週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　エスティティ開発は国内11コースを経営する大手の一角。今年2月に創業社長の中沢勤氏が逝去して以来、静かにその動向は注目されていた。超ワンマン経営者として知られる中沢氏は、旧・平和相互銀行勤務を経て、同郷の故・福田赳夫元首相の私設秘書を務めたが、誰もが認める実力派秘書として、政財界に幅広い人脈を持っていたことで知られている。もともとは不動産業が本業らしいが、ゴルフ場事業では昭和51年の千成GCを皮切りに、同57年には千代田CCをオープン。

「当時としては珍しい1000万円の高額法人会員権を発行、これが後の高額法人会員権ブームの先駆けになった」（ゴルフ業界に詳しい関係者）。

　この千代田CCは「コース自体はそこそこだが、豪華なクラブハウスが売り物で、福田赳夫の秘書時代に培った人脈を活かし、上場会社の役員を中心に政財界の著名人を数多く入会させることに成功した」（同関係者）ため、後々エスティティ開発の看板コースになっている。そして同社を有名にしたもうひとつのコースがプレステージCCだ。「倒産して競売されていた梓GCを、最低競売価格の何倍もの金額で落札し、会員も含めて債権者に負債を完済させてしまった」（同関係者）という。このコースも千代田CC同様、高額会員権の販売に成功、豪華なクラブハウスに建て替えるなどのリニューアル工事を経て、昭和63年に再オープンさせた。その後も豪華なクラブハウスを売り物に相次いでゴルフ場を開場、現在では11カ所、総勢1万1110人の会員を抱える大手に成長したわけだが、今回の倒産は預託金問題が直接の原因ではない。

　エスティティ開発の負債総額は4922億円に上り、うち預託金は4割強の2235億円だが、現時点ではほとんど償還期限が来ていない。同グループのコースは昭和60年～平成4年頃に大半がオープンしており、本来なら償還期限が相次いで来ている時期なのだが、償還期限を一般的な10年でなく20年にしていたからだ。

　それならば倒産原因は一体何だったのか？

「エスティティ開発にはグループ会社が事業ごとにいくつもあり、中で最も問題だったのが不動産事業のエスティティコーポレーションで、バブル期に手がけた地上げ物件と巨額の負債を抱え行き詰まっていた。そこにエスティティ開発が保証していて、その整理のために選んだ選択肢」（金融ジャーナリスト）だったようだ。

「当社がエスティティコーポレーションに保証している金額は1733億円に上る。ゴルフ場の経営自体は順調だが、さすがにこの保証を履行できるだけの体力はない。会員に安心してプレーをしてもらうためにも、この保証問題にはケリをつけるべきだという判断から申請をした」（エスティティ開発広報）という。

　まだ数年先とはいえ、預託金の償還期限が来れば、それもいずれ問題になる。そこで今回は預託金もある程度カットすることになるのは間違いない。

　気になる今後の展開については、「大和証券SMBCにアドバイザーになってもらい、スポンサーは募集するが、あくまで当社に出資をしてもらうスポンサーを探す方針。プレー権の保護はもちろん、経営のイニシアチブを握れるような方向へ持っていきたい。コース自体の利益は上がっているので可能だと思う。コースをバラ売りするようなことはしない」（同広報）と話す。

　一部報道によると、すでににローンスター、ゴールドマンサックスなど、ゴルフ場買収の常連組の外資がスポンサーに名乗りを上げているという。バラ売りはしないということなので、11コースまとめての話となりそうだ。

　先頃発表された帝国データバンクの統計によると、ゴルフ場経営会社の倒産は今年に入って既に70件を超え、現時点ですでに、過去最高だった昨年の53件を大きく上回っている。しかもその大半は民事再生や会社更生。大量の申立てで倒産イメージも薄れ始めている。

　モラルハザードだ、潰さずにまじめに頑張っている方がバカを見るという声もある中、『民事再生や更生法による預託金カットで経営を身軽にし、会員のプレー権は保護』という流れは今後も続きそうだ。