後藤修が遺したもの

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後藤修が遺したもの
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プロ野球経験に裏付けられた奥深い理論

尾崎将司、中嶋常幸のスランプ脱出に貢献し、幾多のプロ、プロ志望者を指導した名コーチ。その後藤修が、2019年の9月、85歳でその生涯を終えた。

後藤が唱えた「スクェア打法」は、既に過去の理論なのか、それとも、未来に繋がる不滅のゴルフ遺産なのか。その全貌はあまりにも緻密で奥深すぎるので紹介できないが、その骨子を改めて振り返ってみたい。

【introduction】
後藤修
ごとう・おさむ
1934年静岡県生まれ。
プロ野球選手として巨人、西鉄など7球団でプレー。
引退後、プロゴルファーを教えるプロコーチとなる。
尾崎将司、中嶋常幸など多数のプロを指導した

CHAPTER 1

【スクェア打法の根幹】

腰を固定して両肩を入れ替えるのが捻転スウィングだ

 まずスクェア打法の根幹をなす「体は回すな、ねじれ」「腰で打とうとするな、腕を振れ」という2つの主張について、簡潔に説明しておきたい。

 両足、両肩を腰の部分でクロスして結ぶ『X』をイメージしてほしい。実はこのXは逆向きのVの上にVが乗っていてXになっている。トップでは下半分はそのまま上半分のVだけが右に回り、右肩のポイントに左肩が来て、再びXを再現。ダウンは下半身は不動のまま、上のVが左に回転してアドレスのXに忠実に戻り、フォローからフィニッシュにかけてはやはり上のVだけが左に回転して、やはりXの状態を再現する。原則的には腰を固定して両肩を入れ替えるのが捻転スウィングだ。

 全身を下から上、幹から枝・葉の正しい順序で動かし、全身をねじってねじり戻し、最後に渾身の力をこめて腕を振る。そうしてこそ、野球でもゴルフでも力のこもったストレートボールを目標に発射できる。

 後藤によれば「体を開くな、腕を振れ」は「野球の守るべき大原則」だという。逆に言えば、体が開いたら(回ってしまったら)腕が振れなくなるということだ。腰を先に回してしまうほど、腕(の振り)の出番がなくなってしまうのである。先に回してしまうほど、腕(の振り)の出番がなくなってしまうのだ。

CHAPTER 2

【長持ちするスウィング】

腰を回さず腕でさばく半身打法の威力をまず覚えてほしい

 20歳代で活躍しても、歳を過ぎてから消えていくプロが圧倒的に多い。それは柔軟な体が硬化・老化して、それまで聞いてくれていた無理難題(?)を聞いてくれなくなるからだ。それを後藤は「スライス体」の「スライススウィング」と名付けた。

 そこから脱出するために体の各部品を徹底的にストレッチして、正反対の「ドロー体」に変えていく。スウィングからはスライス(オープン)の要素を排除して、正反対のクローズにする。要するに「根本治療」だ。

 ボールを打つ場合はアドレスは極力、忠実にスクェアに構え、スウィングは徹底的にクローズ。ねじったトップからクローズに踏み込んで、クローズの方向に振り、ボールを目標より右に発射する。ここまでの流れに乗って説明すれば「十分に(下から上に)体をねじったら、腰(体)が回る(開く)隙を与えずに一気に腕で振り切る」練習、「体の右半分で振り終えてしまう」訓練だ。

 そのスウィング感覚、スピード感覚は、短いクラブを逆に持って(クラブの重さと長さを消して)下半身は踏ん張ったまま(腰は回さず)ビュン! と腕の振りで振り切る素振りをしてみれば、誰でも感じることができるのでぜひ試してほしい。

 後藤は、このインパクトでのアドレスの再現感で勝負し、フィニッシュは省略(腕で振り切った後にする)の打ち方を「半身」と表現する。

CHAPTER 3

【正しい順序で体を動かす】

基本中の基本となる右足かかとの前進、左足の踏み込み

「体開き打法」よりは「半身打法」のほうが点数は高いが、半身で甘んじていたら、そこで終わりだし、打ち終えたら下半身の踏ん張りをゆるめ、体を「回してフィニッシュ」でも不十分と後藤は言う。

 後藤の表現では「タメ」(のインパクト)から「切れ」のフィニッシュ。「半身」で振り切ったら、瞬時に体をすくっと立ち上げ、堂々と目標に正対するのが「一流品」なのだという。 後藤は「このプロはすぐ消える」「好調なのは今だけ」とズバズバと切り捨てて、その予言は本人も自負するように「百発百中」だった。興味深かったのは足元の両足かかとが「前進・そのまま・後退」の3パターンのいずれかをまず厳密にチェックすることだった。

