INTERVIEW

レンジローバー

プロゴルファー藤田寛之インタビュー

Vol.10 変わらないこと、変わること。

通算18勝のうちの12勝が40代になってからの勝利で、
2012年には43歳で初の賞金王に輝くなど、歳を重ねるごとに進化を遂げ、
中年の星とも呼ばれる藤田寛之プロ。
師と仰ぐ芹澤信雄プロから譲り受けて以来、
約15年間ずっとレンジローバー数台を乗り継いできた。
2017年、満を持してランドローバーのアンバサダーに就任した。

ビルの影が伸びる午後、涼しい風が吹き抜ける銀座の路地裏。そこにランドローバーとジャガーの世界観に触れることができる素敵な空間がある。「JAGUAR LAND ROVER STUDIO」、2018年の6月30日から9月24日までの期間限定でオープンしているこのスペースは、クルマ好きゴルファーにとっての憩いの空間といえる。中央のカウンターでランドローバーをイメージしたスペシャルドリンクを片手に人懐っこい笑顔を浮かべているのは、ランドローバーのアンバサダーとしてすっかりおなじみになった藤田寛之プロである。

   

30代の頃、師匠である芹沢信雄プロからレンジローバーを譲り受け、英国を代表するSUVの魅力にすっかり惚れ込んだ藤田プロは、現在6台目となる最新のレンジローバー・オートバイオグラフィー・ロングのステアリングを握り、レギュラーツアーを戦っている。昔と今でレンジローバーに対する彼の印象はどのように変化したのだろうか?

 

――藤田
「けっこう変わりましたね。正直なところ、若い頃は勢いで乗っていたような感じでしたから。’90年代はランドローバーという自動車ブランドも世間にはまだそれほど知られていなかったし、僕自身も全然知らなかった。芹沢さんが乗っているのを最初に見た時も、なんか大きなクルマに乗っているなぁ、というぐらいの印象でしたから。でもトッププロがレンジローバーのような堂々としたクルマに乗っているのはインパクトがありましたし、憧れましたね」

 

スポーツカーやスーパーカーは低めのシルエットやスピードに対する憧れで語られることが多いが、SUVはライフスタイルと親和性が高く、またプレミアムブランドのクルマはオーナーとのマッチングによってより強い魅力を放つ傾向にある。藤田プロのレンジローバーの関係は、レンジローバーのようなクルマが似合うトッププロになりたい、という強い憧れによって誕生したのである。

   

――藤田
「最初は『すごいクルマに乗っているんだ!』という嬉しさだけでしたけど、すぐにドライビングの気持ち良さとか、ゴルフ場までのアシとしての優れた使い勝手という部分が理解できるようになりました。だから乗り換える時が来ても、もちろん次もレンジローバーという流れに当然のようになっていましたね」

レンジローバーから新しいレンジローバーへ。そこにはどんな世界観の変化があるのだろうか?

――藤田
「新車に乗り換えるたびに、最初は新車特有の匂いとか真新しい感じが楽しめるわけですけど、でもそんな最初の興奮が終わって冷静になってみると、それほど変わってはいないんですよ。たとえばコクピットから見える視界とか、操作系の位置とか、室内の明るさなんかも歴代のレンジローバーに共通している部分だと思います。基本はあまり変わった感じがしないのに、それぞれの機能は確実に進化している。走りに関しても歴代のレンジローバーに共通するテイストはしっかりと残っているけれど、滑らかに速く、そして楽にドライブできるようになっていますね」

クルマの世界は新型になってガラリと姿かたちを変えることで話題を集め、普及させる傾向がある。だがその裏では厳しさを増す安全のレギュレーションもあって、変わらざるを得ない現実もある。進化はしても根底にあるテイストを変えないというのは、実は簡単ではないのだ。

   

――藤田
「以前からクルマは複数台持っているので、スポーツカーとか別のクルマにはちょっとした変化を求めている部分があります。けれどボクがレンジローバーに求めているものはいつも同じなんです。安心できる使い勝手と、あとプロゴルファーとしてはやっぱりトーナメントに乗っていった時の存在感というかステータスみたいなものですね。勢いで乗りはじめたレンジローバーですけど、結果的にこのクルマを乗り継いで大正解でした。そして今はちゃんとモノをわかって乗れていると思っています」

   

ゴルフの世界でも、若さとか勢いがとてつもないパワーを発揮する瞬間があるが、しかし時間を掛けて淡々と積み重ねていかなければ理解できない本質もある。藤田プロとレンジローバーの間には、常人には計り知れない強い結びつきがある。自信に満ちた藤田プロの言葉を聞いていてそう確信させられた。