ナビゲーター:高梨 祥明
ゴルフ専門誌のギア担当編集者として、長くゴルフクラブ、ボールについての取材活動を行い、2013年に独立。現在は執筆活動のほかマイブランド《CLUBER BASE》を立ち上げ、ゴルフ関連グッズの企画、販売も行っている。
よく、シャフト選びの基準は?と聞かれるが、私は決まってこう答えることにしている。
「そのシャフトにしたことで“フェースのいいところ”に打点が集中する。それが自分にとって合っているシャフトです」

いくらヘッドスピードが上がっても、打点がバラついているようなら“合っている”とはいえない。安定して、“フェースのいいところ”に当たる道(ダウンスイングでのヘッド軌道)を作ってくれるのが、自分にとってのベストシャフトだと思っている。そして、こればかりは人の真似をしても始まらない。誰かがいいと言っても、スイングやヘッドの組み合わせによってナイスショットに導くシャフトは違ってくるのが当然だからだ。
カーボンシャフトはとにかく多品種だが、その事実は、それだけのバリエーションがなければ、幅広いゴルファーニーズ、あるいはスイング特性、次々と登場するクラブヘッドに合わせて、ベストルートを切り開くことができないということを意味している。

三菱ケミカルが誇る人気シリーズ『Diamana(ディアマナ)』も、ジェネレーションを重ねる度に少しずつバリエーションを増やし、進化を続けてきた。2021年9月には『Diamana TB』に続く、第5世代シリーズの第2弾として『Diamana PD』が新しく加わった。では、新しい『Diamana』が今なぜ必要だったのか。誰にとって好結果をもたらすものなのか。詳しく検証をしていこう。
ドライバーヘッドはご存知の通り“大慣性モーメント”が主流の時代となった。少し前まではクラブメーカー各社はヘッド体積の異なるドライバーを開発し、ゴルファーもその中から自分に合うヘッドを選んで使用していたが、今は460ccのフルサイズが基本。ヘッドサイズ(慣性モーメントの大小)を選択できる時代ではなくなっている。

  そうしたドライバーの変化にともなって、スイングのあり方も変わり、ツアープレーヤーを中心にして新しいスイングトレンドも生まれつつある。“大慣性モーメント”ヘッドをベストルートに乗せていく、シャローなスイングパターンの確立だ。

『Diamana』の第5世代、『TB』と『PD』はまさしくこのニュードライバーヘッドとニュースイングに対応すべく生まれてきた新シリーズであると言える。
大きな慣性(一度動き始めたら方向を変えられない)を持った最新ドライバーで、スクエアにインパクトし、クラブスピードを減速させずに振り抜いていくためには、トップオブスイングからダウンスイングでの切り返しで、正しいプレーン上にクラブを乗せてあげることが必要になる。その道に乗せる役割をシャフトが担っているわけである。

新しくラインアップに加わった『DiamanaPD』は、先行して発売されている『TB』に比べ、やや切り返しでゆったりとしたテンポを作りやすい中元調子のモデル。シャフト全長の剛性分布は『DF』に近い特徴を持ち、高性能炭素繊維MR70と、その素材特性を最大限に活かす新マトリクステクノロジー「Xlink Tech™(クロスリンクテック)」、強靭で高い補強効果を発揮するボロンファイバーなどを緻密に部分配置することで、とくに大きなヘッドの慣性に負けない粘りと強靭さを生み出すことに成功しているのだ。
そして、重心距離の長い大型ヘッド特有のトゥダウンに対応するため、先端強度をさらに高めているのが第5世代『TB』『PD』の共通点でもある。

