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ホームコラムサンドウェッジ大百科

サンドウェッジ大百科
第1回 『サンドウェッジの歴史』 文/上野喜久男(クラブ研究家) 10/31更新

サラゼンによる300年目のソール革命
そしてダイナパワーで完成を見る

ルフクラブの歴史に、初めてバンカー用クラブという名称が現れたのは、スコットランドのモントローズ伯爵(1612〜1650)が残した買い物の勘定書の中だ。ゴルフボールと共に「バンカー用クラブとアイアンクラブ1本、プレークラブ2本」とあった。

"BONKEL CLUBBIS"と古いスコットランドの言葉で記されたそのクラブは、ロフトを多く付けた木製クラブヘッドであったろうといわれている。製作者は1603年に王室(ジェームズ6世)より初めて免許製作人としての指定を受けた、エジンバラのウィリアム・メインと推定れされている。

その後、1848年に丈夫なガタパーチャボールが発案され、フェザーボールにとって代わるようになるまで木製ヘッドの時代が続くが、その間に"RUT IRON" "TRUCK IRON"が登場している。

GIANT NIBLICK by HENDRY AND BISHOP 1915 SCOTLAND

A.ロバートソンが考案、試作した「フライパン」のデザインを踏襲した、最大のフェース面積を誇るウェッジ。フェースの長さは12センチ、高さ9.5センチもありながら、ソールの幅はわずか3ミリしかない極薄ヘッドだ。砂や芝を削り取るようにしてボールを打ち出した

これらは初のアイアンクラブといわれ、ヘッドは直径5センチほどしかなく、フェースは凹面状になっていた。轍(わだち)や窪みに入ったボールをスプーンのようにすくって脱出させようという、先人の発想のもとに作られたものだ。当然、バンカーに入ったボールにも有効と、大いに用いられたに違いない。その証拠に1920年代に入っても、凹面フェースのアイデアを用いたバンカー用のクラブがつくられていたからだ。

アイアンクラブが一般的になった1850年代は、英国におけるプロゴルファーの草創期でもあった。当時、最強のプロとして名を馳せたアラン・ロバートソンはクラブ職人としても定評があったが、彼が考案、命名したウェッジが"FLY PAN"。フェースの長さも高さも約10センチはあろうかという、薄くて丸い鉄板のようなヘッドだ。

草むらに潜むボールを、砂地に身を隠すボールを、ロバートソンは文字通りフライパンで料理を楽しむかのように、このクラブで自在に操ったという。その姿を見て、客はずいぶんと財布の紐をゆるめたことであろう。

1926年、ウォルター・ヘーゲン社は"IRON MAN"と名付けたバンカー用のクラブを発売した。シャフトこそヒッコリーだったが、全体的に軽くラウンドさせた幅3センチのソールは、砂をエクスプロージョンさせようという新しい発想のもの。バンカーから容易にボールを脱出できると、大人気を博した。

追って29年に同社はソール幅をさらに広くし、フェースを凹面にした"SAND WEDGE"を発売している。

バンカーでのミスをもっと減らせば、自分はもっと勝てる」と、バンカー用のスーパークラブを欲しがったのはジーン・サラゼンだ。そんなサラゼンが飛行機が上昇するときの尾翼についたフラップの動きをみて、ソールにバウンスを付けることを思いついたのは、有名な話だ。

そのアイデアを取り入れたのがウイルソン社が1933年に発売した"SARAZEN SAND IRON"だ。それまでのサンドアイアンのようには重くなく、それでいてバウンスがつけられたソールが砂を弾いて、ボールをいとも簡単にバンカーから打ち出してくれる。このウェッジが、他社の契約プロまでがこぞって使うほどの人気となったことは、いうまでもないだろう。今日のサンドウェッジの基本形の誕生である。

R-20 by WILSON 1937 U.S.A.

33年にウイルソンはジーン・サラゼンが考案したバウンスソールを採用したSWを発表。このR-20はその流れをくむもので、ほとんどのプロのバッグに収まっていたという。それまでにもサンドアイアンと呼ばれるクラブはあったが、ソールにバウンスはつけられていなかった

1950年代後半、ウイルソン社はそれまでのモデルに改良を加えた "DYNAPOWERED STAFF MODEL"を発表した。サンドウェッジといえば、機能だけを追求した武骨な形状ばかりだったのが、このモデルになると感性を取り入れてデザインされている点が注目される。リーディングウェッジのラウンドや、ネックからヘッドのアウトラインへのつながり方は、フェースを開いても違和感がないよう考えられている。

またバンカー以外のライからでも使用しやすいよう工夫されるようになったのも、このころからだ。この時代、プロの技術が向上し、それにともなってクラブに対する要求がシビアになってきたことがうががわれる。機能的にも、また美しさという点でも、サンドウェッジが完成された時期である。現在のサンドウェッジは、ほとんどがこのダイナパワーの亜流といえるだろう。

ダイナパワーで完成をみたサンドウェッジだが、その後もさまざまなアイデアを取り入れたモデルが登場する。そのほとんどがバブルのように消え去っていくが、15年以上も前に発表され、いまだに根強い人気を誇っているモデルがある。ピンのアイ2だ。どんな状況にも対応できるよう科学されたソール形状や、強烈なスピンを生み出す軽めのバランスなど、ダイナパワーに代表される伝統的なスタイルとはまったく異なるコンセプトで、サンドウェッジの機能を追求した点は、高く評価できるものだ



つづく
目次
第2回 サンドウェッジカタログ (11/7) next
No.28 即効改造法:開きとハネ返り (5/15)
No.27 即効改造法:ダフリ・トップ (5/8)
No.26 Q&A フィーリングと選択 (5/1)
No.25 Q&A ソールアングル (4/24)
No.24 Q&A スピンとバックデザイン (4/17)
No.23 Q&A マッチングとサイズ (4/10)
No.22 試打ライブレポート.4 (4/3)
No.21 試打ライブレポート.3 (3/27)
No.20 試打ライブレポート.2 (3/20)
No.19 試打ライブレポート.1 (3/13)
No.18 プロの選択 奥田靖己 (3/6)
     
   
 
CHOICE Vol.125からの転載です

監修・竹林隆光/文・近藤 廣
撮影・柴崎 茂 青山俊夫

上記記事を掲載のCHOICE Vol.125(2001年11月号)は現在在庫があり購入可能です。
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