最終更新日 2007年6月21日

多くの時計関係者は、バーゼルワールドを訪れたのち、レマン湖を望むジュネーブ市へと大挙して赴く。ここでもうひとつの時計見本市、ジュネーブサロン(正式名称はSIHH)が開催されるからだ。こちらは 「サロン」の名からイメージする通り、クローズドな集まりの原則が守られている。ゆえにバーゼルワールドとは違って、一般客の入場はお断り。来場者は、世界から集まるバイヤーやジャーナリストに限定されるため、スーツでかっちりと決めたビジネスマンが圧倒的に多いのが特徴だ。
16のブランドが軒を連ね、優雅で高級感溢れるムードが漂うジュネーブサロンからは、一体どのような時計が発表されたのだろうか。
創業から250年以上の歴史を誇る老舗、ヴァシュロン・コンスタンタン。リシュモンジャパン ブランドCEOであるAlexandre James氏に、渾身の新作について語ってもらった。
―今年のいち押しの新作は何でしょうか?![[写真1] メティエ・ダール・マスク](img/photo1.jpg)
たいへんユニークな「マスク」のコレクションですね。その名のとおり、アジア、オセアニア、アメリカ、アフリカという4大陸の国々を象徴するマスク(面)を、文字盤に組み込んだ面白いモデルです。これは、ヴァシュロン・コンスタンタンがパートナーシップを組む、ジュネーブのバルビエ=ミュラー美術館に所蔵されている本物のマスクをモチーフにしているんです。
![[写真] Alexandre James氏](img/c01_pht03.jpg)
―時計の文字盤に乗るほど小さいのに、見事に本物を再現していますよね。
ミニチュア化されたマスクは、実物の色に近いゴールドを厳選し、経年によって受けた痕跡や錆までも、彫金師の技術によって忠実に再現されているんですよ。そのため、ひとつひとつの工程にたいへん手間がかかっています。時計の中央にこのマスクが配置されるため時分針はなく、文字盤に四隅に配置された4つの窓が、それぞれ時、分、日付、曜日を表示するようになっています。
―今まで見たことのない、オリジナリティー溢れる作品ですね。
ヴァシュロン・コンスタンタンが創業252年を迎えた今、このようなコンセプチュアルな時計をリリースできたのは、たいへん素晴らしいことだと思っています。
今年度はこのコレクション以外にも、シンプル系からハイコンプリケーション系まで意欲的に新作を出していますので、そちらもぜひご注目ください。
SIHHにおける「マスク」のセンセーショナルなデビューは、驚きと感嘆でもって迎えられた。この極めて個性的なタイムピースは、凝った造りゆえにたいへん稀少。4つのモデルを収めたボックスで世界限定25セットのみ販売される。来年以降も4本ずつのセットで展開し、あらゆる国々のマスクが文字盤の上のアートとして生まれ変わってゆく予定である。
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VACHERON CONSTANTIN メティエ・ダール・マスク 材質:左からピンクゴールド、 ホワイトゴールド、イエローゴールド、 プラチナ(4本セット/世界限定25セット) |
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ダ・ヴィンチ・オートマティック 材質:ローズゴールド |
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マスター・コンプレッサー・ダイビング・プロ・ジオグラフィーク 材質:チタン |
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ランゲ31 材質:プラチナ |
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エクスカリバーJFK 材質:ホワイトゴールド |
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大橋善治 氏(日本)
熊本県で正規腕時計販売店を構える、<時計の大橋>社長。
世界的な高級腕時計ブームの煽りを受けて、腕時計メーカーは、コストを惜しまずに新しい機械を開発したり、細部のディティールまでこだわったりしている傾向があります。その分、全体的に高額化しているのですが、消費者に手が届きやすい価格でデザインも良い、高品質なモデルを発表したブランドもあり、好印象でした。
Magdaleina Lam 氏(中国)
<ジャガールクルト>プレス担当者。
業界の傾向として、スポーツモデル需要の拡大により、大きなサイズの時計が増えています。反対に、クラシカルな時計を好む人は、大きなケースに抵抗がある場合が多いので、多様なサイズ展開が求められているでしょう。材質はピンクゴールドを多く見かけますが、ルクルトの新作は、チタンを使ったものが多いのが特徴。
Cindy Yip氏と
Meiji M.C.Kwong氏(香港)
香港のテレビ局<Television Broadcasts Limited>スタッフ。
TVの取材で、バーゼルワールドとジュネーブサロンを撮影しています。各ブランド、自社のカラーを表現したブースを構えていて、商品のディスプレイなどにもユニークな個性が光っていました。香港のTVでこれらの時計の祭典を特集するのは初めてなので、香港人は大いに興味を持ってくれるでしょう!
藪内正己 氏(日本)
大阪府で正規腕時計販売店を構える、<やぶ内時計舗>バイヤー。
今年の新作は、機械における飛躍度は去年ほど大きくないかも知れません。そのぶん、昨年に出た新しい機械のバリエーションを揃えるなどして、本格的に製品化しているのが今年の特徴だと思います。今の時計は、機械のクオリティーが高いのは当然で、それプラス、デザイン性が重要視されるようになってきていますね。
腕時計の変革は、ケースに閉じ込められたムーブメントに起きていた。
多くのブランドが、時計の内部のムーブメントを他社の供給に頼らずに、自社生産することにこだわりはじめている。その先に見えるのは、マニュファクチュール(完全自社一貫生産)という到達点だろう。自社製クロノグラフ、オリジナルの新型脱進機など、各社、自社製ムーブメントの開発にめざましい。そんな中、渾身の第一弾として発表されたのが、今年の新作の顔ぶれであった。あと数年のうちに技術がブラッシュアップされ、自社製ムーブメントを搭載したモデルは、さらなる革新を遂げることだろう。
業界全体を揺るがしはじめたマニュファクチュールという扇動を、機械式時計産業の発展という期待を胸に、見守っていきたい。
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