどの媒体が来ると思うよ」と付け足した。

「そうですか。でも、みんな遼くん(目当て)ですよね?」という上田。いやいやいや…と否定しながらその顔を覗き見ると、そこにはこれまでに見たことがない、困惑したような表情が浮かんでいた。「自分は最初からそんなに良くないですから、あんまり期待しないでくださいよ」。不安を隠す言葉にならない気持ちが伝わった。

焦りとプレッシャー

「電話で話したら何か元気が無かったから、心配で1週間神戸に行ってきたんです」と、1月27日に熊本に帰ってきたばかりという母・八重子さんは言う。「年末にテレビに沢山出させて貰ったりして、それで調整が遅れてしまった焦りがあるようで…」と、娘の気持ちを代弁した。

焦りがモチベーションを削ぐが、プレッシャーがその状況を許さない。「本当は、私はアメリカに行くのは反対だったんです。もっと先に本人が行きたいと思った時に行けばいい。流れで行くのと、本人が思って行くのは違うでしょう。ミズノクラシックに勝ったのが、良かったのか悪かったのか…」。

しかし、もうやるしかない。そんな娘をサポートする為、全試合帯同する決意を固めたという母。昨年バックを担いだ、清水・川口両キャディとマネージャー、トレーナーらと共にチーム桃子を結成する。「母には、私がいいっていうまでついて来て貰います」。上田は嬉しそうに言い切った。

芝攻略が活躍のカギ


取材当日はキャロウェイゴルフのスタッフが来て、今シーズン用のクラブをテストしていた。ウッドやアイアンは、寒さの中ではほとんどフィーリングを確認することが出来なかったが、3種類用意したウェッジは、アカデミーの庭先で江連氏が新たに準備した本物の芝の生えた練習マット(アメリカ仕様)の上から、打ち比べを行った。

ソール形状の違う3種類(スタンダード、PMソール、C-GRIND)を打ったところで上田が言ったのは、「これ(スタンダード)がやっぱり一番いい!」それを聞いた江連氏は、「おまえ、それだけはないだろう!」と半笑いで突っ込んだ。

江連氏が口を酸っぱくしていうのは、SWならフェースにある溝の下から2本目と3本目の部分で、毎回きちんとボールをヒットする技術を身に付けろということ。そうすることで、立った芝に埋もれた球や、窪みに入ったような球でも、毎回正確に捉えて同じ距離感を出すことが出来る。その為にソールを削り、リーディングエッジが地面に近くなるように設計されているのだが、その繊細な技術に対する認識のズレが、思わず笑いとなったのだ。

アメリカツアーに挑戦して初めて分かるであろう芝質の違い。それにいかに素早く対応出来るかが、序盤の成績にも影響することだろう。

今年は土台作り


昨年末の上田は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。その勢いで、アメリカツアーでも最低1勝!と意気込んだ。しかし、準備が進むにつれ、移動や英語、食事や体調管理など、ゴルフで優勝争いをする前にやらなければならないことも分かり始めた。簡単には勝てないかもしれない…。

その時、周囲はどういう反応をするのか?自分はどう感じるのか?「自分が自分じゃなくなった時が一番怖い」と上田は言う。年末、功罪両面のあったテレビ出演を通して、多くの有名人やアスリートに出会った上田は、彼らの共通点として、「ファンをとても大事にしていること」を挙げた。その気持ちは上田自身も同じだ。日本を離れるからこそ、もっときちんと自分を伝えたいと、自身のブログにも記している。

注目されていることは、多くの取材をこなす本人が一番分かっている。もしかしたら、周囲はすごく高い期待を持っているかもしれない。もちろん、ファンのことは裏切りたくない。だからこそ繰り返すのは、「今年は土台作りの年」だということ。自分を見失わないように、一歩一歩成長していきたい。そんな気持ちのこもった言葉を、必死で発信しているのだ。

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