 トップからダウンで、両足かかとがクローズに踏み込んでいれば合格。後戻りは回し・開きが入っている証拠だから大減点。アドレスの向きのままは(今は仮に好調だとしても)後退(不調)に向かう危険サイン。一番の土台、足元からその上の動きの良否を順を追って繋げて論理的に解説してくれた。

 人間の体は筋肉・関節の構造上、体の各部品を順番に下から上にねじり上げていかなくては、全身をねじり上げていくことはできない。要は右足から地面の中に木ねじのように食い込むようなものを感じてほしいのだ、という。

 ダウンに入っていくから、右足親指で地面を抑え込む力が消えずに、右足かかとの前進、左足の踏み込み、ニーアクション、腕と脚を長く使ったフォロー……と、体のすべてが下から上、幹から枝・葉と正しい順番で動き出してくれる。

CHAPTER 4

【理想のタテ振りスウィング】

アッパーでもダウンでもない。ヘッドを落とさず限りなく水平に振る

「長いクラブ、重いクラブの強振練習は基本的に禁止。その長さ・重さに対抗して腕や体を縮めにかかってしまうからだ」ということで、バット素振りも、短く軽いバット(軟式バットや子供用バット)で行う。

 バットは体の正面で、左腕とバットの角度は度。手元よりもわずかにバットの先が上になるように構える。そのポジションをキープしたまま、腰の高さのハーフスウィングで『限りなく水平に』振る。

「腰・下半身は正面に向けたまま踏ん張り、右腕・右肩関節・右背筋をしっかり伸ばしてフォローで止める。右足かかとも簡単にひっくり返さず、右脚をしっかり伸ばす」(要するに『半身』で振るということ)

 この練習の最大のポイントはバットの先を絶対に手元よりも落とさずに「限りなく水平に」振れているか。

 口で言うのは簡単だが、実際、重さに負けて落としてしまう限界までガマンしたまま限りなく水平に振るのはむずかしい。日常生活とはまったく違う力の入れ方をしなければならない。そこで、まずバット素振りから入ってもらうのだ。簡単に言えば、この腰の高さの素振りのスウィングプレーンをそのまま上半身を前傾してボールの接点に合わせていくのが、理想の『タテ振り』スウィングなのである。

CHAPTER 5

【野球のピッチングから学ぼう】

飛距離と正確性を両立させる左足を素早く踏み込む動作

 スウィングのスタートは「右足首のねじりから」、ダウンでは「クローズの踏み込み」両足かかとの前進)。「半身」で振り切る「タメ」と、そこから瞬時に立ち上がる「切れ」が必要と説明してきた。

 これがまさにピッチングの必須技術で、「ピッチングプレート」があるのも、「軸足から下から上に体をねじりあげて前足を強く速く踏み込む」ために他ならない。
「体が開いたら腕が振れなくなる」と既に説明した。体を下から上、幹から枝……と順番に使って、最後に腕を振る、という原則も説明した。

その正しい順番を忠実に守らないと「生きた球」は投げられない。ピッチングでもっとも大切なことは上半身を早く開かないこと、頭をつっこまないことだ。

 足首から十分にねじった右脚があれば、頭、上半身を『置いたまま』(クローズのまま)素早く大きく左足だけを踏み込むことができる。そのねじりが消えて、右脚が棒になってくるほど、この踏み込みの切れがなくなり、頭・上半身が踏み込む方向に一緒に持っていかれる。

 ゴルフで言えば左足に「体重移動」のつもりで、頭も体もスウェイさせてしまうことと同じだ。「まず左足に体重を移してからダウン・・・」と簡単に言うが、実は右脚の力を使って左に「両足かかとを前進させていく」のである。そして「踏み込んでからフォローまで、右足内側で粘り強く支え、右脚の張りを保って長く伸ばしたフォローを取る」。

これがピッチングの重要ポイントであり、ゴルフでも同じなのだ。

CHAPTER 6

【今なお新しい後藤理論】

スクェア打法の視点から見た渋野日向子のスウィング

 渋野日向子を教えた青木翔コーチは、彼女の頭を抑えてスウィングさせたという。これは後藤も大評価の、少年時代のニクラスを教えたジャック・グラウトが髪の毛をつかんで軸の大切さを教えたことに通じる。

 頭を固定することで軸が保たれれば、後藤の言う「X」のねじりスウィングが可能になる。「X=X」のスウィングをすれば、上のⅤと下の逆Ⅴの接点である「固定」の腰は強烈にねじられる。

 その意味で「腹筋を重視」という青木コーチの方針も正しいし、渋野日向子自身も「お腹がねじれる」と言っているのも正しい・・・もし後藤が健在ならば、そう評価してくれるのではないだろうか。

『レッスンの匠 後藤修が遺したもの』は、チョイス2020年新春号に詳しく掲載されています。

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