――そもそも視力は眼の良し悪しには関係ない。それは「飛距離でゴルフの上手下手を語るようなもの」。
これだ。仲間に勧められ、さっそく帰りに『choice』を購入した。そして『ゴルフと年齢(エイジ)』(モノクロ9ページ)の中に、この一文を見つけた。
この特集のテーマは「身体と眼の衰え」だ。老いに負けずにプレーするための秘訣を、パート1「体+技術」とパート2「視覚」とで、それぞれ専門家がアドバイスしている。
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パッティングで眼を正しく使うためのトレーニング方法も紹介されている
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高齢になってもスコアを伸ばすことが目的なので、壮年にも達していない私には早すぎると、やや躊躇した。しかし、眼を通してみれば、年齢など関係ない。老若男女すべてに役立つ、上達に必要な身体の理論を知ることが出来る。
さて、視覚については「ビジョントレーナー」という聞きなれない職業の田村知則氏が解説してくれている。眼は心と体、環境と融合して循環しているという『視覚行動システム』の提唱者だ。
武術における眼の在り方等を参考に、心・技・体を高める眼の使い方を指導しているそうだ。メジャーリーガーのイチローを始め、日本のトップアスリートたちも取り入れているというから興味が湧く。
――「視力は視覚能力の一部。視覚とは、認知~分析~判断~行動までを含めた『観る』こと」である。
読み始めてすぐに、今まで視力に頼りすぎていた事実に気づく。自分のプレーを振り返ると、カップが見えない! と思った瞬間、いつもオロオロと心が動揺する。打ち方が定まらないままにクラブを振り、大事なパットを外すというのが、毎回のミスパターンだ。
そのミスの原因は、目標が見えなかったことよりも、「集中力の不足」が挙げられる。「ピントがはっきり合うようにものを睨む」ことが、集中することだと、多くの人が思い込んでいる。しかし、それは間違いだったのだ。
――観の目強く、見の目弱く――剣豪・宮本武蔵
武術では、「常に全体を見ながら部分を見る。弓道では、目標を狙う極意を『見て、見ず』と言う。睨んではいけない、そこに的があるのを『感じる』のだ」と教えているそうだ。
中学生の頃の剣道の試合を思い出した。得意の「面」を打とうと、相手の頭ばかりを睨んでいて失敗した。先に「籠手」を取られ、続けてもう1本。隙だらけであっけなく負けた。狙いの面だけではなく、相手の動きの全体を見なければいけなかったのだ。
あれから十数年。握っていた竹刀はゴルフクラブに変わったが、相変わらずボールやカップといった一点ばかりを睨みつけている。まったく進歩していなかったというわけか。
――ものの見方、眼の使い方の主体となる「内の眼(心の眼)」は、老化せず、歳を重ねるほど磨きがかかる。
同誌のインタビュー特集『ゴルフ イズ マイライフ』(カラー6ページ)では、
15代に渡って茶作りに励む、茶師・中島敏雄さんのゴルフライフを紹介している。インタビュアーは元フジテレビアナウンサーで、茶道とゴルフが趣味の深澤里奈氏だ。
中島さんは「芝目を読めること」がゴルフでの特技だという。「茶葉という自然の生き物を直に見ている」ことで、無意識のうちに身についたそうだ。グリーン上での順目と逆目はもちろんのこと、昼に近づくにつれ、芝が乾燥していく様子も察知できるという。
これは芝の1本1本を凝視したところで、到底わかるものではない。茶師としての経験で培った、中島さん流の目の使い方によるものだろう。
前述した特集によれば、眼の使い方は、人の考え方や行動、運動能力を左右するという。ゴルフ暦が長くなるにつれ、自分の得意クラブや技が明確になる。それと同じように、自分の視覚の特徴を知り、それを磨いていくことは、上達には不可欠な要素となるようだ。
そもそもゴルファーにとって上達とは何だろう。スコアや飛距離のように、数字に表現されるものだけではないだろう。視覚の向上を心がけるにつれ、眼に見えないゴルフの喜びや愉しさも見えてくるのではないだろうか。
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