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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 12/9号
2008/11/28更新
スコットランドに大富豪トランプが
一大リゾートを計画。金融危機で大丈夫?

 「世界で最も偉大なゴルフコース」がスコットランドにできる? 開発業者がそう豪語するゴルフリゾート計画が、スコットランド政府によって認可された。開発業者というのは、アメリカの不動産王のドナルド・トランプ氏。金融危機の折、1500億円を投入する計画に採算はあるか?

 場所はスコットランド北東部、アバディーンの北約20キロにある海岸線。トランプ氏といえば、成金趣味があるとは言え、超高額の不動産を開発してきた人物で、ブッチ・ハーモンの父親クロード・ハーモンからゴルフの手ほどきを受けたことでも知られている。

 そんなトランプ氏が、最高ともいえる素材を手に入れ、1500億円近い資金を投入するというのだから、完成すれば世界一はともかくも、名コースが出来上がることは、疑う余地がないだろう。

 トランプ氏の計画では、二つの18ホールコースに、450室の五つ星ホテル、950のバケーション用住宅、それに500の約8000万円から2億円を超える住宅が建設される一大プロジェクト。

 そのため、この開発によって6000人の雇用が創出され、このうちの1400人は永続的な雇用となることから、「経済的、社会的な利益になる」(スコットランド政府ジョン・スウィニー財務長官)として、認可が下りたのだ。

 しかし、地元の反対は、いまだ根強いものがある。なにより、開発地は、貴重な鳥などの繁殖地で、これまで法律によって、守られてきた地域なのだ。

 ジュニア育成などに力を注いできた地元スコットランドのクラブ支配人協会の会長であるデービット・ロイ氏は、「私には、この開発が、ゴルフ産業に利益をもたらすとは思えないし、より多くのゴルファーがスコットランドを訪れるというが、それは多分、ゴルファーをトランプのコースに引きつけるだけのものになる。しかも、開発による環境破壊はゴルフ界のイメージを悪くする」と語るように、地元のゴルフ界からも見放されている。

 実をいえば、1年前、昨年11月にこの計画は、地元の自治体から認可を差し止められている。これに対してトランプ側は、アイルランドを含めて、他の場所を探す一方、スコットランド政府に上訴していた。

 そこにきて、世界的な金融危機となり、「厳しい経済の不況期に、このような堅実な投資は、貴重なもの」と地元のアレックス・サルモンド議員が語るように、スコットランド政府は、他の場所に巨額の投資をされるより地元へと、環境保護に目をそむけても、経済を優先させたといえる。

 今回の金融危機が“追い風”となって、トランプ氏が認可を勝ち得たといえるのかもしれないが、計画自体は不動産のバブル期に作られたもの。現在の世界的な不動産不況を考えれば、コースの隣接地に住宅などを開発しても、販売できず、計画が頓挫することも十分に考えられる

 実際アメリカでは、昨年末の段階で268の新設造成中のコースがあったが、実際の今年の開場数は75~85コースになると予想され、過去20年来の最低水準の開場数となる見込みだ。不況の中で、多くの開発業者が、造成を中断し、市場が回復するのを待っている状態なのだ。

 トランプ氏側に、今後のスケジュールを問い合わせたが、まだ返事が返ってきていない。

 為替の変動によって、10億ポンド強、当初20億ドルといわれた計画が、ポンドに対するドル高などで14~15億ドル近くまでなっていることから、ドルで投資をするトランプ氏には有利な展開ではある。

 この計画、スコットランド政府は概要に対しての認可は与えたが、まだ詳細は煮詰まっていないという。煮詰まり次第、造成を始めるのか、それとも地元の反対運動の懐柔や計画の詳細に対する最終認可をとるのに時間をかけ、ゆっくり不動産市場の回復を待つのか、どうなることか。

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