―― プロゴルファーになる以前は、全く違う仕事をされていたとお聞きしました。具体的に何をされていたのですか。
高校を卒業してすぐに喫茶店へ就職しました。しかし1年足らずでその喫茶店が潰れてしまい、同じ飲食関連で板前になることにしました。子供の頃から料理が好きだったんです。それから、バブル景気になり父親が経営していた不動産業が忙しくなってきました。
板前をしながら、3ヶ月間夜学に通って宅建の資格を取得。その後、家業を手伝うようになりました。自分の売った土地にビルが建ったり、私を介して知人が家を建てて喜ぶ光景を見たり、不動産の仕事にも素晴らしい充実感がありました。
―― その後、プロゴルファーを目指したそうですが、そもそもゴルフをはじめたきっかけを教えてください。
私がゴルフをはじめたのは26歳。友人にコンペに誘われたんです。当時はゴルフを全く知らなくて、クラブを買いに行っても「スチールシャフト」や「Sフレックスが合う」と言われても、全く分らないレベルでした(笑)。練習もコンペ前に少しした程度。ですが、初ラウンドでは“103”で回ることができたんです。次のラウンドでは、80台でプレーし「コレは面白い!」とハマっていきました。
―― それからすぐにプロを目指し、研修生になったのですか?
参加したコンペは、あるプロを応援するコンペだったんです。何度か出ているうちに、そのプロと一緒にラウンドすることになりました。その時に「お前の飛距離だったら3年でプロになれる」と言われたのがキッカケです。でも当時の私は、プロゴルファーといったらジャンボ尾崎さんと青木功さんくらいしか知りませんでした。当然、プロの世界がどんなものなのか知りませんでしたし、そもそも「プロゴルファーって、そんなに簡単になれるものなのか?」とも思いました。研修生になってプロを目指す気持ちを固めるまでには1年間かかりましたね。
―― 1年後にプロを目指す決断ができた理由は何ですか?
ひとつは自分の上達のスピードです。研修生になる前のラウンド数は10回もしていませんが、初ラウンド以降は80台で回っていました。練習は週に1回程度で、仕事が忙しい時は月に1回ということもありました。当時のベストスコアは“83”で「ゴルフってこんな簡単なの? プロに言われた通り3年で本当になれるんじゃないか!?」って思ったんです。勘違いしていたのかもしれませんが、その強い気持ちが行動に移せた原動力になっていたのは確かです。ただ、両親は「何を考えているんだ! お前がプロになれるわけないだろ!」と猛反対でした。
しかし、やっぱり自分の夢を捨てきれず、最終的には親の反対を押し切って“期間は3年”、“チャンスは1度”と決めてチャレンジすることにしました。
―― 研修生になってからは、どのくらい練習しましたか?
睡眠時間は4時間くらい。毎日、練習漬けでした。今思えばすごい練習量でした。それができたのも先輩の研修生や師匠に恵まれたからだと思っています。当初は、どのくらい練習すれば良いものか分かりませんでした。練習のペースや目安がないんですよね。そんな時、師匠から「久古、明日から朝練に来い」と言われました。「何時からですか?」と聞くと「朝、早くだ」とだけ言われたんです。出勤時間が7時でしたので、1時間も練習すれば十分だろうと思い、6時に行きました。すると、もう師匠はいたんですよ。「久古、遅いな」と言われ、マズイと思って次の日は5時に行きました。しかし、プロはすでに練習中でした。「遅い!」と、また叱られました。
次の日は4時に行きました。それでも、やっぱり師匠は練習していたんですよ。その時は「まあまあ早いじゃないか」と言ってくれたのですが、私も意地になって翌日は2時に行きました。さすがに師匠はまだ来ていませんでしたが、プロは3時に来て、私が居ることを確認して帰りました。「やっと分かったんだな」と思ってくれたのでしょう。プロを目指すとはそういうことだと教えられた気がしました。
―― その3年後にプロテストに1回で合格しました。チャンスは1回と決めたことにプレッシャーはありませんでしたか?
それまでは、実力が足りずテストさえ受けられなかったんです。ですから研修会で好成績を残して受験資格を得たとき、師匠からは「歳なんだから、全部1回でパスしろ」「コレで落ちたらもう辞めろ」って言われていました。「1回限り」と決めて受験したことはプレッシャーではなく、集中力のアップに繋がったと思っています。「また来年もあるから」という気持ちでは、どこかに甘えが出てしまう。保険をかけてはダメなんです。実は宅建の資格を取ったときも1回限りと決めていました。“チャンスは1度”と考えるから集中して打ち込めるのです。
――プロになって初めて試合に出場したときはどんな気持ちでしたか?
プロ3年目に、マンデートーナメントを勝ち抜いてはじめて出場したのが「フジサンケイクラシック」でした。結果は予選落ちでしたが、あのときの感動は今でも覚えています。テレビで見るコース、先輩プロ達・・・。とりわけ、名物ホールのティグラウンドに立ってあの有名な灯台を見たときは体中が震えました。
プロとしては当然、賞金を稼ぎたかったのですが、ギャラリーがいる華やかな舞台でプレーしたことで、「またこの場所に立ちたい!」「この試合に出たい!」という思いが膨らみ、一層練習に励むようになりました。憧れていたプロスポーツの世界は想像以上に魅力的な空間でした。
――飲食業から不動産業、そして現在はプロゴルファーになった久古さんは、2度の転職を経験しました。その中で学んだことはありますか?
転職の際は、やっぱり悩まなくちゃダメです。決断するまで、「その仕事は自分に出来るのか」をトコトン悩んでいいと思います。今振り返れば、自分自身勘違いしていたと思う部分もありますが、私は興味を持ったらトコトンやる性格。だからこそ、“出来る!”と思えたんです。プロゴルファーを目指す決断をするまでには1年間かかりましたが、それからは迷わずに邁進してきました。
それに、私には運もあるんだと思います。例えば、人よりも上背があるのでゴルフの飛距離という部分に大きく影響しています。そして何より、出会った人たちに恵まれていました。今の自分があるのは周りの支えがあったからこそ。自分を育ててくれた人たちに感謝しながら、これからもプロゴルファーを続けていきます。
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