最終更新日 2006年11月29日

EXE(2006年11月29日更新):連載/フォトエッセイ:ゴルフ・エピキュリアン(Golf Epicurean)のすすめ:快楽主義者の独断的名コース・グルメ:第5回 廣野ゴルフ倶楽部(兵庫県):文・西澤 忠(ゴルフ・ジャーナリスト)
青木功プロの「お守り」

 「廣野GC」でビジターとしてプレーするにはメンバー同伴が原則。それも、同伴メンバー1名につきビジター7人の2組までだから、8人以上で行くにはそれなりの同伴メンバー数が必要になる。“メンバーズ・オンリー”のプライベート倶楽部として当然で、日本の名門倶楽部のプライドが感じられる。

 幸いなことに、僕にはメンバーの友人がいる。神戸市在住の林孝之君は親子二代のメンバーで、大阪警察病院の放射線医師。ちなみに“技師”ではなく“医師”。ハンディ4で、昨年初めてクラブ・チャンピオンの座についた。もうひとり、日本のアマチュア名手・中部銀次郎のご子息、中部隆君も知り合いのひとりだが、トップ・アマの彼とはめったにプレーする機会はない。5年前に亡くなった父・銀次郎氏とは同世代の交流があったが、ご子息とは世代も飛距離も違いすぎるから接点が少ないせいだ。

 故・中部銀次郎は生地の「下関」でゴルフを覚え、甲南大時代は「廣野」、社会人になって「東京」をホーム・コースにしていた。日本アマ6勝をさせた猛練習は「廣野」時代。「コースをラウンドするより練習場にいた時間の方が多かった」と聞いた。

 昨年、38年ぶりに「廣野」で開催された日本オープンで、青木功プロが特別招待選手としてプレーした折、驚いたことがある。青木と中部は私的な交友関係にあったのは知っていたが、まさかそこまで!と思ったからだ。それは、1番ティで青木プロのキャディ・バッグを見たとき、ふと気がつくと青木プロ自身の名入りバッグ・タッグとは別に、もうひとつぶら下がっているではないか。そこには“中部銀次郎”の名が。38年前の日本オープンではプロになってはいたが、出場資格のなかった青木にはこれが初の「廣野」体験。「だから、お守りだよ」ということらしい。あの百戦錬磨の青木プロにとっても、「廣野」でプレーするには縁の深い中部のお守りが必要だったのだろう。残念ながら予選落ちしたが、青木プロの心意気にちょっとセンチな気分にさせて貰ったものだ。

ショットの価値と廣野12番ホール

 ご存知のように「廣野」は英国人コース設計家のチャールズ・アリスンの設計図によって創設された。高畑誠一、伊藤長蔵など創設メンバーが図面をもとに現実化した。京大農学部卒の上田治(後の設計家)もいた。

 戦後の復興を経て、コースは各所で改造されたが、最大の変更は開場当事ベントだったグリーンの再度洋芝化だろう。さらに、日本オープン開催に向けて、12番ホールの距離を延長、あわせてグリーンを新設した。この改造設計を陣頭指揮したのが大橋一元キャプテンだった。「幸い、アリスンの設計原図があったので再現しましたが、12番だけは廣野らしさを出すのに苦労しました」という。

 実は、この12番ホールの改造は3回目で、1959年(昭和34年)に上田治の手で改造された時代のホールが秀逸だったと思う。550ヤードのパー5だった頃は、グリーン前の左右に2本のマツの木が枝を張り出して第3打のポジションを限定していた。つまり、旗の位置が右にあれば第2打をフェアウェイ左に、右にあれば右に運んで、マツの木がスタイミーにならないようにする必要があったからだ。

 コースの戦略性とはショットの価値を問うこと。ショットの価値(英語でShot Valueという)を忠実にスコアに置き換えるコースこそいいコースの条件といわれる。その戦略(マツの木が垂直のハザードとなる)がこの12番を名ホールにしていたのではないだろうか?

 もちろん、この感想はノスタルジアに過ぎない。現今のボールの飛距離に対応すべく596ヤードに距離を延ばしたのも時代の要請だろう。

 そんな偉そうなことをいうわりに、いつもこのホールで失敗しているわが身を恥じ入るばかりだ。名ホールの持つ戦略性の細部を知るために、少しでもハンディを向上させ、設計家の意図を読み解きたいと思って来たのに、少しも進歩していない自分を知らされるのだ。

 そのせいで、アフター・ゴルフの19番ホールになると、神戸・三宮の巷で中部銀次郎が愛したステーキ・ハウスやメンバーの集る寿司屋で酒を飲み過ぎてしまうのかもしれない。中部銀次郎の面影がちらちら脳裏をよぎることもあって……。


写真:ゴルフダイジェスト社

西澤忠 1941年、横浜生まれ。早稲田大文学部卒業後、(株)ゴルフダイジェスト社に入社。
月刊、週刊「ゴルフダイジェスト」誌、隔月刊「チョイス」編集長を経て、1996年にゴルフ・ジャーナリストとして独立。ゴルフは『メイプルポイントGC』のハンディ7。
訳書に『コースに恐怖を持ち込んだ男、ピート・ダイ』(小池書院刊)がある。
『週刊ダイヤモンド』誌で「日本のベスト・コース150」、「世界の名ホール探検」などを連載。
日本ゴルフ協会広報参与。関東ゴルフ連盟広報委員。
 
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