週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　昨年前半はツアーADのMシリーズ、後半はディアマナ、そして昨年暮れからはツアーADのTPシリーズと、このところ半年サイクルで大きなブームが起きているシャフト業界。こうした流行をいち早くキャッチするのもクラブ開発者の重要な仕事となっている。

飛ばしはヘッドからシャフトの時代に

　ブリヂストンスポーツやヤマハなど、多くのメーカーが06年モデルのドライバーに採用しているのがグラファイトデザインのツアーADPT-6だ。

　昨年12月に発売されたブリヂストンツアーステージXドライブ435は、今年1月発売のPT-6に先行する形で、このシャフトをいわばカスタムの目玉としてラインナップした。

　PTシリーズは、昨年後半の男子ツアーであっという間に広まり、昨シーズン大活躍した深堀圭一郎の優勝にも貢献したが、アマチュアゴルファーにとってはまったく未知のシャフトで、クラブメーカーの06年カタログを見て初めてその名前を知ったというゴルファーも多いだろう。

　しかし、1月中旬までに販売されたXドライブ435のうち、PT-6仕様が半数以上を占めるという人気振りから、ブリヂストンスポーツの読みは見事に的中したといっていい。

　同社はこれまでにも同様の手法でヒット商品を生み出した実績がある。それまではカスタムシャフトといえば、リシャフト市場である程度人気の定着したシャフトを採用するのがセオリーだったが、グラファイトデザインのMシリーズは当初Xドライブシリーズだけに独占供給されていた。

　これには、Mシリーズが丸山茂樹モデルとして位置付けられ、両社が共同で開発を行ってきたという背景がある。

「Xドライブは多くのトッププロが使用しているため、シャフトメーカーとのコミュニケーションも密接になる」（ブリヂストンスポーツ広報室長／嶋崎平人氏）ことや、XドライブとツアーADのブランド力の相乗効果を期待する両社の思惑が一致したことで、PT-6の採用に関してもブリヂストンスポーツが他社を出し抜く形にというのが真相だ。

　もちろん他のクラブメーカーにしても「売れ筋」シャフトにかける期待の大きさは同じだ。看板モデルのインプレスX410Vを標準のオリジナルシャフトとPT-6の二本立てで発売したヤマハは、11月上旬の発表会の席上で、

「昨年の秋口にはプロの間でPTのプロトタイプに人気が集まっているのは分かっていましたし性能においても、人気においてもまず間違いないシャフトだと確信しています」（同社／土田厚志氏）と自信を見せていた。

　とはいえ、リシャフト市場までPTシリーズに席巻されるということはなさそうだ。

「M-75や65を使い続けているプロも多いし、試打会などでもMシリーズを装着した試打クラブはないのかという引き合いは多いようです。どちらもタイプの違うシャフトなので今年はPTシリーズとMシリーズが二本柱となりそうです」（グラファイトデザイン／木本裕二営業部長）

　一方、ディアマナの三菱レイヨンは、ディアマナMシリーズをプロショップ向けの先行発売という形で昨年11月にリリースしたが、同シャフトを装着したカスタムドライバーが各社から発売されるのは3月からで、グラファイトデザインのPTシリーズとは逆のアプローチをとる。

　大ヒットしたディアマナの対象ユーザーを広げた新シリーズということで、当然クラブメーカーからの引きも強いはずだが、「とりあえずリシャフトされる方に試していただきたい」（総代理店エストリックス／中谷要介氏）

　噂される50グラム台の軽量バージョンや青、赤に次ぐ新シリーズも「今年1年はツアーでじっくりプロモーション活動を行っていきたい」（中谷氏）と慎重な姿勢を崩さない。

「標準仕様に少し投資するだけで人気シャフトが手に入るカスタムドライバーの人気は相変わらず高い」（松坂屋本店ゴルフ売場／竹下久氏）ことを反映して、シャフトメーカーではカスタム用の出荷比率が年々高まっている。

　利益率の高いリシャフト市場向け、数量が見込めるのはOEM、カスタム用はその中間といった位置付けだが、カスタムが売れればその分リシャフト用が落ち込むとは限らず、口コミ効果で需要が広がる可能性もある。このあたりの駆け引きも興味深い。