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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 4/1号
2003年更新
2人のパットだけ残し、翌日に順延の珍事
観客のブーイングはねのけS・ホークがV
 米ツアーのフォード選手権(フロリダ州・ドラルリゾート)で、3メートルと2メートルのバーディパットを残し、プレーオフを月曜へ持ち越すという奇妙な事態が起こった。

 事の経緯はこうだ。最終日、終盤の優勝争いはスコット・ホークとジム・フューリックがともに17アンダーでフィニッシュ、プレーオフへ突入した。プレーオフは18番(パー4)と1番(パー5)を決着がつくまで交互にプレーする。1ホール目の18番はパーで分けた。2ホール目の1番ではともに3オン。ホークは3メートル、フューリックは2メートル。そこで、PGAツアーのルール委員から「(陽が沈み暗くなったため)プレーを続行できるか?」と尋ねられ、先にパットすべきホークは最初「問題ない」と答えたのだが、カップの逆側からラインを眺めた直後、「見えない」と言い、翌日への持ち越しを希望。フューリックも同意し、ともにバーディパットを残して日没サスペンデットが決定したというわけだ。

 グリーンを取り囲んでいたギャラリーからはブーイングの嵐。「パットしろ!」「たったそれだけなら終わらせろ!」という声が上がったが、ホークもフューリックもカートに乗り込み、無言で引き上げた。インタビュールームでは報道陣から質問攻め。ホークは昨年5回にわたり視力回復のレーザー手術を受けたが結果が思わしくなく、現在は片方だけにコンタクトレンズを入れている。そのせいでホークがプレーをやめたがったのではないかとの疑問がメディアからぶつけられた。

 しかし、ホークは「芝やカップは見えたけど、暗くてラインは読めなかった。これまでプレーを急いで失敗した経験が何度もある。自分に不利である限り、プレーを続けるべきではない。確かに私は目の手術を受けたけど、残念なことに医者は私に“夜行性の視力”をくれなかったものでね」と、毒舌ぶりを発揮しながらきっぱり。

 フューリックに対しては、「ベテランのホークに逆らえず、意に反してサスペンデットに同意したのでは?」という質問がぶつけられたが、「お互いの同意だ。第3打を打つときもすでにかなり暗かった」と答えた。

 PGAツアーによれば、ホークが持ち越しを希望しても、フューリックだけ続行することは可能だったそうだ。もっとも、ホークがパットしない限り、勝敗の決定は結局は翌日に持ち越されたことになる。

 この日の日没は午後6時26分。サスペンデットが決定されたのは6時33分。すでに太陽は沈んでいたのだから、順延の決定は妥当ではある。しかし、生命の危険のある雷雨ではなく、日没を理由にプレーオフを月曜へ持ち越したケースは過去にも数えるほどしかなく、01年ヘリテージクラシックでJ・コサレスとB・メイフェアのプレーオフが月曜にずれ込んだのが最近の事例だが、パットだけを持ち越したのは異例中の異例だろう。

 プレーオフが再開されたのは月曜の午前8時。残されていたパットを2人そろって入れるか外すかすれば、3ホール目の18番へと続くため、2人とも午前7時頃からコースに姿を現し、ショットもパットも通常通りに練習。テレビ中継の準備も万端。ギャラリーも100人前後は集まった。

 そして問題のバーディパット。さすがに1日持ち越しただけのことはあってか、まずホークが入れ、続いてフューリックも入れ返し、プレーオフは3ホール目の18番へ。フューリックの7メートルのバーディパットがカップ横に止まった後、ホークが2メートルのバーディパットをねじ込んで優勝を決めた。

「(月曜持ち越しは)ファンや大会関係者、メディアにも悪いと思ったけど、“私たち2人”にとってベストな判断だったはず。そして、その判断は正しかった」と語ったホークに、人々は熱い拍手を贈った。

 優勝賞金90万ドル。2位は54万ドル。バーディパットに36万ドルの差がかかっていたばかりでなく、ホークにとっては47歳のホークにとっては史上5番目の年長優勝という貴重な記録もかかっていた。もちろん、フューリックにとっても優勝の意味は大きい。

 1打の重みは尊いとはいえ、それにしても何ともアメリカ人らしい「ゴーイング・マイ・ウェイ」ではないか。

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