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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/26号
2002年更新
リモコン電動カートのセルフプレー事故で
ゴルフ場側の損害賠償責任認める判決下る
 セルフプレー中に電動カートと接触してケガをした女性プレーヤーがゴルフ場経営者に損害賠償を求めた訴訟で、裁判所はゴルフ場側に519万円の支払いを命じる判決を言い渡した。ゴルフプレーはプレーヤーの自己責任というゴルフの本質を根底から覆す判決が出たことになるのだが……。

 事故が起きたのは99年9月の大雨の日だった。ゴルフ場は大阪府富田林市にある光丘(こうきゅう)カントリー倶楽部。メンバーシップでありながら、完全セルフプレーというコースである。カートにゴルフバッグを積んで、プレーヤーがリモコンで操作をする。

 カートは道路に埋め込まれた電線の上を走る埋め込み式ではなく、コース内に設けられたレールの上を走るモノレール式。カートの速度は時速5.4キロで、原則的に各ホールの端に沿ってレールが走っているが、ホールとホールのつなぎの関係で歩行者道路とレールの交差点は23ヶ所ある状態になっていた。

 事故はこの交差点のひとつで起きた。雷や強風を伴う大雨の中でプレーしていた女性プレーヤーは、次のホールに向かうために舗装された道路の上を歩いていたところ、レールの上を走ってきたカートと接触、転倒して右足の関節部分を骨折してしまったのだ。

 女性プレーヤーはゴルフ場側の設備に不備があるとして、大阪地裁に損害賠償を求める訴訟を起こした。慰謝料や治療費など1716万円を請求していたが、その判決が10月31日に大阪地裁で言い渡され、福井健太裁判長は慰謝料や治療費など約586万円を損害と認定した。あまり例のないセルフプレーによるリモコン式のカート事故を巡る判決は、ゴルフ場側に非が認められたのである。

 判決の中で福井裁判長は「現場はカートが通路上にいきなり出現する構造になっており、歩行者と衝突する危険性があった。看板や警告灯で注意を喚起するべきだった」として、リモコンを操作していた同伴競技者の過失以上に、ゴルフ場側の土地工作物責任のほうがはるかに大きいと判断している。

 ただ、女性プレーヤーがこのコースで何度もプレーしたことがあることから、2割は女性プレーヤー側にも責任があるとしたが、ゴルフ場のゴルフの原点に立った「ゴルフプレーの本質はプレーヤーの自己責任にある」という主張は退けられた形になった。

 この判決に対しゴルフ場側は、「今度の対応策も含め、現段階ではお話しできません」(副支配人)と困惑気味。これが判例となり、今後のゴルフ場での事故にも大きく影響するということで、控訴も視野に含めた対応を考えているようだ。

 ゴルフ場問題に詳しい西村國彦弁護士によれば、「95年の名古屋地裁判決は、倶楽部ハウス前の通路を歩いていたプレーヤーとカートが接触する可能性がある場合は警告する標識を設けたり、従業員に誘導させるなどの対策を講じない限り、ゴルフ場は工作物責任、あるいは安全配慮義務違反として、負傷したゴルファーに対し債務不履行による損害賠償を負うことを認めました。たとえこれがセルフプレーであっても、正常なプレー中の事故に関してはゴルフ場側の責任が問われることになります」

 その損害賠償は損害保険で支払われることになるが、西村弁護士によれば、「すべてゴルフ場に責任が発生するものではなく、ゴルファーに過失があれば治療費はゴルファーの負担になります。もちろんゴルファー保険でカバーできますが、ミスショットと同じくゴルフプレーの本質は自己責任にあるという気持ちでつねにプレーしてもらいたいですね」

 賠償責任がどちらにあるにせよ、最近急増しているセルフプレーの場合、安全には十分気を配っておきたいものだ。

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