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ゴルフ野性塾スペシャル
No219...ターフを取ることの罪悪感...(11/12)

プロはどう考えますか?
塾長こんにちは。いつも楽しく読ませて頂いております。以前より疑問に思っていたことについて答えて下さい。疑問はターフについてです。トーナメント中継を観ていると大きなターフが飛んでいくのをよく目にします。塾長はターフを取ることに罪悪感を感じませんか? 私はなんとなく悪いことをしている気がしてラウンド中トップ球が出てしまいます。また、蟻の巣があるときもいやです。グリーンに対してあれほど神経質になるプロとしてはどうですか?

(大阪府・31歳・会社員)


蟻の命と引き換えにプロになった

蟻の穴の近くにいれば躊躇する。練習場では打たない。蟻が移動し終わる迄、待つ

15年程前のトーナメント会場練習打席、蟻が近付いて来た。私は打たなかった。クラブヘッドで追えば蟻の体は潰れる。待った。待ち続けた

「坂田さん、どうしたんですか?」と問うた者がいた。「蟻だ」とだけ答えた。

「蟻がいる時、打てるか?」と問うてみた。「僕も打てません。無用の殺生ですよネ」と彼は答えた。

推測なれど、蟻を平気で叩き殺せる者はプロゴルフ界にはいないと思う。躊躇する筈だ。試合の時は打つ。眼を閉じてでも、横を向いてでも私は打つ。

プロテストの時だった。私は琵琶湖CCのテストで合格したが、当時のプロテストは1日36ホールの一発勝負。27ホール終えて、私は1オーバー。前半18ホールが2アンダー。後半の9ホールが3オーバー。4オーバー迄が合格。

10番ホールのロング、私のティショットは蟻の巣のすぐ横に止まっていた。蟻がボールの下で、動き回っていた。

悩んだ。トップボールを打とうとも思った。私は普通のスウィングをし、普通の球を打った。クラブは4番アイアン。

蟻の巣は無くなっていた。ボールはピン手前5センチについていた。イーグル。私は蟻の命と引き換えにイーグルを取り、プロテストに通った。

あの追いこまれた状況、アンプレヤブルを宣言する事は出来なかった。翌年からプロトーナメントに参加したが、幸いにも蟻の巣に出合う事はなかった。

人、それぞれの価値観なれど、優勝出来るか、否かのショット時、私は蟻の巣を打つと思う。予選、通るか、否かの時は絶対に打つ。打たなければ自分が生きて行けぬ時は打つ

プロにとって、予選通るか、否かは生きれるか、生きれぬかの瀬戸際。私は蟻の巣を打つ。私はターフを取る罪悪感を持つ。

意識的にボールをクリーンに打つ事もあった。しかし、結果は悪かった。意識した分、球質が変わっていた。特にショートホールでのターフ取りの罪悪感は強い。

今もターフに対しては意識したり、しなかったりで過ごしています。日々の出来事に対して適当に、ぼちぼちと、語らいて過ごす日々。人それぞれでしょう。

他の人に関してはノータッチ。同業者の価値観に触りたくはない。御自愛あれ。


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