従来『Diamana』のカラーイメージから、『TB』は青マナ系、『PD』は白マナ系と分類されがちだが、第5世代は大型ヘッド時代に呼応して生み出されたまったく新しいシリーズだ。キックポイントの違いによる切り返しのしやすさも、ヘッドの特性によって大きく異なってくるところ。色のイメージにとらわれることなく、先入観なく『Diamana』の第5世代を試してみていただければと思う。
45.5g(PD40/R2)から85.5g(PD80/TX)までの幅広い重量フレックスラインアップが魅力。シャフトのバット径(太さ)を均一化することで、シャフト重量が変わっても同じテンポでスイングすることが可能。ドライバー、フェアウェイウッドで重量を変えても違和感なく使用することができる。
三菱ケミカルが誇る高性能炭素繊維MR70とプリプレグ技術の進化によって、振りやすさと安定性を決める弾性率と強度を大幅にアップさせている。大きな慣性を持つ最新ドライバーヘッドをコントロールするために、素材レベルから強化を図れるのが素材メーカーならではの強みだ。
Diamana PDシリーズをアマチュアゴルファーが試打検証
出島 正登さん
●マイ・ドライバー/プロギアRSF(純正シャフト・S)
気に入って長く使ってはいるが、右プッシュやひっかけなど打球が定まらない日も多い。バラツキは基本的には“腕”の問題だと思っている。
不安定なドライバーショットの原因は自分の腕のせいと笑っていた出島さんだが、ウォーミングアップでDiamana PD 40を打ち始めると表情が一変した。
「タイミングが取りやすく、ダウンスイングの軌道に乗せやすいというのがよくわかりました。40g台でもまったく頼りないことはないし、スイングリズムが一定になりますね」

球筋は安定したドロー系で、フレックスR2ではさすがに軟らか過ぎたのか時折、曲がりが大きくなる傾向がみられた。しかし、この症状もPD 50・Sにしたことでピタッと無くなった。
「ダウンスイングにスッと入っていけると、インパクトで無駄なアジャストが必要なくなり、ミート率もアップしますね。いいところに当たるぶん自然に飛距離も伸びる。リズム、結果が一定するのでスイングが良くなった気がします」

  クラブの性能はヘッドで決まる、と思っていたという出島さんだが、シャフトの重さ・硬さをしっかり選ぶことで安定したスイングと弾道を手に入れられることを実感。Diamana PDに出会ったことで、最新ヘッドのやさしさに改めて気づいたようだった。
切り返しがスムーズになったことで打点も安定。フェース下目にヒットしても弾道・飛距離に変化があまりなかったのは、大慣性モーメントドライバーを活かせたことの証し。
神田 陽介さん
●マイ・ドライバー/ピンG400 MAX(Diamana DF60・S)
初代Diamana Dシリーズに惚れ込んで以来、Diamana一筋。最新作PDにも興味津々!
普段からDiamana DF60を愛用している神田さんだが、実は少しだけ不満があったという。
「振りやすさや安定性は文句の付けようのないDFですが、重さと硬さのイメージが若干合わないと感じてもいたんです。これはあくまでも自分の感覚ですが、重さのイメージでは70・Xがいいのに、切り返しでのタイミングの取りやすさ(硬さ)は60・Sのほうが好きだったんです。両方の良さを兼ね備えたスペックがあればと、ずっと思っていました」

そんな不満がDiamana PD 70・Xを試した瞬間に一発解消!
250ヤードキャリーを連発し、こだわり派の神田さんも大満足だ。探していたのはこのフィーリングと安定感だった。
「こんなにドライバーの弾道が揃うのは本当に久しぶりですよ。力んでも弾道の捩れが少ないですし、いつもならラフに入るミスでもフェアウェイに残ってくれる。ボールを出したい方向と曲がり幅がイメージ通りになる感じです。逆球が出ないというのは本当にありがたいです。今すぐに使いたい!」
Diamana PD 70の最大の特徴は、安定した挙動だと語る神田さん。ミート率が大幅に上がり、曲がり幅も少ない。当然、飛距離も平均的に伸びていた。
第5世代『TB』『PD』の登場で、既存の『BF』『RF』『DF』『D-LIMTED』が旧モデルのイメージになってしまったかもしれないが、これら第4世代Diamanaがベースにあるからこその新シリーズであることを、改めて言っておく必要があるかもしれない。

  いくら大慣性モーメントドライバーが主流で、それに対応するニュースイングが増えてきたと言っても、既存ゴルファーの多くは様々な性格のドライバーヘッドを使い、スイングもまた千差万別だ。第5世代だけであらゆるゴルファーをベストルートに導くことは、やはり困難なのである。
シャフト選びの基本は、先入観を持たないことでもある。ヘッドが変わればスイングも変わる。スイングが変われば、適正シャフトも変わるものだからだ。唯一変わらないものは、切り返しのテンポであり、スイングのリズム。ゴルファーが心地よいと感じる、振りやすさなのかもしれない。

  新しいヘッドにしても、長年染み付いたテンポ・リズムは変えたくない。だからこそ上手いゴルファーたちは、その調整役として新しいシャフトに期待を寄せる。シャフトを変えることで、ナイスショットへの道がスッと切り開かれることを知っているのだ。
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