週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　本間ゴルフは、10月までに出荷したドライバーの中に、SLEルールの制限値を超える製品が混入している恐れがあるとし、該当する機種を回収し、検査を行うことを決めた。問題のドライバーは9月に発売されたベレスMG712（ロフト9度、10度）だ。

　10月中旬に、社内の品質管理検査で反発係数が制限値を上回るヘッド部材が見つかったことを受け、同社工場内にストックされていたすべてのヘッド部材および完成品クラブの検査を行ったところ、全体の2.9パーセントに上る非適合品が混入していることが分かった。

　このため同社では、すでに出荷、販売されている製品の中にも非適合品が出回っている可能性があり、全製品を自主的に回収した上で、R&Aの指定する計測方法で検査を行うと発表した。

　現段階では、R&Aに経緯を報告し裁定を待っている状況なので、ベレスMG712はR&Aの適合ドライバーリストに引き続き掲載されている。従って、制限値を超える可能性があっても、すぐに競技で使えなくなるわけではない。

　にもかかわらず早い段階で自主回収に踏み切ったのは、昨年民事再生手続きが終了したばかりの同社として、再生の柱として位置づける新ブランドのイメージダウンを最小限にとどめたいという思惑があるからだ。

「仮にR&Aでルール上問題なしと裁定されても、製品に対して不信感をもたれないようにするために、全品を回収して検査する方針に変わりはありません」（本間ゴルフ経営企画室／桑木野洋二氏）

　回収の対象となる製品は約5700本で、反発係数を測定するペンデュラムテストを行い、非適合と判定されれば適合品に無償交換、適合品はユーザーに返却されるが、希望者には新たに「R&A　USGA」の刻印を入れて引き渡す。

　また、今後出荷される対策品に関しても同じ刻印を入れて、ルール適合品であることを明確にする。

　今回不良ヘッド部材が混入した要因について同社では、設計上の問題ではなく、製造工程上のミスと説明している。MG712の場合は、6ピースの鍛造パーツを溶接で組み合わせる複雑な構造と460CCという大きさから、ゴルフクラブとしては製造が難しい部類に入る。

「パーツを溶接する際に決められた作業時間をオーバーし、必要以上の熱が加わって素材が軟らかくなってしまったようです」（桑木野氏）と原因を挙げた上で、「決められたことをきちんとやっていれば発生しない問題。原点に戻って作業工程を再確認するしかない」と今後の対応策を示している。

　SLEルールに対応するために、大手メーカーでもこれまで以上に徹底した品質管理を迫られている。

「反発係数0.82で仕上げるのは高反発を作るより難しい。反発係数はフェースの厚さだけでは決まるものではなく、各パーツとのマッチングが大切です。製品のばらつきをなくすことがメーカーの生命線になっています」（ミズノ広報宣伝課／西田維作氏）

「設計段階で不適合品が生まれることはありません。製造段階でも、反発係数にもっとも影響するフェース肉厚に関して全品検査を行うことでほぼ完璧な品質管理体制としています」（SRIスポーツ経営企画部・山田照郷氏）

　本間ゴルフ同様、8月にサイバースターナノブイ（ロフト11度）の回収検査・交換を行ったヨネックスは、苦い経験を生かし、検査体制を大幅に強化している。

　問題となったフェース部材の受け入れ検査では、フェース厚の測定方法を中心部5点計測から周辺部を含めた9点計測に変更。また、完成品の全数でペンデュラムテストを実施している。

「専門の検査担当者を配置し、検査方法に関してもR&Aに出向いて改めて指導を受けました」（ヨネックス企画宣伝部長・山本美雄氏）

　一方、ペンデュラムマシンを購入すればR&Aのお墨付きをもらったも同然という噂話もささやかれるが、中小メーカーにとっては、約200万円する測定機器を自前で揃えるのは実際のところかなりの負担だ。

「富山県の工業技術センターに掛け合って、実際にゴルフボールをぶつけることで、より精度の高い測定結果が得られる衝突現象計測システムを導入してもらいました」（中条・中条佳市社長）

　現在、富山県の地クラブメーカーのほとんどが、同センターにクラブを持ち込んでテストを行っているが、開発スピードの面でもハンディを背負わされているといっていい。